軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ペットとの戯れ

……そうか、コイツ……もはや称号を獲得する程の苦労をしていたのか……。

「……ごめんよ、リル。お前がそんなに悩んでいたとは……」

「クゥ?」

困惑した様子で俺を見るリルの身体を、俺はそっと撫でる。

うん……ごめんな。もっと俺も、優しくするからさ……。

不甲斐ない主を許してくれ……。

――と、そうしてリルの苦悩に涙していると、その時背後の洞窟からこちらに近付く二人分の足音を俺の耳が捉える。

「あっ!おにいちゃんいた!」

振り返ると、そこにいたのは手を繋いだイルーナとレフィ。

なかなかに微笑ましい図だ。

「お、二人とも。どうしたんだ、急に?」

こちらに駆け寄って来たイルーナを抱き留めながらそう問い掛けると、答えたのは一緒にいた俺の嫁さんの方だった。

「いやなに、お主が新しいペットを飼うと言っておったからな。イルーナがそれを見たいと言うもんで、一人で外に出すのは危ないから連れて来た」

外、というのはこの場合、洞窟の外を意味する。

以前イルーナが攫われたこともあるし、子供達には危ないから、外に出る時はメイド隊か、俺とレフィかを連れて行くように言いつけてあるのだ。

今じゃ、広い草原エリアもあるから、遊び場もいっぱいあるしな。

「そっか、ありがとな。お前も、大分保護者が身に付いて来たじゃねえか」

「何を言っておる、儂は元々立派な保護者じゃ。お主と言う大きな子供のな」

「おう、よく言うぜ」

俺としては、レフィという大きな子供の面倒を日々見ている気分なんだがな。

と言ってもまあ、何だかんだ言ってもコイツって、結構面倒見良いんだよなぁ。

よくイルーナの面倒も見ているし、その他の子供達も結構レフィのこと慕っているようだし。

それに最近は、家事も手伝おうとするようになったしな。

本当に、自慢の嫁さんだ。

「――本当に、自慢の嫁さんだ」

「んなっ、何じゃ急に!?」

「え?あぁ、すまん、口から漏れてたか」

「今の流れから何故急にそんな思考になるんじゃ!?」

顔を真っ赤にさせてそう言うレフィ。可愛い。

「まあまあ、気にすんな。それより、どうよ俺の新しいペット達は」

誤魔化すようにそう言った俺に、レフィは気を取り直すようにコホンと咳払いしてから、口を開いた。

「……此奴らは、アレか。お主が以前儂に聞いて来た奴らじゃな?」

「あぁ。お前が苦戦したって言ってた魔物の初期のヤツらを揃えてみた。まあ全員そういう訳じゃないが、育ったら多分かなり強くなるぞ」

化け猫のビャクとか、絶対俺の方の知識によって出現する魔物だと思うので、レフィも見たことないはずだが、しかしコイツは育ち切ると幻術のエキスパートになる。

きっと、「天照」とか言いながら絶対に消えない黒い炎で全てを燃やし尽くすことも可能になるはずだ。

「フン、儂はお主がまた、新たな童女を生み出すのかと思ったが、そうでなくて安心したぞ」

「いや、俺もそうなるかもってちょっと思ったけどよ」

実際、これ以上幼女が増えられても困る。流石にキャパオーバーだ。

今ですら幼女の余りあるパワーに圧倒され気味なのに。

と、そうしてレフィと話している間に、いつの間にか俺から離れていたイルーナが新しく召喚したペット達の前に立ち、目を輝かせていた。

「うわぁ、おっきい!これがおにいちゃんの新しいペットさん達なんだね!わたし、イルーナ!皆、よろしくね!」

物怖じせず元気良く話すイルーナに、新たなペット達の反応は二つに分かれた。

赤蛇のオロチと鴉のヤタが、幼い子供を相手にどうしたらいいかわからないらしくワタワタと焦った様子を見せ、逆に猫のビャクと水精霊のセイミがイルーナによっていき、ビャクが顔を擦り付けるようにして親愛を表し、セイミが楽しそうに近くをふよふよと漂っている。

