軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百四十話 【神薬 毛髪パワー】の納品

ランベルトさんの店に行くと、まだ早い時間ということもあって客もまばらだった。

従業員の人にお願いしてランベルトさんを呼んでもらう。

「おはようございます、ムコーダさん」

「おはようございます。例の品、お届けに来ました」

「おおっ、それは良かった! ささ、こちらへ」

ランベルトさんについて店の奥の部屋へと入る。

「それでは、伯爵様への献上分も含めて200本ということでこちらです」

俺は、シャンプーと【神薬 毛髪パワー】が詰まった木箱を次々とアイテムボックスから出していった。

ランベルトさんとしては、シャンプーを使った方が育毛剤の効果が高まるということで、シャンプーと【神薬 毛髪パワー】をセットで販売する心積もりのようだ。

「明日あたりムコーダさんに一度ご連絡を入れようかと思っていたところでした。実を言うと、伯爵様から催促の便りをいただいておりまして……」

何でも伯爵様の激変は大反響を呼び、伯爵様は貴族連中からひっきりなしにどうしたのだと質問攻めにあっているそうだ。

この質問に答えるためにも現物がなければ話にならんということで、ランベルトさんのところに催促がきたらしい。

そのため、ランベルトさんはこのあと王都まで育毛剤を伯爵様に届けに行くそうだ。

「これで数日中のうちに王都に旅立つことが出来ます」

ランベルトさんは旅支度が整い次第王都に向かうとのことだ。

伯爵様の紹介が必要ではあるが、買いたいと申し出る貴族が殺到すると予見して、伯爵様に献上する分の50本のほか販売用にも50本携えて王都に向かうそう。

1本金貨50枚と俺からするとかなり強気な値段設定なんだけど、50本も持っていって売れるんだろうかとちょっと心配になってしまった。

でも、ランベルトさんは絶対に売れると自信満々。

「何しろこの効果ですからね、髪を気にされている方々が買わないわけがありませんよ」

そりゃそうなんだろうけど、でもさ、言っちゃえばたかが髪の毛なんだよね。

髪があろうがなかろうが、生活に支障がでるわけじゃないし。

それに金貨50枚出すかって言ったら、うーんどうなんだろうって思っちゃう。

でも、ランベルトさん曰く「気にされてる方は大枚はたいてでも手にされますし、逆に言えばこの程度の金額で悩みがなくなるなら喜んでお買いになりますよ」とのこと。

言われてみればそうかもしれない。

それに、俺自身薄毛でも何でもないからこんなこと言えるんだろうし。

っと、そういや、俺の代わりに最初に【神薬 毛髪パワー】を試してもらった(実験台になってもらった)ギルドマスターのことをランベルトさんに伝えておかねば。

「ランベルトさん、実は……」

最初に協力してもらったギルドマスターのことをランベルトさんに話した。

「なるほど、冒険者ギルドのギルドマスターが」

「そうなんです。それで、購入できるようになったら是非ともという話でして……。伯爵様のご紹介がないとという話でしたが、冒険者ギルドのギルドマスターだけは例外でお願いします」

ランベルトさんが言うには、伯爵様がこの育毛剤のことを知ったのもギルドのギルドマスター経由だから、ギルドマスターに売る分には大丈夫だろうとのことだった。

良かった。

ギルドマスターからはくれぐれもと頼まれてたからな。

金貨50枚は高額だけど、ギルドマスターともなれば高給取りなんだから大丈夫だろう。

というか、販売についてはランベルトさんに全面的に任せてるんで、欲しいならがんばってくださいってことだね。

「それでは代金を用意してきますので、ちょっとお待ちを」

そう言ってランベルトさんが部屋を出て行った。

それから少しして、ランベルトさんが麻袋を手に部屋に戻ってきた。

「では、こちらです。ご確認ください」

中を確認すると、白金貨が51枚あった。

あれ?

多いような……。

ランベルトさんとの話で、卸値はシャンプー銀貨5枚で育毛剤は金貨33枚だったはずなんだけど。

伯爵様へ献上する分をのぞいた150本分の代金だからシャンプーが金貨75枚で育毛剤が金貨4950枚で〆て金貨5025枚のはず。

白金貨51枚を金貨に換算すると金貨5100枚。

金貨75枚分も多いことになる。

「ランベルトさん、代金が多いんですが」

「伯爵様の分をすべてムコーダさんにお任せするのは心苦しいので、その分とお考えください。少なくて申し訳ないのですが」

「いえいえ、伯爵様の分は、後ろ盾になってもらう都合上もあってああいう形にさせていただいたのもあるんです。それなんでランベルトさんにご迷惑をかけるわけにはいきませんよ」

「迷惑だなんてそんな。おかげさまでムコーダさんに卸していただいている石鹸やシャンプーも人気商品になって、うちもかなり儲けさせてもらってますし。店にお客が増えたことで、革製品の売上もずいぶん伸びたのですよ。しかも、確実に売れそうなこの育毛剤までうちに卸していただけることになったというのに。伯爵様へお渡しする分のほんの一部にしかならない金額ですが、どうぞお納めください」

そう言ってランベルトさんはニッコリ笑っている。

むぅ、これは返すにしたって絶対受け取らないだろうな。

しょうがない、今回は受け取ることにしよう。

「それじゃ、今回はありがたくいただいていきます」

俺は白金貨の入った麻袋をアイテムボックスにしまった。

それから他愛もない話を少しして、お暇することにした。

「それじゃランベルトさん、お気をつけて。伯爵様にもよろしくお伝えください」

「はい、ありがとうございます。王都での売れ具合によっては、また仕入れさせていただくことになると思いますので、そのときはよろしくお願いします」

ランベルトさんと挨拶を交わし、俺たちは店をあとにした。

ランベルトさんに王都までの護衛を頼まれたけど、そこは丁重にお断りした。

だって、王都なんていろいろと面倒くさそうなことしかなさそうだしさ。

『よし、終わったな。次行くぞ』

早く狩りに向かいたいフェルに急かされて、次の目的地の冒険者ギルドへと向かった。