軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71.引き継ぎ

「じゃあ早速で悪いんだけど、すぐ探してもらえるかな」

「うん! 誰を探せばいいの? なんかその人の持ちものとかないかな」

「持ち物?」

「無くてもいいんだけど、その人に縁のあるものがあった方が早く探せるんだ」

「なるほど」

俺は頷いた。

そういうもんだろうな、と納得する。

「犬とハンカチ――」

「なんでもいいの」

ヘカテーがなんか言ったのを遮って、オノドリムに確認をする。

「うん、なんでもいいよ。ちょっと座っただけの椅子とかでも。二つくらい、ううん、三つくらいあれば確実かな」

「それで分かるの? 椅子なんかだと何人も座った人がいるよね」

「うん。でもそれで何千万人から何百人までは絞れるから」

「なるほど」

「二つくらいあったらその二つから同じのをさがして、大体三つくらいあれば、その三つから同じのを探せばより確実だよ」

「……だったら、まったく関係のない遠いところにそれぞれあるもの……を用意した方がイイよね」

「うん!」

オノドリムはぱあぁ――と顔をほころばせて、嬉しそうに俺に詰め寄ってきた。

「さすがだね! うん、その方が確実に絞れるよ」

「そっか。ヘカテー、ダガー先生が二人難病を治したって言ってたよね」

「はい」

「その二カ所から何かダガー先生が触ったものをもらって来れそう?」

「すぐにでも」

「じゃあお願い。僕は妹さんの所にいって先生の家にあるものを借りてくる」

「分かりました」

ヘカテーと一旦わかれて、オノドリムを連れて、水ワープでダガーの家にいった。

そこで妹さんにフェイクの入った説明をして、ダガーが調合したという薬をもらってきた。

妹さんがいうにはダガーお手製の薬であるらしい。

それをもらってきて、屋敷のリビングで再びヘカテーと向き合った。

「こちらです」

そうはなしたヘカテーがさしだしたのは、何かを包んだらしき紙と、染みこんだ血が黒く変色している包帯だった。

「これは?」

「こちらは薬を包んだ包装紙で、包帯はダガー先生が実際に巻いてくれた時のものだそうです。どちらも念押しで確認してみたところ、間違いなく触っているとのことです」

「そっか、ありがとう」

ヘカテーにお礼を言うと、彼女は嬉しそうな顔をした。

そうしてからオノドリムに向き直って、聞いた。

「これで大丈夫?」

「うん、ちょっと待っててね」

オノドリムは俺達から「手がかり」になる品物の三つを受け取った。

そして目を開けたまま呪文らしきものを唱えて、魔法の光が手かがりを包み込んだ。

包帯から何筋もの光が溢れ出した。

色とりどりで、一本一本が違う色をした虹のような光だ。

薬の包装紙からも同じように光が溢れ出した。

次の瞬間、二つの手かがりから放たれた光の大半が消えた。

それぞれが一本だけ残った。

視覚的にものすごくわかりやすかった。

あふれた光は、おそらくそれに接した人間を表すものだ。

そして二つものが光った後、それぞれ一本だけが残った。

これが、「両方に接触した人間」を表す光だろう。

それが一本になった、ダガーを示しているんだろう。

「それがダガー先生ってことだね」

念の為にきいてみた。

「うん、そう」

「二つで足りちゃったね。オノドリムの言うとおりだ」

「えへへ……」

「念の為にもうひとつもやってみてくれる」

「うん、分かった。たぶんあんたが思ってるとおりの事になると思う」

オノドリムはそう言って、最後に俺がもらってきたダガーの薬にも同じ魔法をかけた。

薬からは前の二つと同じような光が溢れ出した後、やっぱり一本に絞られた。

最初の二つと同じ色の光だ。

オノドリムの言うとおり、俺が想像したままの光景だ。

「こうなるよね」

「うん」

微笑みあい、頷きあう俺とオノドリム。

それを見たヘカテーが、

「さすが神」

といった。

「それで、これがどうなるの?」

「うん、こうなるの」

更に呪文を唱えるオノドリム。

すると、三本の光が一本の糸になるかのようにねじって寄せ合って、屋敷の外に向かってと伸びていった。

「このままおっていくと見つかるよ」

「遠くまで行かないと行けないな――エヴァ? エヴァはいる?」

俺は大声を出した呼んだ。

しばらくすると、窓が巨大な何かに遮られ、部屋の中が一気に暗くなった。

窓を遮ったのはエヴァ――レッドドラゴンの巨体だった。

