軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本戦開始:第一試合

――翌日。

仮面を被り、髪色と瞳の色をを変えて変装した俺は、武器状態のエンを肩に担いでステージへと上がる。

『――続きましては、やってまいりました、この男!!武器も抜かずただの咆哮だけで予選を突破してしまった、王の送り込んだ刺客!!まだまだ謎の多い彼は、いったいどんな試合を見せてくれるのか!!ユプシロンンンンッッ!!』

司会の紹介に、ノリよく歓声を上げる観客達。

『対するは!!デステア・トルム、出場経験十回!本戦出場回数もまた十回!!確かな実力を持ち、その巨躯から繰り広げられる多彩な攻撃に、魅せられた方も多いでしょう!この試合では、いったいどんな技を炸裂させるのか!!パラグロォォォォッッ!!』

『パラグロ――ッ!!』

『やっちまえ――ッ!!』

そして、俺の入って来た反対側の入口からステージへと対戦相手が現れた瞬間、俺の時より倍ぐらい大きい歓声が闘技場に鳴り響く。

……よし、アイツはぶっ殺そう。

まるでゴリラみたいな見た目のその対戦相手は、のしのしとステージの上を進み俺と対峙すると、ニヤリと笑みを浮かべ、野太い声で鼻息荒く話し掛けて来る。

「お前、予選、雑魚、潰して、良い気、なってる、そうだなっ?」

「…………」

「だが、自惚れぬ、方が、良いっ。本戦、出場者、アレぐらいの雑魚、誰でも、潰すこと、出来るっ!」

「…………」

「フン、ビビッて、いる?何か、言ってみたら、どうだっ?」

「……ん?あぁ、すまん。鼻息荒くて何言ってんのか全然わかんなかったわ。もう一回言ってくれるか、ゴリラ君?」

「ッ――!!」

ブチィ、とゴリラがわかりやすく青筋を浮かべたと同時――カァン、と鳴り響く試合開始の合図。

その瞬間、ゴリラ君は怒りの雄叫びを上げながらドシドシと地面を揺らしてこちらへと迫り来り、その腕を勢いよく後ろに引いて、まるで銃弾のような勢いで拳を打ち放つ。

……ふむ、武器も持っていないようだし、コイツは自身の肉体を武器とする、見た目通りのタイプなのだろう。

「ミンチにッ、なれェッ!!」

怒号を上げるゴリラ君の拳が、俺の顔面を吹き飛ばそうと襲い掛かり――だが、その拳が俺へと届く前に、動きが停止する。

「なにッ!?」

――ゴリラ君の拳は、俺の伸ばした手の平に、止められていた。

「お、良いパンチ。――じゃ、次は俺の番な」

ニィッと仮面の下で笑みを浮かべた俺は、お返しにヤツの胴体へと、鞘に入ったままの罪焔を叩き付ける。

エンを抜き放っちゃうと、実力差があり過ぎて、多分殺しちゃうからな。

基本的に何でもありのこの大会だが、流石に殺しまではNGだそうで、相手を殺した瞬間に反則負けとなってしまうため、恐らくエンを抜くことはしばらくないだろう。

これから闘うヤツらの中に、エンを抜き放たなければ勝てないようなのがいるのかどうか、気になるところだ。

「コフッ――」

横薙ぎに罪焔の鞘で殴られたゴリラは、そのまま地面に足裏を擦るようにして、土煙を立ち昇らせながら吹っ飛んでいく。

だが、俺の攻撃はこれで終わりではない。

ソイツが地面に倒れる前にその巨体の裏へと一瞬で回り込んだ俺は、そのムダにデカい背中を蹴り飛ばし、ゴリラの身体を前のめりに地面へと蹴り倒す。

鈍い音を発し、頭からステージの床へと突っ込むゴリラ君。

そこへ俺は、さらに確実に意識を刈り取るため、毛深いその顔面へとストンピングをかます。

足裏に伝わる、固いものを踏み付ける感触。

――一連の動作が終了し、巻き上がった土煙の治まったそこには、すでに白目を剥いて、意識を完全になくしているゴリラ君がいた。

『――っ、ど、どういうことだーッ!?先に攻撃を仕掛けたはずのパラグロ選手が、地面に倒されている――ッッ!?』

と、ようやく状況を把握した司会が、そんな驚愕の声を闘技場に響き渡らせる。

『ブ―――ッ!!』

