軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再び領主館

「よぉ、領主のおっさん。久しぶり」

「……やはり、来たか……」

俺とレフィ、そして今回は勇者も一緒に通されたのは、以前も来たことのある応接間のようなところだった。

対面に座っているのは、いつか見たことのある街領主。確か、レイローって名前だ。うん、合ってる。分析スキル有能。

ただ、以前見た時と比べて、ちょっと頭の毛が薄くなったか?シワも増えたように感じる。きっとストレス社会なのだろう。よくわかるよ。

「……報復に、来たのだろう?」

「へっ?」

「わかっている。魔境の森に入らせないように徹底させると言っておきながら、この様だ。だが、願えるならば、この老骨の命、それだけで許していただきたい。民の命は、どうか見逃していただけないか」

「お、おう。いや、落ち着け、おっさん。早まるな。そんなつもりは毛頭無いし、今日は話をしに来ただけだ」

このおっさんは、そんな俺が人ぶっ殺すの大好き!みたいに見えているのだろうか。非常に心外である。

「……報復に来たのではないのか?」

「違うって」

そう言うとおっさんは、見てわかる程に安堵の表情を浮かべ、ホッと息を吐き出した。

「そうか……申し訳ない、少し取り乱したようだ」

「言っておくがな、別に俺だって虐殺が趣味って訳じゃねえんだ。ただ、俺の―― 俺達(・・) の安寧のために、敵の姿を明確にしておこうと思ってな。俺達にちょっかい出してきてんのは、国そのものだろ?」

「……どうしてそう思ったのか、聞かせていただけるか」

「そりゃ、軍隊動かせて、勇者も動かすようにと、力を持ってる教会勢力に圧力掛けられるヤツと言ったら、さらに上の立場にある国しかないだろ」

「……勇者?」

……ん?

「何だ、知らなかったのか?――ネル」

「……こういうことに僕を使わないで欲しいんだけどな……」

そうジト目で俺に溢してから、勇者は目の前の領主に向き直る。

「僕は、ファルディエーヌ聖騎士団所属の聖騎士で――今代の、勇者です」

「なっ――……失礼」

そう一言断ってから、まじまじと勇者のことを眺め出すおっさん。

このおっさん分析スキル持ちだったし、恐らく今になってようやくその正体を確認しているのだろう。

分析スキルはプライバシーなんてあってないようなものだしな。普段は使わないように気を遣っているのかもしれない。

「……本当のようですな。しかし、何故勇者殿が魔王と共に?」

「それには訳があって……というかまあ、簡単に言うと撃退されちゃったんです。ただ、その後色々話す機会があって、どうやら僕が事前に聞いていた情報と大分齟齬があったみたいで。その確認を行うために街まで戻って来ようとしたら、おにー――魔王が一緒に付いて行きたいって」

「……なるほど。それはさぞ苦労したでしょうなぁ」

「……はい。もう、色々、大変でした」

憐れみを含んだ領主の言葉に、勇者が深々と頷く。

おう、何だお前ら。そんなに俺達の相手するのが疲れるって言いたいのか。

「……それにしても、勇者と言えば、国の非常時にのみ動員されるはずであるのに、それを、こんなくだらないことに投入するなど、全くあのクソどもはッ!!」

「お、おう」

突然ダン、と机を叩き、忌々しげな表情を浮かべる領主のおっさん。

大分ストレスが溜まっているのだろうか、情緒不安定だ。

「落ち着けよ、おっさん。話が進まん」

「……申し訳ない」

フー、と息を吐き出し、気分を落ち着けるおっさん。

……どうして俺が宥め役に回っているのだろうか。

「それで、結局軍とコイツの派遣を決めたのは誰なんだ?」

「…………それは、言えない」

「……へぇ?」

その瞬間、俺は魔力を解放して、領主へと多大な圧を掛ける。

「ッ――」

レフィは特に反応することはなかったが、しかし隣の勇者が瞬時にソファから飛び上がって大きく後退りし、いつでも武器を抜けるように構えを取る。

チラリとだけ勇者の方に視線を送ってから、領主はこちらに視線を戻し、額に冷や汗を流しながら答える。

「……私もこの国に所属する身。いくら腹が立ったとしても、祖国に確実に害となるだろう情報を渡すことは出来ない」

「俺が――この街を滅ぼすと言っても?」

「そうだ」

先程まで、民のために自分の命を、と言っていた男は――決然とした様子で、頷いた。

しばし、部屋を重い静寂が支配する。

「――そうか」

フゥ、と小さく息を吐き出して俺は、魔力をすぐに収めると、肩を竦める。

「そんじゃ、邪魔したな。レフィ、帰るぞ」

「む?もういいのか?」

「おう。お前、串焼き食いたいって言ってただろ?それ食いに行こうぜ」

「それは良い提案じゃ」

「……何もしないのか?」

態度が一変した俺に、領主のおっさんは呆気に取られた様子でそう聞いてくる。

「おう。その様子じゃ、俺が何をしても言わないだろうしな。俺の負けだ。大人しく観光だけして帰るさ」

殺されるかもしれない状況の中で、自身の信念を貫き通す様は、ちょっとカッコいいと思っちまったからな。

そんなヤツ、手出しなんか出来ないさ。

「ネル、お前はどうする?」

「えっ?え、えっと……僕は、もうちょっとだけ領主様とお話していくかな」

「そっか。んじゃ、また明日辺りこの領主館前で落ち合わねえか?俺、まだ色々案内してほしいんだけど」

「あ、う、うん、いいよ。わかった」