『呼んだか、偉大なる父マテオよ』

ドラゴンの姿のエヴァは、この姿の時だけの仰々しい喋り方で聞いてきた。

「この光が見える? これを追いかけたいんだけど」

『わかった。背中にのるがいい』

「うん。行こう、二人とも」

オノドリムとヘカテーはほぼ同時に頷いた。

俺は窓を開けて、慣れた感じでエヴァの背中に飛び乗った。

人ではない大地の精霊であるオノドリムは軽くふわりと飛び上がる様な感じで背中にのった。

肉体的にドラゴンの背中に飛び移るのが難しい、幼い女の子の肉体のヘカテーが窓の前で、困った顔でたちつくした。

俺はヘカテーに手を差し伸べた。

「つかまって」

「ーーはい!」

ヘカテーは嬉しそうな顔で俺の手を取った。

俺は力を入れて、ヘカテーを引っ張り上げた。

ヘカテーも同じようにエヴァの背中に乗ってきたので、ポンポン、とちょっと強めにエヴァの背中を叩いた。

「じゃあ、お願い」

『うむ』

エヴァが応じた次の瞬間、俺達は空の上の人となった。

俺はすっかり小さくなった地上の建物や人々を見下ろしながら、きく。

「こんなに高く飛び上がっていいの?」

『問題ない』

エヴァはそう言って、更に飛んだ。

一瞬で街の外にでた。

街の外に出て、建物とかがない街道と草原だけになってくると、エヴァはゆっくりと下降して、低空でとんだ。

降りてくると、俺の目にも見えるようになった。

地上でさっきの光が伸びていくのがみえた。

上空からでも、エヴァはしっかりとこの光をとらえていたようだ。

「やるじゃないエヴァ。さすが空の王だ」

『この程度のこと造作もない』

字面でみるとぶっきらぼうのようにみえるが、エヴァの声色はまんざらでもない人のそれだった。

そして――速度があがる。

俺に褒められたエヴァはノリノリになって、それで速度があがったのだ。

エヴァの背中にのって、光を追いかけていく。

空を飛ぶエヴァの速さはさすがの一言に尽きる。

馬車だったら一日はかかろうかという距離を、一時間にも満たない短さで駆け抜けた。

そうして、俺達がやってきたのは――。

「……海?」

エヴァの背中から見下ろしたのは港町だった。

オノドリムの魔法で伸びてきた光は、とある桟橋で途切れていた。

この港町のどの建物よりも高い場所から見下ろしているので、途切れているのがはっきりと分かる。

「これって……やっぱり」

俺は斜め後ろに座っているオノドリムに振り向いた。

オノドリムはばつの悪そうな表情をした。

「うん……たぶん、船にのっちゃったんだとおもう」

「それで途切れたんだ……」

「追えないのですか?」

「海だとあたしには……」

オノドリムはシュン、となった。

気の毒になるくらいの落差で落ち込む彼女を慰めることにした。

「気にしなくてもいいよ。オノドリムは大地の精霊だし、海に入られるとどうしようもないのはしょうがない」

「うん……本当にごめんね……」

「如何なさいますか、神」

ヘカテーがきいてきた。

俺は少し考えて、光が途切れたところをじっと見つめた。

「……そっか、そうすればいいんだ」

「神?」

「二人はこのままここで待って。エヴァ、二人をたのんだ」

『あいわかった』

「どうするのですか――」

ヘカテーに答えるよりも早く、俺はエヴァの背中から飛び降りた。

「ええっ!?」

「神!?」

驚く二人の声が急速に遠ざかっていく。

俺は一直線に下へ――海に吸い込まれていく。

ぽちゃん――と水音を立てて海にはいった。

普通の人間なら、水面といえどこの高さから飛び込めばただではすまない。

が、俺には問題が無かった。

マテオボディであっても、俺には海の加護がついている。

だから躊躇なく飛び込んだ。

飛び込んだ瞬間、水ワープを発動して、神殿にむかった。

そこで海神ボディに乗り換えて、元の場所に戻ってきた。

海上に出て、飛び上がる。

エヴァの横に並ぶようにしてから――唱える

オノドリムがさっき使っていた魔法を使った。

すると――繋がった。

桟橋できれていた光と同じものが、新たに海の上で現われ、大海原に向かって伸びていった。

「わっ、すごい!」

「そうか、神のその肉体は海の神。海の神であるなら、大地の精霊と同じことが出来て当然か」

オノドリムが歓声をあげ、ヘカテーが感嘆した。

その間、俺は再びエヴァの背中に飛び乗った。

「いこう、エヴァ」

『うむ!』

今度は海原の上を進む光を追いかけて、エヴァは再び飛びだしたのだった。