作品タイトル不明
閑話:不思議なこと
最近ちょっと、不思議なことがあります。
「おう、レフィよ。暑苦しいぞ」
「何を言う。儂が先にここにいたんじゃ。お主こそ暑苦しいぞ」
――おにいちゃんとおねえちゃんの仲が、とてもいいのです。
前々から仲良しさんで、毎日一緒に遊んで、楽しそうにしている二人ですが、最近は特に仲がいい感じで、見ていればその違いはすぐにわかります。
今も、口ではお互いいつもの調子で悪口を言い合っていますが、しかしピトっとくっ付いて、ずっと身体を預け合って、いつもより密着している感じです。
何だか、距離感が近い、といったところでしょうか。
その変化が気になり、ジーっと二人のことを見ていると、おにいちゃんとおねえちゃんは見られていることに気が付いたのか、ハッとした様子になり、そそくさと離れてそれぞれどこかへと行ってしまいました。
……二人がラブラブさんなのは、今に始まったことではありませんが、やっぱり最近はさらにラブラブさんになっていると言えるでしょう。
「ラブラブサンダー!」
「……ビリビリする」
どうやら、シィとエンも同じ気持ちのようです。
「どうしておにいちゃん達、あんな急に、ラブラブさんになったのかな?」
首を捻っていると、シィがピシッと手を挙げます。
「はい! きっと、ラブラブはサンダーだからです!」
「……多分、『ラブラブサンダー』は魔人キューピッドの必殺技。対象をメロメロにして、一時行動不能にする」
「それはツよい!」
「……そして、その間に魔人キューピッドは変身する。変身後は三倍に巨大化して、能力も三倍。とても強い」
「へんしんは、ボスのきほんだね!」
「うーん、レイラおねえちゃんに聞いても、あいまいに微笑むだけで教えてくれなかったしなぁ」
二人が口々に好きなことを言っていますが、いつものことなので、気にせずわたしも思考を続けます。
「レイラおねえちゃん、さいきょうさんだかラね! きっと、まじんキューピッドもたおせちゃうとおもう!」
「……ん。主も、『レイラは木の葉にて最強』って言ってた。木の葉って、あの木の葉っぱ?」
「さア? あるじも、ふしぎさんだからね~。でもきっと、レイラおねえちゃんがつよいってこと、いいたかったんじゃない?」
おにいちゃんは他の誰も知らないような、よくわからないことを時々言う不思議さんです。
ただ、木の葉が何を指しているのかはわからないけれど、シィの言う通り、レイラおねえちゃんがすごいということを言いたかったのはきっと確かでしょう。
我が家で、レイラおねえちゃんに敵う人はいないのです。
「……ん。レイラはとても強い。天下一武道会でも、きっと優勝出来る」
「そうだネ! こう、『は~っ!!』ってビームをだして、かつとおもう!」
……それにしても、相変わらずこの子達は、自由さんです。
ちょっと油断すると、話があっちこっちに飛んでしまいます。
多分、いや確実に、おにいちゃんの影響を受けているのでしょう。
おにいちゃん、不思議さんな上に、とっても自由さんなので。
あと、レイラおねえちゃんも流石にビームは出せないと思います。
でも、魔法を使ってなら、武道会も優勝出来るんじゃないでしょうか。
わたし、知っています。
レイラおねえちゃんみたいな人のことは、『裏ボス』って言うんです。
表のボスはおにいちゃんだけれども、でも真のエンディングに辿り着くためには、裏ボスであるレイラおねえちゃんを倒さないといけないのです。
「――って、そんなことはどうでもいいの! 今は、おにいちゃん達のことだよ!」
わたしの言葉に、しかし二人は、不思議そうに首を傾げました。
「べつに、ほうっといて、いいとおもうヨ? なかよしさんだったのなら」
「……ん。仲悪さんだったら駄目だけど、仲良しさんだったら、何も問題ない。むしろ、良いこと」
「……それもそうだね!」
よく考えたら、そうでした。
あの二人が仲良くしているのを見ると、こっちも嬉しくなってしまうので、とっても良いことです。
何の問題もありませんし、何も気にする必要はありません。
「ねね、それよリ、おそといこう! おそと!」
「……ん。今日は、何する?」
「きょうは~……じゃあ、ボールごっこ!」
「……ボールを蹴ったり、投げたりする遊び?」
「ううん、ちがう! ボールのマネをして、まるくなるあそび!」
「……わかった。ならエンは、バスケットボールの真似」
「ならシィは、バレーボールのマネ~。イルーナは?」
「わたしは~……それじゃあ、ラグビーボールの真似~!」
「お~! ここであえて、ラグビーボール! ポイントたかいよ~!」
「……ん。素晴らしい着眼点」
「えへへ、少しひねってみたの!」
不思議なことは解決したので、そんなことを話しながらわたしたちは、お外へと遊びに行ったのでした。
――みんなと一緒にいると、本当に楽しく、しあわせです。
お勉強をして、毎日クタクタになるまで遊んで、美味しいごはんを食べて、温かいお風呂に入って、グッスリ眠る。
大好きなおにいちゃんと、大好きなみんなと一緒に、毎日を過ごす。
わたしは、知っています。
これが、とてもしあわせで、恵まれたことなのだと。
「ねぇ、おにいちゃん」
「おう、何だー」
夕方になり、わたしたちを呼びに来たおにいちゃんと手を繋ぎながら、彼に言います。
「いっつもありがとね!」
と、おにいちゃんは何か言うことはありませんでしたが、しかしわたしの頭をポンポンと撫でました。
わたしは、その手の温かさにとっても嬉しくなって、思わず笑顔を浮かべていました。