軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十話 親子でなくても美味しいんです&ムコーダのレベルアップ

「しっかし、ホントよく効くなぁ」

夕飯を作ろうかと思うものの、蚊取り線香のあまりの効き目に目を見張る。

効果絶大で、次々と飛来してくるヴァンパイアモスキートを一網打尽にしていた。

「ドロップ品さっき拾ったばっかりなんだけど、もう大量に落ちてるし……」

『あるじー、拾ってくるー?』

「スイ、ありがとな。でも大丈夫だよ、そのままで。さっきので大分拾ったからね」

ちなみにヴァンパイアモスキートのドロップ品は、羽とかストロー状になっている口とか小瓶に入っている液体(鑑定してみたら麻痺毒だって)だ。

そもそもがDランクの魔物だからそんなに価値があるものでもなさそうだし、さっきスイに手伝ってもらって拾った分でもけっこうな量になっているから十分だ。

そういうことで、ここは無視して夕飯を作っていこう。

どうせそのうちダンジョンに吸収されちゃうだろうしね。

「さて、気を取り直して夕飯作ろ。肉を使うにしても、みんなはギガントミノタウロスの肉がいいんだろ?」

ギガントミノタウロスの美味さにすっかりハマってしまっているフェルとドラちゃんとスイ。

肉好きトリオはここのところ飯の度にギガントミノタウロスの肉をご所望なのだ。

『うむ。あの肉がいいな』

『美味いもんな』

『スイもあのお肉がいいなぁ』

「うーむ、俺としては親子丼が久々に食いたい気分だったんだけど、ギガントミノタウロスの肉かぁ。……あ、ギガントミノタウロスの肉を使って他人丼にしてもいいか。よし、そうしよう」

『何でもいいから早く作れ。腹が減った』

『同じくー。早く飯にしてくれよ』

『スイもお腹減ったー』

フェルとドラちゃんの腹の虫が盛大に鳴いているし、スイはちょっと萎んでいた。

ギガントミノタウロスが大量発生していた38階層ではみんなハッスルしてたもんなぁ。

そりゃあ腹も減るわ。

「そんなに時間のかかる料理でもないから、ちょっとだけ待ってて」

パパッと卵等足りない材料をネットスーパーで購入したら、早速他人丼の調理開始だ。

とは言っても超簡単だし、作り方は親子丼とほぼ一緒。

ただ俺としては他人丼の方が若干甘めの方が美味い気がするので、ちょっとだけ甘味を強くしているけどな。

「タマネギを薄切りにして、ギガントミノタウロスの肉を薄切りにして一口大にするだろ……って、フェル、そう横に座ってられると邪魔なんだけど」

余程腹が減って待ちきれないのか、俺の横にはお座りして涎を垂らしそうな勢いでギガントミノタウロスの肉をガン見しているフェルがいた。

それに釣られてかフェルの首の辺りにしがみついたドラちゃんも肉をガン見してるし、スイもフェルの頭の上に陣取って肉をガン見している。

みんなの行動にちょっとクスリとしながら「すぐに出来るからもう少し後ろで待ってて」と声を掛けると、渋々ながら俺の横を離れていくフェルとドラちゃんとスイ。

それでも振り向きざまに『肉はたっぷりだぞ。たっぷり』と念を押してくるフェルと『俺も!』『スイも!』と同意するドラちゃんとスイ。

「はいはい。分かってるよ」

俺は、苦笑しながらそう返してギガントミノタウロスの肉を切っていった。

「よしと、タマネギとギガントミノタウロスの肉はこれでいいな」

タマネギとギガントミノタウロスの肉を切り終わったら卵を割って軽く溶いておく。

肉が多いから卵も多めにだ。

あとはフライパンに水とだし醤油、みりん、砂糖を入れて火にかけて、煮立ってきたところでタマネギとギガントミノタウロスの肉を投入。

アクを取りつつタマネギとギガントミノタウロスの肉に火が通ったところで、溶いた卵を半分だけ入れて弱火に。

卵が固まってきたところで残りの半分を入れて半熟状態になれば出来上がりだ。

作り置きしてアイテムボックスにしまっておいた炊き立てホカホカの白米をよそってたっぷりトロトロ半熟卵の他人丼の具を載せたら彩に三つ葉を中央へ。

「よし、他人丼の出来上がりだ」

『うむ、すぐよこせ』

「ったく、待っててって言ってるのに、すぐ後ろから覗きながら待ってるんだから……」

いったん後ろに下がったのに、フェルというかドラちゃんもスイもだけど、結局じりじりと前に出て来て俺のすぐ真後ろまで来てるんだもんな。

『遅いのが悪いんだぜ』

「いやいや、そんな時間かかってないだろうが」

『あるじ、ご飯ー』

「ああもう、ほら。特盛り他人丼だ」

フェル、ドラちゃん、スイの前に置くと、ガツガツと頬張り始める。

『なかなか美味いではないか。この前のこの肉に生の卵を絡めて食ったのも美味かったが、火を入れた卵と一緒に食うのもまた違った味わいで悪くないぞ』

『うんうん、フワフワの卵と肉それからこの甘じょっぱい味が抜群に合うな』

『これお米と一緒に食べるととーっても美味しいよー!』

卵とじ、甘じょっぱい味、このコンボで白米に合わないはずないし。

というか卵でとじて丼にすると大抵のものが美味しく食える気がするぞ。

前日に作って残った野菜炒めなんかも美味いし、冷蔵庫の野菜とか肉とか少しだけ残った余りものなんかは今回の要領で甘じょっぱく煮て卵でとじてやれば余りものとは思えない美味さになる。

