軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十四話 【神薬 毛髪パワー】王都で爆売れ

「こんにちは、マリーさん。ランベルトさんはいらっしゃいますか?」

「あら、ムコーダ様。お帰りなさい」

「今日も大盛況ですねぇ~」

「フフ、お陰様で。シャンプーやせっけんはこの街の女性にはなくてはならないものになりましたわ。最近では噂を聞きつけて、わざわざ他の街から買いにやってくるお客様もいるくらいなんですよ」

モンスターの蔓延るこの世界で危険を顧みずにやってくるとは、女性の美への執念は恐るべきものがあるな。

「本当は支店でも扱えるといいのですが……」

ああ、仕入れの量を増やしたいってことですね。

そういう話があるということは、シャンプーやらの在庫管理をお願いしたコスティ君にチラッと聞いていた。

かなり売れてるみたいですもんね~。

まぁ俺としちゃネットスーパーで仕入れるだけだからできなくはないけど……。

入れ替え作業をしてもらってるみんなにはちょっとがんばってもらうか。

「どれくらい増やせるか分からないですけど、できるだけがんばってみます」

「本当ですか?! 是非ともよろしくお願いいたします!」

くわっと見開いた目が怖いよ、マリーさん……。

「は、はい。ええと、それで、ランベルトさんはいらっしゃいますか?」

「あら、私ったら話に夢中になってしまって。お引止めしてしまって申し訳ありませんでしたわ。主人は奥におりますのでご案内いたします」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「……というわけで、王都で育毛剤は飛ぶように売れておりますよ」

俺は、ランベルトさんから王都での【神薬 毛髪パワー】の売れ行きの話を聞いていた。

ランベルトさんが王都へと持参した伯爵様に献上する分の50本のほか、販売用の50本は瞬く間に完売したそうな。

「伯爵様のご紹介を受けて販売しているのにもかかわらずですよ。まぁ、伯爵様を見れば効果のほどは一目瞭然ですからなぁ」

ホクホク顔のランベルトさんがそう言った。

確かにね~。

ランベルトさんによると伯爵様の激変ぶりはそれはそれはすごいらしいから、それだけでも宣伝効果抜群だもんな。

「伯爵様も懇意にされている方々にお分けしているようですが、効果抜群だとおっしゃっていましたよ」

その効果ってのは発毛効果ってことじゃなく外交効果ってことでしょ。

まぁ、頭髪が気になっている人が伯爵様を見たら、そりゃあその伝手はどうやっても繋ぎとめたくなるわなぁ。

とにもかくにも伯爵様は王都の貴族たちの中で一躍話題の人となって、パーティーなどへの招待状も山のように届いたとか。

伯爵様の目論見どおりというか、ここぞとばかりに伯爵様も方々の貴族家を回って貴族間のコネ作りに存分に勤しまれたようだ。

そのおかげか、伯爵様からの紹介とそれに伴う問い合わせがランベルトさんの下へひっきりなしだったという。

これは商機とばかりに、ランベルトさんはすぐにこの街にとんぼ返りして俺が最初に卸した残りを携えてまた王都へと向かったそうだ。

「その残りの100本はあっという間に売れてしまいましたが」

確か1本金貨50枚で売るって言ってたよな。

ランベルトさんはシャンプーと【神薬 毛髪パワー】をセットで売っているみたいだけど。

値段が値段にもかかわらず、貴族を中心に売れまくっているというからなぁ。

それだけ頭髪に悩みを持っている人が多かったということか。

案外領地運営なんかでストレスがかかっているのかもね。

ランベルトさんも今回のことで方々のお貴族様と伝手ができたようで、商人にとってはかけがえのない財産になったと喜んでいる。

「それでですね、是非とも追加でお願いしたいのです」

何でも、伯爵様からも追加の育毛剤を急かされているうえに、伯爵様から紹介を受けたお貴族様方からの催促も矢のようにやってきているそうで。

ランベルトさんの話では、できるだけ早くに少なくともこの前の倍の200本。

可能なら200本と言わず多ければ多いほどいいとのことだった。

それだけお貴族様方の要望が多いということなのだろう。

「それからですね……」

ランベルトさんによると、伯爵様の奥様とお嬢様が、俺がランベルトさんの店に卸しているシャンプーやらの噂を聞きつけていち早く手に入れ、今では愛用品になっているそうなのだ。

