軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十五話 濃厚デミグラスソースのビーフカツ

ランベルトさんの店からの帰りに、雑貨店などをはしごして【神薬 毛髪パワー】用の瓶をできるだけ買い集めた。

前に買った手持ちの分と合わせておおよそ1000本ほど集まったので十分だろう。

家に帰った俺はすぐさまトニ一家とアルバン一家に声をかけて、シャンプーやらの詰め替え作業をお願いした。

今日と明日はこの作業にかかりっきりになると思うから、夕飯はこちらで用意させてもらうことにした。

それと、ランベルトさんには出来るだけ多くって話だったので残業みたいな感じで少し遅めの時間まで作業をお願いした。

その代わりと言っては何だが1つだけ欲しいものをプレゼントすると言ったら、トニやアルバンが「滅相もない。こんなにいい暮らしをさせてもらっているのにこれ以上何かしてもらうなんて罰が当たります」と固辞したんだけど、いつもなら家でゆっくりしている時間まで仕事お願いしているんだから当然だよと押し通した。

うちは断じてブラックじゃないからね。

話を聞いていた子どもたちは俄然やる気を出していたけど。

人手が欲しかったからタバサたちにも同じ条件で声をかけたら、即やるって返事だった。

俺たちが帰ってきたから、というか主にフェルがいることによってだけど、屋敷の警護の仕事も暇を持て余していたようだしね。

こうして詰め替え作業はみんなにお願いして、俺はみんなの夕飯の用意に早めにとりかかることにした。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

瓶の買い集めに時間をとられて昼飯の時間を大分過ぎてしまいフェルとドラちゃんとスイはブー垂れていたけど、手持ちの作り置きを大量に出してなんとかなだめた。

「夕飯はガッツリ食える肉料理にするつもりだから、昼飯はそれで我慢してよ」

『絶対だぞ。約束だからな』

『期待してるぞ』

『あるじー、美味しいお肉料理食べさせてね~』

フフ、大いに期待しててくれたまえ。

作ろうと思ってる料理は肉好きのフェルたちにも満足してもらえるものだと確信してるよ。

俺がみんなに作ろうと思っているのは、ズバリ“ビーフカツ”だ。

みんなで食えるからって続けて鍋っていうのもなぁと思ってさ。

それにみんながんばってくれてるから、少し豪華なものにもしたいなって考えてたし。

さて何にしようかなって思ったとき、有り余るほど手持ちにあるのは肉ダンジョンの肉。

肉で豪華にって考えたら、分厚いステーキが真っ先に思い浮かんだけど、それも芸がないかなって思って思いついたのがビーフカツだ。

俺もさ、給料日なんかにたまの贅沢で作ってたことあるし。

ステーキとは別にたまに無性に食いたくなるんだよね。

濃厚なデミグラスソースがかかったビーフカツがさ。

しかもだ、ビーフカツを作るときには夕飯にはビーフカツを食って、次の日用にビーフカツサンドも用意しておくのが俺流なんだけど、そのビーフカツサンドが翌日になるとパンに馴染んでこれもまた美味いんだよ。

あー、思い出したら口の中に涎があふれてくるよ。

とにかくだ、そういうことで夕飯はビーフカツを作ろうと思う。

そうと決まれば、キッチンに移動してまずはネットスーパーで材料の調達だ。

とは言っても、肉はダンジョン牛の肉を使うし、付け合わせはアルバンからおすそ分けでもらったキャベツとトマトがあるからそんなに多くはないんだけど。

衣用に小麦粉と卵とパン粉、それからソース用にデミグラスソース缶と赤ワインとバター。

ソースに使うケチャップとウスターソースと砂糖は手持ちであるから、とりあえずはこれで大丈夫だな。

精算を済ませると、すぐさま段ボールが現れた。

段ボールの中身を取り出したら早速調理開始だ。

まずは先にデミグラスソースを作っておく。

キマイラのカツを作ったときにも同じ感じでデミグラスソースを作ったけど、さらにコクを出すために今回は赤ワインも使う。

まずは赤ワインを半分くらいにまで煮詰めたら、デミグラスソース缶、ウスターソース、ケチャップ、バター、砂糖を加えて弱火で2分くらい煮込めばビーフカツにかけるデミグラスソースの出来上がりだ。

