作品タイトル不明
ガルディとアドル
ダンジョンの入り口の近くにあるテントの中で、聖剣の団のアドルがガルディに声をかけた。
「荷物の整理が終わりました。これでいつでも出発できます」
「……そうか」
ガルディの口から暗い声が漏れた。
「じゃあ、タンサの町に戻るぞ」
「ガルディさん。キルサスさんにどう報告するんですか?」
「正直に話すしかないだろ。俺たち以外の団員は全員魔族にやられたってな」
「しかし、それでは俺たちの評価が……」
「落ちねぇよ!」
ガルディの口調が強くなった。
「どうせ、月光の団の奴らもあの魔族に殺されるだろうからな」
「十二英雄のシルフィールもですか?」
「ああ。シルフィールでも、あの魔族には勝てない」
ガルディの体が一瞬震えた。
「ダグルードと戦って、俺はわかったんだ。奴の強さは別格だ。もしかしたら、六魔星に近いレベルかもしれない」
「六魔星って、魔王の幹部の?」
「ああ。Sランクが複数いても、奴は倒せないだろう」
「それじゃあ、この依頼は月光の団も失敗するんですね?」
アドルの質問にガルディは首を縦に動かした。
「その可能性は高い。強化された骸骨兵士の数も多かったからな」
「そうなったら、俺たちの評価は落ちませんね」
「あの月光の団も失敗したとなればな」
ガルディは頬を引きつらせるようにして笑った。
「理想はシルフィールが死ぬことだ。十二英雄が殺されるレベルの魔族なら、むしろ、俺たちだけでも生き残ったことが逆に評価されるかもしれない」
「たしかにそれは理想ですね。キルサスさんも仕方ないと思ってくれるでしょう」
アドルはふっと息を吐く。
「どうせなら、ヤクモたちのパーティーも全滅してくれればいいんですが」
「ふん。あいつらがダグルードに出会ったら、すぐに殺されるだろうさ。キナコが強くても、他の三人はたいしたことないだろうしな」
ガルディは頭部の狼の耳をかいた。
「まあ、あいつらも運が悪かった。こんな危険な依頼を受けてしまうとは」
その時、テントの外が騒がしくなった。
「ん? 何だ?」
ガルディとアドルはテントの外に出た。視線をダンジョンの入り口に向けると、そこには月光の団の団員たちと調査団のメンバーがいた。
ガルディとアドルの両目が大きく開く。
「あいつら……どうやって調査団を救出したんだ? ダグルードに捕まっていたはずだぞ」
「わ、わかりません」
アドルが口をぱくぱくと動かした。
「ですが、戻ってきたってことは……あ……」
アドルはシルフィールの近くにいるヤクモを指さした。
「ヤクモたちだ。あいつらも月光の団といっしょに行動してたのか」
冒険者ギルドの職員たちの声が聞こえてきた。
「さすが月光の団だ。魔族を倒して調査団を救出するとは」
「ああ。聖剣の団がやられたから、救出作戦は失敗すると思ってたが」
「やっぱり、シルフィール様は最強だよ。まさに人族の希望だな」
「そんなバカな……」
ガルディの体が小刻みに震え出した。