あとは、天ぷらとかの揚げ物の残りなんかで作ればちょっぴり豪華な丼が楽しめるし。

卵でとじる丼ものは偉大だな。

フェルたちに続いて俺も他人丼を口いっぱいに頬張った。

「うん、今日の他人丼も文句なく美味い」

『その他人丼というのがこの料理の名前なのか?』

「そうだよ」

『随分と変わった名前の料理なのだな、これは』

「前に親子丼っていうのを作ったことがあるんだけどな、その時は確かロックバードの肉と俺のスキルで取り寄せた異世界の卵で作ったから厳密には親子丼ではないんだけど……。そうだな、分かりやすくこっち風でいうと、コカトリスの肉とコカトリスの卵でこんな風に作ると親子丼、それ以外の肉を使えば他人丼ってわけだ」

『コカトリスの肉とその卵、親と子で親子丼。親と子から外れれば他人丼というわけか。面白いな』

『親子丼と他人丼か、上手いこと付けたな。ハハッ』

『あるじー、それじゃあ他のお肉でもできるのー?』

「ああ、出来るぞスイ。ダンジョン牛やダンジョン豚、それにブラッディホーンブルとかオークでも美味いと思うぞ」

『でかした、スイ。よし、おかわりはそれらの肉で作れ』

『お、いいな。食べ比べだな』

「ハァ? またそういう面倒なことを言い出すんだから……」

『時間のかかる料理ではないと言っていただろう。違う肉で作るくらい造作もないではないか』

フェルの言いたいことも分かるけどね、作るとなれば準備があるんだっての。

タマネギとギガントミノタウロスの肉については、おかわりの分も予想してある程度切ってあるから大丈夫だけど、それ以外の肉を使うとなれば改めて切らなきゃならんわけよ。

まぁ、でも……。

「確かダンジョン牛とダンジョン豚は薄切りしてあるものがアイテムボックスに入ってるから、その2つだけね」

『むぅ、しょうがない』

しょうがないとか言うなっての。

それからダンジョン牛とダンジョン豚の肉を使って他人丼を作った。

やれこっちも美味いあっちも美味いとあれこれと批評しながらガツガツ食う肉好きトリオ。

結局どれが美味いんだと聞くと……。

『どれも美味い』

『だな』

『みんな美味しかったー』

結局お前ら腹減ってたもんだからどれも美味いってなってんじゃんよー。

そんなら用意したギガントミノタウロスの肉で作る他人丼だけで良かっただろうが。

まぁ、みんな満足そうな顔してるからいいけどさ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

朝食を終えて、フェルたちはフルーツ牛乳を、俺はコーヒーを飲みながら食休みをしていた。

フェルの結界の外は、蚊取り線香のおかげであれだけ寄ってきていたヴァンパイアモスキートもヨロヨロして今にも落ちそうな弱った2、3匹がふよりふよりと飛んでいるだけだった。

蚊取り線香様々、ホント有能過ぎだね。

ネットスーパーで買った殺虫剤がこれだけ効くなら、蟲系の魔物にはたいがい効くかもな。

他にもハエやらムカデ、クモ、ハチに効く殺虫剤があったはずだから、この際購入してアイテムボックスに入れておいておいてもいいな。

なにせここはダンジョンの中の森だ。

蟲系の魔物もけっこうな数出てくるだろうからな。

ドランの同じような森のフィールドダンジョンでも獣系、鳥系、蟲系の魔物がわんさか出てきたし。

とりあえず用意だけはしておくか。

俺は、ネットスーパーでいくつかの種類の殺虫剤を購入してアイテムボックスに放り込んだ。

その作業が終わり、残りのコーヒーをゴクリと飲み干していると、フェルがこちらをジーっと見つめていた。

「何だ?」

『お主、大分レベルアップしたな』

「え、ホントか? ステータス」

フェルの言葉にすぐに自分のステータスを確認してみる。

【 名 前 】 ムコーダ(ツヨシ・ムコウダ)

【 年 齢 】 27

【 種 族 】 一応人

【 職 業 】 巻き込まれた異世界人 冒険者 料理人

【 レベル 】 85

【 体 力 】 492

【 魔 力 】 483

【 攻撃力 】 476

【 防御力 】 464

【 俊敏性 】 382

【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 火魔法 土魔法

従魔 完全防御 獲得経験値倍化

《契約魔獣》 フェンリル ヒュージスライム ピクシードラゴン

【固有スキル】 ネットスーパー(+1)

《テナント》 不三家 リカーショップタナカ

【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護(小) 火の女神アグニの加護(小)

土の女神キシャールの加護(小) 創造神デミウルゴスの加護(小)

「ファッ?!」

レベル85、だと?

確か前に確認したときにはレベルが78だったから、いっきに7も上がった。

これ、蚊取り線香で倒した分の経験値も入ってるっぽい。

ヴァンパイアモスキートはDランクの魔物だけど、殺虫剤と蚊取り線香で倒したのを考えるならかなりの数になってるはずだ。

それが積もり積もってこれか。

それに神様たちから“獲得経験値倍化”なんてスキルももらってるから、効果倍増だもんな。

しかし、85か……。

レベル80を超えたということで、固有スキルのネットスーパーの脇に+1の表示が。

あのイベントがやってくる。

地上に戻ったとき、厄介なことになりそうな気がする。

テナント……、うっ、頭が…………。