軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第112話 初めての依頼電話

秘密基地のランタンがぽつりと揺れる薄暗がりで、俺はリクに訊いてみた。

「リク、もしさ、能力者から電話かかってきて修理の依頼だったら、受けてみてもいいかと思うんだけど、どう思う?」

《相手が能力者であれば、太郎さんの力が露呈する危険性は高まりますよ?》

「まぁそうなんだけどさ。偽装がバレても秘密基地に引き篭もったら見つからないし、そもそも敵意のある奴が結界に入ってきたらすぐ分かるから、弾き出せるだろ。それに、最悪飛んで逃げる手段もできたしな」

《確かに、そのような“保険”があることで判断の幅は変わります。ただし“相手がどのレベルの能力者か”でリスク評価は大きく変化します。

もし、八咫烏様などのクラスが相手に居た場合はどうされますか?》

「その時はカラスに頭を下げてお願いするのが最も現実的だな。神格クラスの争いになれば、俺個人が介入なんてできないだろし」

《神話に新たな1ページが記載されますね。理由は太郎さんが原因になりますが》

「もしそうなったら、いっそのこと敵地のど真ん中まで飛行魔法で突っ込んで、かめは◯波をわざと暴発させて焦土にしてやってから逃げるけどな」

《それは逃走手段というより大問題の創出です。最終的には太郎さんの安全が第一ですが、周囲への被害も考慮すべきです》

「ははっ」

俺の軽い笑いに、リクが冷ややかに返す。

《理想と現実の落差は大きいです。ゴミ捨て魔法で全てを消し去った方が太郎さんの安全は確保されますね》

「お前、なんでいつも極端なんだよ!」

《効率的提案です》

その瞬間、影がふわりと動いた。カラスがいつものように姿を現す。羽をばさりと鳴らし、酒臭い息を吐きながら。

『お主ら、えらい物騒な話をしておるの』

「ああ、能力者っぽい人から修理依頼が来るかもってことで、バレたらどうするか話してたんだ」

『そんなこと気にしておったのか。お主の偽装とやらを見破れる人の子など、今の時代にはまずおらぬぞ。一昔前は力を持つ人の子もそれなりにはおったんじゃがのぅ、これも流れよな』

「それ、本当に信じて大丈夫なやつなのか? もし嘘ならバレた時には全力でカラスに押し付けるぞ」

『ぬ? わしの言葉を信じぬのか? よかろう、もし見破られるようなことがあれば、わしがなんとかしてやろうではないか』

カラスの物言いは余裕たっぷりで、どこか酔っぱらいのような気配も混じっている。俺は思わずツッコミたくなる。

「飲兵衛の姿見てるから、いまいち信用できねぇんだよ。まぁなんかあったら頼むよ」

『ああ。だからあの物質を消し去るゴミ捨て魔法とやらは使うなよ。主からわしがお叱りを受けるからな』

《ゴミ捨て魔法は最終手段です。使い所を誤ると波及効果が大きいです》

「わかった。約束するよ。……でも、やっぱ受けてもいいかな、リク?」

《はい。現在の防護策と逃走手段、さらに上位存在への依頼を考慮すると、条件付きで受ける選択は合理的です。太郎さん次第ですが、私は全力でサポートします》

「……まぁ、話を聞いてみて、困ってるなら受けようかな、くらいのノリでいいか?」

《了解しました。それなら受注方法を決めておきましょう。基本は郵送対応、もし持参を希望される場合は、八咫烏様の言葉を信じて持ち込んでもらっても問題ありません。修理物が動かせない場合は出張費と交通費をいただく形にして対応しましょう》

「なるほどな……。そういや、今の偽装状態って外観が少しボロく見える程度の社宅だよな? 内観はどうする?」

《作業場だけなら現状のままで問題ありません。せっかく設置したカウンターもありますし、そこを受け渡しスペースにすれば自然です》

「外はボロくて中は新しいって……まぁ、それはそれで修理屋っぽい雰囲気が出るか」

ふと、思い出したように秘密基地の天井を見上げる。

「そういや結界内の魔力濃度、前は高すぎて榊が異常成長したけど……榊が酒に変えてくれてるおかげか、だいぶ落ち着いてきたな」

《はい。現在は榊が循環させているのか、異常な上昇は見られません》

「じゃあそこは榊に任すか。頼んだぞ榊!」

壁際から伸びていた根っこが、こん、と軽く壁を叩くように動いて反応した。

《それと、太郎さんご自身も偽装はしておきましょう。顔バレ防止のために》

「顔もか? ……まぁ、確かに一番バレやすいもんな」

《イメージ的には50代、短い白髪で寡黙なナイスミドル風が妥当でしょう》

「おお……なんか一気に修理屋歴40年のベテラン感が出るな。……でも声出すと裏返るんだよな。ははっ」

『その力を悪用するでないぞ』

「……それは褒め言葉として受け取っていいのか?」

試しに変装を維持してみるが、表情筋がぎこちなく固まってしまう。

「うーん……まだ制御が甘いな。練習あるのみか」

その時だった。

テーブルに置いた新品のスマホがブルッと震え、甲高い着信音が響く。リクが即座に回線を開く。

《……はい、かみはら修理店です》

俺は息を呑み、画面を見つめた。