軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

野望へと至る道:終局

――まず、結論から言おう。

城、メッチャ不便だったわ。

俺の野望、メッチャ不便だったわ。

まあ、うん、あれよね。

広く造り過ぎたのよね。

威厳こそ無駄に有り余った様相をしているが、残念ながら広過ぎるせいで、移動が面倒臭過ぎた。

完成した時は、俺もテンションマックスでウェイウェイといった感じで、皆もすごいすごいと喜んでくれたが、しかしデカい。デカ過ぎ。廊下長過ぎ。

一応、正面の一際デカい建物の中に全員分の部屋は作ってあるのだが、その不便さのせいで誰も使わず、結局皆が生活するのはいつもの玉座の間だけとなり、一日もしたらそれ以外の場所には全く行かなくなった。

唯一、イルーナだけは未だ楽しんでくれているようで、連日「探検してくる!」と言って、リルとシィをお供に外へ遊びにいってくれていることが幸いか。

ちなみにいつもの生活空間である玉座の間に繋がる扉は、城自体に別で作った玉座の間の裏側の部屋に設置されている。これから、この俺達の暮らすここは『真・玉座の間』と名付けよう。

……いいんだ、別に。これだけの規模の城が洞窟の奥にあったら、侵入者に対して十分威圧出来るだろうし。せっかく上達した土魔法を使って花壇を造って、なんかいい感じの中庭を製作したりだとか、石製の西洋甲冑っぽい鎧を造って廊下に並べたりとか色々頑張ったんだけど、まあきっと侵入者に「こ、こんな素晴らしい城があったなんて……!」とメンタルダメージを与えてくれるはずだし。

そうだ。考えてみれば、RPGに出て来る魔王だって自分の城の中ウロウロなんてしてないだろう。基本的に玉座の間に引っ込んで威厳たっぷりに玉座に座っているだけだ。それを考えてみれば、こんだけ気合たっぷりに造ったけど玉座の間だけで生活しているというのも、全然おかしなことじゃない。

それに、この城はあくまで俺の野望であり、ロマンだ。ロマンというのはそこにあるだけでワクワクさせられるものであり、要するにディズ〇ーランドみたいなものだ。その場所に行って楽しみはすれど、別に暮らしはしないと。そういうことだろう。

うん……。

「……まあ、うむ、あれじゃ。儂の見て来た今生の城の中では、一番に素晴らしいものであるのは間違いないぞ」

玉座に座り、だらぁとだらけて不貞腐れる俺を見て、レフィがそう慰めてくる。

「いいんだぜ、本音を言っても……。こんなデカいだけで邪魔な廃棄物、どうして作ったんだ?ってな」

「おう、かつてない程に卑屈になっておるな」

やる気なさげに返した俺の言葉に、くつくつと笑うレフィ。

「何だよ、レフィ」

「いやなに、お主のその姿が面白くての」

そう言うと彼女は、どういう訳かポフッと玉座に座る俺の膝に上に乗っかり、そのまま身体を預けてくる。

肌を通して伝わる、彼女の温もり。

嗅ぎ慣れた彼女の香りが、鼻孔をくすぐる。

「お、おい」

「駄目か?」

「……い、いや、ダメじゃねーけど」

レフィは至って平然としているのに、俺がここで動揺するのは何だか負けた気がするので、努めて何でもない風を装う。

どちらも口を噤み、しばし沈黙が流れる。

心地良い、静寂。

「……お主は、あたたかいな」

唐突に、ポツリと彼女は言った。

「生きてるからな」

「カカ、そうじゃな」

「……?」

レフィが何をしたいのかがわからず、俺はぐーたら覇龍様の顔を覗き込む。

すると彼女は首を曲げ、頭を反対向きでこちらを見上げた。

「ユキよ。儂は今、楽しいぞ。お主が毎日、色々面白いことをしてくれるからの」

「何だ、慰めてんのか?」

「そうじゃ。伴にいる相方が、何だか不貞腐れておるようじゃったんでな。ここは年上の包容力を見せて、その相方を甘やかしてでもやろうかと思ってな」

おどけたように肩を竦めてそう言うレフィに、俺は苦笑を溢す。

「お前にそんなことを言われるとはな」

「お主はしっかりしているように見えて、 阿呆(あほう) っぽいところも多いからの。儂のように良識ある大人が見守ってやらねばなるまい」

「よく言うぜ、ゲームに負けただけですぐムキになるくせに」

「そ、それは関係ないじゃろう!それに、遊びは本気でやらねば楽しくない」

むぅ、と唇を尖らせ、下から俺を睨むレフィに俺はフッと小さく噴き出して、彼女の頭にポンと手を置く。

「――レフィ」

「何じゃ」

「これからもよろしくな」

俺がそう言うと、レフィは片頬を吊り上げ――そのまま俺の胸に頭を預けたのだった。

「――あー!レフィおねえちゃんずるーい!おにいちゃんのお膝の上に乗ってるー!」

――と、その時、外から帰って来たイルーナが、こちらを指差してそう言う。

「おう、イルーナか。ずるいと言うなら、お主もこっちに来ればよかろう?」

「む……!じゃあ、イルーナもおにいちゃんに抱っこしてもらう!」

言うが早いが、彼女はトテトテとこちらに走り寄り、そのままジャンプして俺達の上に飛び乗る。

「おわっ、ちょっ」

二人分の重みがズシリとのしかかる。

「お、お前ら、二人は流石に重いぞ」

「男じゃろう。それぐらい我慢せい」

「そうだぞー、おにいちゃん!女の子に重いって言っちゃだめなんだからね!」

「そう言ってもお前ら、この椅子結構硬いから痛いんだぞ、これ」

「じゃあ、イルーナがおまじないしてあげる!痛いの痛いの~、飛んでけ~!!」

「うわあ、すごい、今ので痛いの飛んでっちゃったなぁ」

「小児性愛者」

「聞こえてんぞ、オイ」

そうして俺達は、玉座の上で三人一塊となったまま、しばらくの間戯れ続けたのだった。