愛用品のシャンプー、トリートメント、ヘアマスク、ローズの香りの高級せっけんは当然王都へも持参されたそうで、奥様とお嬢様の髪は常にツヤツヤサラサラ。

社交シーズンで集まったお貴族様の奥様やお嬢様はそれを見逃すはずもなく……。

「伯爵様の奥様とお嬢様も話題になっているんですね」

「はい。それで、シャンプーやトリートメント、ヘアマスク、せっけんの注文も殺到していまして」

「さっきマリーさんからシャンプーやせっけんの仕入れの量を増やしてほしいと要望があったんですが、王都での注文が殺到していることもあったんですね」

「ええ。この店で売るはずの商品のいくらかを王都の支店へ回しましたので」

なるほどねぇ。

俺がローセンダールの街に行く前にも十分な量を置いていったと思ったんだけど、それでも足りなかったのはそういう理由もあったのか。

ちなみにだけど、ランベルトさんとの取り決めでシャンプーやらの代金の代わりに発行してもらった木札を清算したら金貨2000枚を超えていたよ。

【神薬 毛髪パワー】で儲かっているみたいだから即金で用意してもらえたけどさ。

ランベルトさんとはこれからもいいお付き合いをしていきたいし、こりゃみんなにがんばってもらおう。

人数確保で今回はタバサたちにも付き合ってもらうとするか。

「分かりました。何とかご要望にお応えできるようにがんばります」

できるだけ早くということなので、ランベルトさんと話し合って明後日に納品ということに決まった。

「ああ、それと伯爵様がおっしゃっていたことなのですが……」

伯爵様が、王宮で開かれた晩餐会で王様に俺のことを話したらしいんだよね。

それで、俺とも会ったことを話したらしくてさ。

それを聞いた王様が伯爵様に遠回しに俺にも会わせろ的なことを言ったらしいんだ。

伯爵様は俺がお偉方とのお付き合いはしたくないっていうの知っているから、悩んでおられたそうなんだ。

ましてや俺の従魔にはフェルがいるからね。

無理強いすることもできないしってことらしい。

そんなことしたらフェルがどうなるかわからないからね。

王様もそれは分かっておられるはずなんだけど、伯爵様とは会ってるのになぜ自分のとこには来ないんだって思いがあるんだろう。

王様との謁見も何だかんだで遠慮させてもらって結局1度もお会いしてないから、気持ちは分からないでもないんだけどね……。

とは言っても、ラングリッジ伯爵様と会ったのにはいろいろと事情があったわけで。

でもまぁ、今回は大丈夫だと思うんだ。

何せ、盗賊王のお宝豪華3点セットを献上させてもらうんだからさ。

タイミング的にもばっちりだろう。

この国の王様は実を取るタイプと聞いているし、お宝豪華3点セットを献上したうえでの俺の“これからもどうぞよしなに”っていう意味合いを汲み取ってもらえると思うんだよな。

今回で献上するのも2回目だしさ。

「ランベルトさん、それなら多分大丈夫だと思います。対策は取りましたから。伯爵様にもそうお伝えください」

「そうですか。それではそうお伝えしましょう」

逆にこれで何かゴチャゴチャ言うような王様なら、家のみんなを連れて隣国へ引っ越すというのも一つの手だろう。

まず大丈夫だとは思うけど。

「それじゃ、明後日にまた来ますので」

「よろしくお願いいたします」

『おい、フェル帰るぞ』

フェルに念話を送ると、クワ~っとあくびをしてのっそりと起き出した。

『ようやくか。腹が減ったぞ』

『はいはい、家に帰ってからね。さすがにドラちゃんとスイも起きて待ってるだろうしさ』

俺はまだ眠たそうなフェルと共に家へと急いだ。