軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

野望へと至る道:城建設編

――準備は整った。

DPは、ある。

イメージも、原初魔法のスキルレベルが一つ上がる程土魔法でミニチュアを造り続けていたため、かなり強固に頭の中に浮かんでいる。

唯一の懸念はMPだが、即効性はないものの魔力の自然回復力を大きく上げられる『マナポーション』も上級のものを三つ用意し、それでも足りなくなった時はレフィに俺の魔力タンクになってもらえるよう、すでに頼んである。

――ここまで布陣が整えば、もういいだろう。これでまだ失敗するようであれば、俺には時期尚早ということだ。

「おにいちゃん、今から何するの?」

「心して聞けよ、イルーナ。お兄ちゃんはな、今から野望のための道を切り開くのだ!!」

「ユキ、何言っとるのか全っ然わからんぞ」

「フッ、男の夢というものは、時に理解されないものよ……」

「あ、駄目じゃ此奴。完全に自分の世界に入っておる」

「ご主人、まれにそういう時あるっすもんね」

「まあまあ、男の方はそんなものだと思いますよー?」

外野がうるさいが、しかし今の俺を止められる者はいない。何故なら今の俺は、気力、魔力、妄想力の三つが揃った、最強の男だからだ(?)。

俺達がいるのは、草原エリア。皆を「今から一大スペクタクルを見せてやるから付いて来い!」と呼び寄せ、俺の後ろに女性陣が佇んでいる。リルとシィも一緒だ。

「レフィ、俺が魔力やばくなったら言うから、その時は頼むぞ」

「わかったわかった、ちゃんとやってやるから、そんな顔でこちらを見るな」

一応何をするつもりなのか知っている彼女が苦笑交じりに頷いたのを見てから、俺はアイテムボックスを開き、予め魔力回復力を上げておくため上級マナポーションを取り出し、それを一気に飲み干す。

苦くてクソマズいが……しかし、我が野望の前には低い障害だ。

「…………フゥ」

上級マナポーションの空き瓶をアイテムボックスに戻してから、俺は深く息を吐き出し、精神を集中させる。

イメージは……大丈夫。もはや夢の中でも土弄りし始める程ミニチュアを造りまくったため、城の外装から行き、大まかな内装までが、もはや幻視出来るのではないかと思うぐらい頭の中に明確に存在している。

城を建てる位置は、草原エリアから玉座の間へと繋がる扉を中心に、そこから左右に広げていく。すでに旅館などの施設は別の場所に退避させてある。

そうして頭に物を思い浮かべたまま、今度はメニューを操作し、『ダンジョン』の項目から『想像施設』を選択――ダンジョンスキルを、発動させた。

――瞬間。

全身を襲う途方もない虚脱感。

グッ……これは、キツイな。予想以上に魔力を吸い取られる上に、その速度が異常に速い。

額に浮かぶ、脂汗。

全身の力を奪おうとする虚脱感に必死に耐え、城のイメージが途切れないように強く意志を保ち、脳裏にその姿を思い浮かべ続ける。

――チッ……ダメだ、マナポーションの回復力が全然追い付いてねぇ!

やはり、それだけ俺の造るものが巨大であるが故だろう。見る見る内に魔力が無くなっていき、一万を超える俺の保有魔力が、三分の一以下にまで落ち込む。

「――レフィ!頼む!!」

「あいわかった!」

彼女の方でも、俺の魔力の減り具合を確認していたのだろう。予め魔力を譲渡出来るように準備してくれていたようで、俺が声を掛けるとすぐに、俺の背中に華奢で小さな手が添えられる。

――同時、俺の中に吹き荒れる、熱く、物凄い力の奔流。

「フゥ、フゥ」

その力に押し潰されないように俺は、歯を食いしばり、大きく深呼吸を繰り返す。

「こ、これは……すごい魔力の量ですねー」

「ウ、ウチでもわかるっす。あの魔力の量、超大規模魔法ってレベルを余裕で越してるっすね……」

後ろ二人の声が耳に入るが、答えている余裕は無い。

レフィから莫大な量の魔力が流し込まれ、そしてそれが大河の如き勢いで身体から流れ出していき、その力のやり取りの大きさにオーバーヒートを起こしてしまいそうだ。

身体を襲うとてつもない負荷に根性で耐え続け、意志を振り絞ってイメージを脳裏に浮かべ続けていると――やがて、ゴゴゴ、と地面が揺れ始める。

「うわっ、な、何すか!?」

思わずと言った様子で、リューが驚きの声を上げる。

その揺れはどんどんと大きくなっていき、立っていられないぐらいのところで臨界点を迎えたようで、その瞬間激しい轟音が耳を穿つ。

何かが草原エリアの下から地を割って現れ、同時に大きく土埃を舞い上げる。

刹那に訪れる、静寂。

舞い上がった土埃は徐々に晴れていき、やがてその先にあるものの姿を鮮明にしてゆく。

やがて見えてきたのは――天高く 聳(そび) え、果ての見えない、黒の巨城。

それは、俺の思い浮かべた通りの姿で……しかし想像よりなお一層の荘厳さを誇っているように見えた。

「で、出来た……」

その様相を確認した瞬間、俺の身体から力が抜け、がくっと膝から崩れ落ち、そのまま倒れそうになるが、その前に後ろにいたレフィが俺の背中を支えてくれる。

「よう頑張ったの」

「へへ……どうよ。すげーだろ」

「うむ。これはちょっと……儂の想像以上じゃったな」

素直なレフィのその言葉に、俺はニヤリと口角を吊り上げる。

チラリと後ろを確認すると、他の女性陣は口をあんぐり開け、眼を真ん丸にして驚いていた。面白かったのは、リルまでもが口を大きく開けて呆然としていたことか。

「お前ら、感想は?」

「――お、おにいちゃん!!すごいすごい!!これ、皆の新しいお家!?」

「そうだぞ。部屋は腐る程あるから、好きなところ使っていいからな」

と言ってもまあ、内装までも完成しているのは正面にある一際巨大で美麗な造りの宮殿っぽい建物だけで、それ以外のところはまだまだ吹き抜けだったり廊下しかなかったりしているだろうけどな。

その辺りは、これから追加していくことにしよう。今後の楽しみだ。

「…………私、まだ魔王様のお力、見誤っていたようですー」

「ご、ご主人がここんところずっと模型を作っていたのは、このためだったんすね。こんなすごいお城、見たことないっす」

彼女らの感想に、俺は満足げな様子で「うむ」と鷹揚に頷く。

「――ところで、ユキ、一つ聞いておきたいんじゃが」

「何だ?今の俺は気分が最高に良い。何でも聞いてやるぞ」

「これは、儂らどうやって寝床まで戻るんじゃ?」

「…………あっ」