軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

急な着信は結構驚く

「……ぅ……」

「お。起きたか、ユキ」

軽く頭を振りながら、身体を起こす。

と、まず視界に映ったのは、俺の隣に座っているレフィ。

「ここは……ダンジョンか。あぁ、お前が運んでくれたのか?」

覚えているのは、レフィのボールを顔面でキャッチしたところまで。

だが、こうして布団に寝かされている以上、誰かがここまで運んでくれたということだ。

「ま、途中まではリルじゃがな」

肩を竦めてそう言うレフィ。

ということは、途中からはレフィが運んでくれたのか。

「そうか……ならまあ、サンキューな。治療もしてくれたようだし」

自身の頬を触ってみるが、何も痛みもなければ腫れた様子もない。

あの打球を受けた以上、いくら強靭な魔王の身体と言えど無傷で済む訳がないので、恐らくはレフィが治してくれたのだろう。

……全く、本当に世話になるとはな。

「儂の球を受けての結果じゃしな。それぐらいはしてやる。――それより、今のところ一勝一敗じゃったな」

「えっ」

間の抜けた声を俺が漏らすと、我が嫁さんはニヤリと笑みを浮かべて言葉を続ける。

「お主が取って、儂が打って、それで今のところ五分じゃろう? 次は投手と打者でも交代して、儂が投げる方を――」

「俺の負けですごめんなさい」

布団の上で、華麗な土下座を決め込む俺が、そこにいた。

レフィはからからと笑うと、ポンと膝を叩いて立ち上がり、俺の頭をくしゃくしゃ撫でながら言う。

「ならば、勝者の権利として、今日は酌でもしてもらおうかの」

「へへぇ、仰せの通りに。是非ともお酌させていただきやすよ、旦那ァ」

「いや、儂に向かって旦那は色々と違くないか?」

小悪党染みた所作で揉み手をする俺に、レフィは苦笑を浮かべた。

* * *

それから、幼女達が寝静まった後。

「ほれ、ユキ! 次を酌むんじゃ!」

「わ、わかったわかった、ほら」

「うわぁ……レフィ様、ぐでんぐでんっすねぇ……」

俺の腕を引っ張るレフィに酌をしてやっていると、隣でこちらの様子を見ているリューが、若干呆れ気味に笑いを浮かべる。

「コイツ、酔いが冷めるのは早いけど、そこまで酒に強い訳じゃねーんだよな」

「あはは……可愛いっすけどね」

「リュー、お主もにょめ!」

「はいはい、飲んでるっすよ、レフィ様――あれ、レフィ様?」

「……zzz」

「……寝てますね」

「寝てるな」

今の今まで普通――いや酔ってはいたが会話出来ていたのに、一瞬で寝落ちして、俺の膝を枕に寝息を立ててやがる。

その彼女の様子に、互いに顔を見合わせ、苦笑を浮かべる俺とリュー。

「それにしても、お前酒強いんだな」

「あんまり飲む機会も無かったから知らなかったっすけど、そうみたいっす。ご主人もかなり強いっすよね」

「いや、結構限界だぞ。早めにコイツが潰れてくれて助かったぜ」

レフィに付き合わされ、リューもかなり飲んでいるのだが、一向に酔う気配がない。ケロリとしている。

対して俺は、レフィよりはマシだが、自分でも大分酔いが回って来ていることがわかる。

今までの調子でレフィに飲まされ続けていたら、近い内記憶が無くなっていたことだろう。

「――あ! ふぅ……呑み過ぎてちょっと熱くなって来ちゃったっす」

と、そう言って突然、リューはわざとらしくメイド服を軽くはだけさせ、手で顔を扇ぎ始める。

「……あの、リューさん、今更ながらそんなベタベタな酔う演技をされても困ります」

「フフフ、どうっすか? グッと来るっすか?」

「いや、全然似合ってなくて滑稽に見える」

「滑稽!?」

俺の言葉に、愕然とした表情を浮かべるリュー。

「そ、そんなことないっすよね? ほ、ほら、ご主人、男の人が大好きな谷間っすよ、谷間」

俺があんまり反応しなかったことが悔しかったのか、彼女はさらに胸元のボタンを外し、俺にしなだれ掛かってくる。

「谷間つっても、レイラがやるならともかく、お前ほとんど谷間出来ねーじゃん」

「結構ゲスいことをサラリと言われた!?」

リューさん、はっきり言って、色気がちょっと足りないし。

と、流石に怒ったのか、「むー!」とポコポコ殴ってくるリューに、俺は「冗談だ」と笑いながら彼女をいなす。

「ぬ、ぬぐぐ……全く、失礼しちゃうっす! う、ウチだってちょっとぐらいは谷間あるっす! というか、こんな可愛い可愛いお嫁さんが、こうして頑張って誘惑しているというのに、ご主人と来たら!」

「愛情表現さ。お前はからかい甲斐のあるヤツだからな」

「……ま、いいっす! ご主人が天邪鬼さんだってことは知ってるっすから。寛大な心を持つウチは、失礼なご主人も許してあげるっす」

「そりゃ嬉しいね。ありがとよ」

ちなみに、ここにはレイラもいるのだが、彼女は俺達の前でニコニコ顔のままマイペースに酒を飲んでいる。

コイツも酒強いのか、と思ったが、よく見ると白い頬がいつもより赤くなっている。

酔っていないという訳では無さそうだ――って。

「……あの、レイラさん? いつの間にそんなに? というか、大丈夫?」

「はいー? どうかしましたかー?」

何だか、いつもより語尾を伸ばしながら、トロンとした目つきで答えるレイラ。ちょっとエロい。

レフィの対応とリューを揶揄っていて気付かなかったが、彼女の周りに転がっているワイン瓶の量が、いつの間にかものすんごいことになっている。

大体、俺達と比べて一対二ぐらいの差だ。

あれ、一人で飲んであの量だろ……?

