軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勝者

数秒間の沈黙の後――。

僕は紙の足場の上で深く息を吐き出した。

「終わった……か……」

危険で強い相手だった。僕だけだったら、すぐに殺されていただろう。

でも、キナコとシルフィールのおかげで、なんとか勝つことができた。

黄金紙吹雪に使う光属性の紙をいっぱい用意しておいてよかった。数がないと、この技の威力が落ちるから。

「そこのEランク!」

紙の足場に立っているシルフィールが僕に声をかけた。

「名前を教えなさい」

「え? 名前って僕の?」

「そうよ。名前は?」

「……ヤクモです」

「ヤクモね。で、これ、あなたの能力でしょ」

シルフィールは足元の紙を指さした。

「なかなか使える能力じゃない。それにあなたの武器もね」

「これは僕たちのパーティーのリーダーが作ってくれた武器です。魔力を消費して、刃を大きくしたり形を変えたりできます」

「魔力を消費する武器か。あなた、【魔力強化】のスキルを持ってるわけね」

「いや、【魔力強化】じゃなくて、【魔力極大】です」

「……えっ?」

シルフィールの緑色の目が丸くなった。

「ちょっと待って。紙を具現化する能力もユニークスキルでしょ?」

「はい。僕はユニークスキルを二つ持ってるから」

「はぁ? ユニークスキルが二つ? そんな人族見たことないんだけど?」

「そう……ですよね」

僕は頬を人差し指でかいた。

「……ふーん」

シルフィールがじっと僕を見つめる。

「おいっ、お前たち!」

下にいたキナコが僕たちを手招きした。

「いつまで上にいるんだ。アルミーネたちを助けにいくぞ!」

「うん、わかった!」

僕とシルフィールは紙の足場を下りて、キナコといっしょに走り出した。

最後の一体の骸骨兵士が倒れると、月光の団の団員たちがその場に座り込んだ。

僕も荒い息を整えながら、額に浮かんだ汗をぬぐう。

ぎりぎりだったな。もう、紙一枚出せる魔力も残ってないや。

「ヤクモくん」

アルミーネが僕の肩に触れた。

「ケガしてない?」

「かすり傷程度だよ。アルミーネは?」

「私は大丈夫。ピルンが狂戦士モードで守ってくれたから」

そう言って、アルミーネは地面に座り込んでいるピルンを指さす。

「それにしても、あんなに強い魔族を倒すなんて。ヤクモくんはやっぱりすごいね」

「違うよ。とどめを刺したのはシルフィールさんだから」

「いや、お前がいなかったら、ダグルードは倒せなかった」

隣にいたキナコが言った。

「最後の紙吹雪の技にも驚いたが、その前の紙で巨大な柱を作って奇襲する策が見事だった。あれでダグルードの意表を突いたからな」

「あれはキナコがダグルードを柱の近くまで誘導してくれたからだよ」

「あぁ、奴は負傷した俺を倒そうとしてたからな。誘導はやりやすかったぞ」

キナコは僅かに口角を吊り上げる。

「奴が柱に体を寄せてくれたのは幸運だったな」

「いや、それは狙い通りなんだ」

「んっ? 狙い通り?」

「あの作戦の前にもダグルードは操紙鳥の攻撃を柱を背にして対処してたから。同じ動きをすると思って」

「……そうか」

キナコはじっと僕を見つめる。

「あの状況で大したものだ。お前の強さはスキルだけに頼ったものじゃないな」

「うん。そうだね」

アルミーネがキナコの言葉に同意した。

「ヤクモくんのおかげで、私も命拾いしたし」

「命拾い?」

「えっ? 覚えてないの? 女王蜘蛛の突進から私を助けてくれたじゃない」

「あっ、そうだったね」

僕はアルミーネに抱きついて地面を転がった時のことを思い出す。

「でも、あの時は勝手に体が動いてたんだ」

「勝手に?」

「うん。アルミーネを守らないとって思って。だから、戦況の確認とか計算とか、そういうのはなかったよ。運まかせで突っ込んだし」

「……そっか」

アルミーネのダークブルーの瞳が潤んだ。

「また、ヤクモくんに助けられたね。ありがとう」

「お礼を言うのは僕だよ。アルミーネの服のおかげで僕は死ななかったんだから」

僕たちは顔を見合わせて笑った。

「アルミーネさん」

コリンヌがアルミーネに声をかけた。

「そちらは全員動けますか? 早めに隠れている調査団と合流して地下都市を脱出しようと思ってるのですが」

「はい。大丈夫です」

アルミーネが答える。

「回復薬もまだ残ってますから」

「では、すぐに移動しましょう。他に魔族や危険なモンスターがいる可能性もゼロではありませんから」

「安心しなさい」

コリンヌの声が聞こえたのか、離れた場所にいたシルフィールが口を開いた。

「仮に別の魔族が出てきたとしても、私が全部倒してあげるから」

そう言って、シルフィールは双頭光王をくるりと回した。