あとはビーフカツだな。

ダンジョン牛(もちろん上位種だぞ)の肉をちょい厚めに切ったら、塩胡椒を振る。

肉に小麦粉をつけて余計な小麦粉ははらい落とし溶き卵にくぐらせたら、しっかりとパン粉をつける。

あとは高温の油で表面がきつね色になるまで揚げていく。

きつね色に揚がったら、バットの網の上で1、2分休ませて余熱で火を通していく。

あとは食べやすい大きさにカットしてデミグラスソースをたっぷりかければ完成だ。

ゴクリ……。

「我ながら実に美味そうな出来栄えだな」

とりあえず、ここは作り手の権利で味見だな。

では、いただきます。

サクッ―――。

「おっほ~、うまっ」

ダンジョン牛の肉もキレイなピンク色のレアな仕上がりで柔らかくてジューシー。

そして、濃厚でコクのあるデミグラスソースに実によく合う。

出来上がったばかりのビーフカツを味見していると、足をつつかれる感覚が。

なんだと思って足元を見ると……。

「スイか」

『あるじー、スイにもちょーだーい』

スイちゃん、俺が味見してるってよく気が付いたね。

しかし、スイだけか?

フェルとドラちゃんは?

辺りを見回すが、フェルとドラちゃんはリビングにいてキッチンには来ていないようだ。

「これは味見用だから少しだけだぞ。あと、みんなには内緒な」

『分かったよー。フェルおじちゃんとドラちゃんには内緒ー』

俺は味見用の残っていたビーフカツをスイに出してやった。

『これ美味しいねー!』

「だろ。夕飯に腹いっぱい食わせてやるから、それまでちょっと待っててな」

『わーい。お夕飯楽しみ~』

嬉しそうにプルプル震えながらリビングの方へ去っていくスイ。

「さて、あの分じゃ相当食いそうだし、ビーフカツをしこたま揚げていくか」

それからは揚げ油を取り換えつつ、翌日のサンドに使う分も含めてビーフカツを揚げまくった。

「ふぅ、こんなもんでいいかな。そろそろ、今日の詰め替え作業も終わりにしてもらってもいい頃合いだし」

俺は地下の詰め替え作業場に向かった。

いつもの我が家のテーブルの前に着席したみんなの前には、濃厚デミグラスソースがたっぷりかかったビーフカツが載った皿が鎮座していた。

アイテムボックスに保管していたから当然熱々だ。

付け合わせはアルバンが育てたキャベツの千切りとくし切りにしたトマトだ。

パンはネットスーパーで買ったバターロールを皿に盛って、自由にとってもらうスタイルにした。

フェルとドラちゃんとスイの前には、濃厚デミグラスソースがたっぷりかかったビーフカツが5枚ほど載った皿だ。

付け合わせの野菜はいらないそうだ。

まったくアルバンが作った野菜は美味しいっていうのに。

「みなさんご苦労様でした。それじゃ、いただきましょう」

サクッ―――。

うん、美味い。

味見したから間違いないけど。

って、なんか静かだな。

やけに静かな食卓を見回すと、みんながビーフカツをじっくり噛み締めてうっとりした顔をしていた。

そしてカツを飲み込むと「ほぅっ」と息を吐いてしみじみとそれぞれの言葉で美味いを言った。

「お父さん、お母さん、美味しいねー。ロッテ、こんなにおいしいお肉食べたの初めて!」

「本当だね。こんなにおいしいものを食べられるようになるなんて……」

そう言って涙ぐむテレーザ。

そしてアルバン。

トニとアイヤももらい泣きしている。

いやいや、泣くことじゃないでしょうよ。

「ムコーダさんが振舞ってくれるもんはどれも美味しいけど、今日の分厚い肉は格別だもんね」

タバサがそう言うと、元冒険者の面々もうんうんと頷いている。

「まぁまぁ、そんなしんみりしないでどんどん食ってよ。おかわりもあるからさ」

俺がそう言ってすぐさま反応したのはお調子者の双子。

「何っ、おかわりしていいのか?!」

「よっ、太っ腹!」

「おかわりしてもいいけど、明日もがんばってくれよな」

「「分かってますって」」

『おい、おかわりだ! お主が自信ありげに言っていただけあって美味いぞ!』

『俺もおかわり! この濃厚な味のソースがめっちゃ肉に合うな! 美味いぜ!』

『スイももっと食べるー!』

「はいはい。ブフッ」

フェルとドラちゃん、口の周りがデミグラスソースだらけだよ。

ハハ、あとで拭いてあげなきゃね。