軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そうだ、街へ行こう

勇者が、思っていたよりもこちらに好意的で助かった。いや、好意的というよりは、ただ純真なだけか。

人間側の事情を聴いてみたかったためウチまで呼んでみたものの、実は勇者のことは最初少し警戒していて、信用していいものかと悩んでいたのだが、しかしニコニコ顔のイルーナ曰く、

「あのおねえちゃんは大丈夫だよ。いい人だから!」

とのことだったので、それからはもう全く警戒していない。

イルーナの、その辺りの感覚は非常に信用出来る。

どうやら彼女は、何か法則めいたもので相手の善悪を判断しているらしく、一度彼女と一緒に森に出掛けた時も、俺が声を掛けずとも危険な魔物と危険じゃない魔物の区別をしっかりと付けていた。

そんな彼女が勇者のことを善であると言うのであれば、やはり勇者は善の者なのだろう。

――彼女から話を聞いた限り、恐らく俺の敵は、 国そのものだ(・・・・・・) 。

教会と言えば、どこでも大きな力を持っているものだ。

聖騎士団なんて独自の軍事力を持っていることから見ても、相当に力があるはず。

それを相手に、上から無理な指令を出すことができ、なおかつ森まで襲って来たような正規の軍隊も動かせるとしたら、そのような存在は自然と限られるだろう。

ただ……何となくその動きは、非常にチグハグなように思える。

軍隊をよこした割には、その規模ははっきり言って小さかった。

こちらの実力を見誤っていたという可能性もあるが、しかし二度目に勇者なんて個で非常に強い相手を寄越して来たのだ。十二分に警戒していると思われる。

勇者が思っていた以上にビビりだったのでこちらに被害は皆無で済んだものの、ぶっちゃけ普通に戦うことになったら俺、負けていたかもしれんからな。

ステータス的には向こうよりも高いが、しかし彼女はちゃんと戦闘訓練を積んでいる訳だし。

俺、はっきり言って喧嘩は素人だし。

だが――その勇者も、今回の派遣では一人だった。

軍の損耗を嫌ったとも考えられるが、それだったら勇者に何かあった方が大きな損耗だろう。

何が目的で森まで来ているのかは知らないが、それが国の表立っての方針であるなら、コソコソする必要はない。

俺が街を襲ったからその報復、ということで堂々と軍を招集し、勇者と数の力で襲いに来れば良いのだ。

恐らく軍を動かせることから、敵は国の中枢に近しい者だろうが……何だか、はっきりしない。

以前から思っていたが、これは一度、情報収集のために人間のいるところまで降りた方がいいだろう。

幸いにも、情報を聞く相手にはアテがある。

「――ということで、勇者、道案内よろしく」

「…………えっと、全然話が見えないんだけど、何の道案内?」

突然そんなことを言い出した俺に、勇者が怪訝そうに俺を見る。

「お前、今から帰るんだろ?それに俺も同行するから」

「えっ」

「俺、前々から人間の街って行ってみたくて、いい機会だからさ。よろしく」

「えっ」

「あ、ユキ。それ儂も付いて行くことにしたからの」

「へ?お前が?」

レフィから予想外の言葉を聞いて、思わず彼女の方に目を向ける。

ダンジョンの面々にはすでに話を伝えてあり、さっきはそんなこと言っていなかったのだが。

イルーナは付いて行きたがったが、しかし魔族の彼女に人間の街ははっきり言って危険だ。

以前に俺が殺したヤツらでなくとも、魔族と人間は敵対している。

俺だけならば恐らくまだ対処可能だが、しかしひょんなことでイルーナの正体がバレて、危険に晒されるともわからない。

故に、ここにいるようにと言ったのだ。

世話は、レイラとリューがいれば大丈夫だしな。

「何じゃ?儂が付いて行ったら駄目な理由があるのか?」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべてそう言うレフィ。

「いや、全然。普通に嬉しいけど、お前がそんなこと言うとは思ってなくてな」

レフィがいたら、もしものことがあっても俺も安心だしな。

「そ、そうか、嬉しいか……。ゴホン、いや何、お主は思っていた以上に女に甘いということがわかったからの。人間の女に 現(うつつ) を抜かして、帰りが遅くなっても困るから、儂が付いて行って監視しようかと思ってな」

「レフィおねえちゃんがいるなら安心だからね!お願いね、おねえちゃん!」

「うむ。任せておけ」

「いや、お前ら……というか、イルーナが付いて行きたがったのそれが理由かよ……」

そう苦笑を溢してから、言葉を続ける。

「……まあ、わかったよ。それじゃあ、留守を頼むぞ、レイラ、リュー。」

「お任せくださいー」

「ウッス!任せてくださいっす!ご主人がいない間、しっかりここを守るっすからね!」

「うわあ、すげえ不安だ」

「何でっすか!?」

思わず愕然とした様子でツッコむリューに、笑う俺。

「冗談だ。頼りにしてるよ。リル、俺がいない間、ここの守りを頼むぞ。敵は潰せ。シィもな。ちゃんと皆のこと、守るんだぞ」

俺の言葉に、リルが神妙そうな顔でこくりと頷き、シィが「任せて!」と言いたげにポヨンポヨンと跳ねる。

ちなみにレイス三人娘も、城の窓から顔を出し、こちらに手を振って見送りをしている。

「それじゃあ、行ってくる。一週間ぐらいで帰って来るから」

「うむ。それじゃあの」

「いってらっしゃーい!」

「はい、いってらっしゃいませー」

「いってらっしゃいっす!」

そんな俺達の様子を見て、勇者がポツリと溢した。

「……あの、僕、まだ何も言ってないんだけど……」