そして、同じくステージの様子を把握し始め、ゴリラの顔を踏みつけている俺を見て、思いっきりブーイングをかます観客達。

そんな彼らに対し、俺は――エンを持っていない方の手を大きく掲げ、 中指を立てて(・・・・・・) ブーイングをさらに煽る。

『お、恐ろしい男です!!不遜にも、相手選手の顔を足蹴にしているだけでなく、観客を煽っているーッ!!』

……ヤバい。超楽しい。

プロレスで悪役レスラーとかいるけど、彼らの気分がよくわかるわ。

これ、この好き勝手にやっちゃう感じ。

マジで楽し過ぎる。クセになりそう。

……やっぱり俺、アレだ。絶対勇者とかそういうの向いてねーわ。

悪党万歳。欲望のままに生きる人生万歳。

そうして本戦の第一試合を勝利した俺は、ブーイングの嵐をむしろ清々しい思いで聞きながら、悠々とステージの上を降りて行った。

* * *

「――さて、それじゃあ……来ていただこうかな」

本戦に出場したためか、与えられていた個室の控室へと戻った俺は、アイテムボックスから鳴らない鈴を取り出し、それを左右に振る。

鈴から発せられる、魔力の波。

と、次の瞬間、控室の端の方の空間が歪み始め、それがどんどんと一つの形を為していき――やがてそこに、一人のフードを被った男の姿が現れる。

「へぇ……初めて見た。それが空間魔法ってヤツか」

「……おやおや、すごいですねぇ。一度使っただけで、見破りますか。私が現れる場所もわかっていたようですし」

現れたフードの男が、苦笑したような様子でそう言う。

「ま、そういうのはちょっと得意なんだ」

肩を竦めて、俺は答えた。

魔力のあるものなら何でも見通せる、魔力眼が俺にはあるからな。

俺の持っているスキルの中で、間違いなくトップランクにチートなスキルだろう。魔眼様様だ。

名:ルノーギル

種族:ガルディアン・デビル

クラス:音無の暗殺者

レベル:119

HP:3996/3996

MP:9690/9690

筋力:1001

耐久:992

敏捷:886

魔力:1002

器用:1851

幸運:199

固有(ユニーク) スキル:空間魔法、音魔法

スキル:隠密lv6、剣術lv8、危機察知lv6、索敵lv5

称号:王の右腕、暗殺者、無音

――それにしても、メチャクチャ強いぞ、コイツ。

俺が今まで見て来た魔物とクソ龍以外のヤツの中で、まず間違いなく一番強い。

空間魔法とか、今の感じを見る限り初見だったらほぼ防げそうにねーぞ。音魔法も併用していたようで、現れた時は全くの無音だったもんな。

あの王も、大した実力者、部下に持ってんじゃねーか。

「それで、この度はどのようなご用件ですかねぇ?」

「あぁ、そっちで気付いてるんだったらいいんだが、試合中に観客席から俺に向かって攻撃を放とうとしてたヤツが数人いる。早めに潰しといて欲しい」

恐らくは、悪魔族どもの仲間だろう。

試合中のドサクサに紛れて俺を殺そうとしたんだろうが、ソイツらが手を出して来る前に俺が対戦相手を潰してしまったからな。

何も出来ずに魔法を発動状態で待機させていたから、魔力眼で丸分かりだったぜ。

「流石ですねぇ、あの闘いの 最中(さなか) で、そこまで捕捉していましたか。位置をお教えいただいても?」

「ええっと……ここから見えるな。まず正面観客席の区域にいる、上から三番目の列の、あの丸刈りの男。次が、正面右の区域の一番下の席、子連れとカップルの間にいる眼鏡の男――」

そうして俺は、発見した敵をフードの男へと伝えていく。

「――それと……あー……あともうちょっといた気がするんだが、すまん、忘れた」

「いえ、これだけでも大分助かりますねぇ。残りの敵の大体の位置もお教えいただきましたので、後はこちらで排除しておきましょう。ご協力、ありがとうございます」

「気にすんな、敵の排除は俺のためにやってもらうことだしな。後は頼んだぜ」

俺がヒラヒラ手を振ってそう言うと、フードの男はコクリと頭を下げ、そのまま空間に溶け込むようにして消えて行った。