おぉ……それぞれの性格がわかるな。

確かに、その通りな感じの見た目してるもんな。

オロチとヤタは真面目な感じで、ビャクとセイミは優しそうな感じ。

前者二匹がオスで後者二匹がメスというのも――いや、セイミもコイツ、特に性別なかったっけか。

まあ、オロチにヤタよ。君達も我が家の一員になったのだから、子供達の相手の仕方も覚えなさい。

きっとその内、他の幼女達にも 集(たか) られる結果になるのだから。

「うーん、ツヤツヤだぁ!」

しばしビャクのモフモフ具合を味わったイルーナは、興味を惹かれたらしく今度はオロチの身体にくっつき、その艶やかな赤色の鱗を堪能する。

が、子供が慣れないオロチはイルーナに引っ付かれたままオロオロと周囲を見回して右往左往する。

すると、それを見かねたビャクが小さくため息を溢すように息を吐き出し、一人と一匹の方へと向かった。

ビャクは「ニャーオ」と猫らしい鳴き声を上げ、オロチに何かを話し掛けたかと思うと、オロチはビャクに向かってコクコクと首を縦に振って頷き、今度はその首を下げてイルーナに頭を差し出した。

「? もしかして、乗せてくれるの?」

「シュゥゥー」

「わぁ!ありがとう!」

肯定らしいオロチの鳴き声に、パアッと笑顔を浮かべたイルーナは、そのままいそいそとオロチの頭に昇った。

「すごーい!!たかーい!!遠くのお山もよく見えるー!!」

その状態でオロチが首を上げると、一気に目線の高くなったことが楽しいのか、キャッキャッと歓声を上げるイルーナ。

「……いっつも思うけど、イルーナって本当に物怖じしないよな。度胸あると言うか……」

あの高さ、普通だったら怖がりそうなものなんだけど。

そうじゃなくても、オロチはかなりデカくて厳つい顔してやがるから、普通の大人だったらまず間違いなく出会った瞬間に逃げ惑うだろう。

子供の無邪気さ故か、それともイルーナが特別そうなのか。

「その辺りは、お主のペットじゃから、というのがあるんじゃろうな。後は、お主に似たか」

「へ?似てる?」

隣の嫁さんの方に視線を向けると、彼女は肩を竦めて言葉を返す。

「お主は、世界最強の種族である龍族に喧嘩を売る程の阿呆――もとい、クソ度胸があるからの」

「ハハ、そんなに褒めるなって」

「全く褒めておらん。――まあ、じゃから、そういうところが似たのではないか?」

「……そうか、俺に似たか」

「何で少し嬉しそうなんじゃ」

呆れた表情で俺を見上げるレフィ。

「い、いや、ほら、こういうのは何だか嬉しいもんじゃないか?相手が自分のこと慕ってくれてるような気がして」

「……まあ、わからなくもないがの」

「だろ?」

そうレフィの方に顔を向けていたその時、俺の耳にイルーナがこちらを呼ぶ声が届く。

「おにいちゃんおねえちゃん!みてみて!わたし、飛んでるー!!」

その声に彼女の方を向くと、知らない間にイルーナはオロチから離れヤタの背中に乗っており、俺達の上空を飛び回っていた。

「……お、おい、あれ大丈夫かな。落ちたりしそうですげぇ怖いんだけど」

「……お主、ちょっとあの鳥の近くを飛んでおれ。儂は下で見ておる。……彼奴、イルーナを落としたりなぞしたら、焼き鳥にして晩飯で食ってやる」

「……や、焼き鳥は勘弁してあげて」

い、一応俺の新しい配下なので。

――そうしてその日俺達は、新たなペット達と戯れるイルーナに、その後もずっとハラハラさせられ続けるのだった。