「お、おい、流石に飲みすぎなんじゃないか? 大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫です、大丈夫ですよー」

ニコニコしながらそう言ったレイラは――そのまま突然、バタリと後ろに倒れた。

「レ、レイラ!?」

一瞬焦る俺だったが、彼女がレフィと同じく小さく寝息を立てていることにすぐに気が付き、苦笑を浮かべる。

……やっぱり、あんまり大丈夫じゃなかったみたいだな。

「……今、頭から行ったけど、痛くねーのかな」

「多分、痛覚も麻痺してるんじゃないっすか?」

そうみたいですね。

それで翌日になって、「あれ? 何だか知らない間に頭にアザが出来てる……」と不思議に思うのだ。

「レイラも、いい感じに気が抜けてきて、隙が多くなってきたっすねぇ。ご主人、レイラのおっぱい揉むなら、今っすよ」

「揉まんわ」

コイツはいったい、俺を何だと思ってやがるんだ。

「え、だって、レイラの谷間がどうって言ってたじゃないっすか」

「いや、それは比較対象として出しただけで……それに俺、どちらかと言うと太ももの方が好きだし……」

「じゃあ、レイラの太もも揉むっすか?」

「……揉みません」

「あ、今どうしようかちょっと悩んだっすね」

「う、うるせ」

仕方ないでしょう、レイラさん、このダンジョンで一番スタイルいいし……そりゃ、男ならぐらっと来ますよ。

リューは、その俺の様子に楽しそうに笑うと、しかし少しだけ寂しそうに言葉を続ける。

「……ここに、ネルもいたら良かったんすけどねぇ」

「そうだなぁ……あ」

「? どうしたっすか?」

突然声をあげた俺に、リューが不思議そうに首を傾げる。

「そう言えば、ネルに『通信玉・改』を渡してたんだった」

忘れてた、その気になればすぐネルの声が聞けるんだ。

そのことを思い出した俺は、連絡があった時のことを考え、アイテムボックスの中ではなく俺の作業机に置いておいた『通信玉・改』をさっそく持ってくる。

「これ、何すか?」

「これはケータイ……じゃ通じねーな。コイツに魔力を流し込んで起動することで、遠方の相手と会話することが出来るようになるんだ。つまり、ネルと会話が出来る」

「え、それすごい便利じゃないっすか!」

「けど、魔力消費が大きくてな。多分、お前が使うと一分ぐらいで魔力が切れる」

「……それ、使い物になるんすか?」

「ま、今回は送受信してるのが魔王と勇者だから、一時間ぐらいなら多分会話出来るぞ」

リューに軽く仕様の説明をしながら通信玉・改に魔力を流し込み、起動する。

「もしもーし、こんばんはー」

『ひゃぁっ!? な、何!?』

「お! 繋がった。よぉ、ネル。今大丈夫か?」

『あ、う、うん、大丈夫だけど……おにーさん?」

水晶の向こうから聞こえて来る、おっかなびっくりの様子のネルの声。

「はい、おにーさんですよ。お元気ですか、ネルさん」

『……うん、元気だよ。お風呂に中々入れないのが、ちょっと辛いと思ってるところだけど』

あぁ、風呂は時折しか入れないって言ってたもんな。

風呂好きらしいネルには、結構辛いものがあるのだろう。

『それで、どうしたの、おにーさん。何か困ったことでも……?』

「いや、特に何がある訳でもないんだがな。こっちでお前の話になってさ、声が聞きたいなってよ」

「ネル、元気っすか! しっかり食べて寝てるっすか!」

『その声は……リューだね。フフ、うん、レイラの料理が恋しくはあるけど、しっかり食べてるよ』

「バランス考えて食べないとダメっすからね! 魅力的な女になるには、日々の積み重ねが重要なんすから!」

『そうだね、気を付けるよ。あ、リューの方も、気を付けてね。レフィと一緒になって、お菓子いっぱい食べちゃダメだよ? あの子、僕達と身体の構造が違うみたいだから、同じくらい食べてると一気に太っちゃうからね?』

「ウッ……も、勿論わかってるっす」

サッと通信玉・改から視線を逸らしながら、そう言うリュー。

うん、君、レフィと一緒になって菓子をよく食ってるもんね。

レフィはアホみたいにバカスカ食っても太らないから、この俺の膝元でグースカ寝てるヤツに釣られて食ってると、あっちゅう間に太ることだろう。

「そ、それより! ネル、そっちで何か、面白い話とかないっすか?」

『え、うーん……怪人下着ドロボーを逮捕した時の話とか?』

「……それは、もはや怪人でも何でもないのでは?」

「ただの下着ドロじゃないんすか?」

私もそう思います。

『いや、それが違くてね? 最初はただの変態の仕業として捜査されてたんだけど、だんだんそんな単純な話じゃなくて、犯人が盗んだ下着を使って魔法陣を生成しようとしていることがわかって――』

下着を使った魔法陣って何やねん。

そして俺達は、離れた地にいるネルと談笑し、夜を過ごす――。