軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

244.女の子と虫

「うん、じゃあ今日はここに泊まっていこう」

「うん……」

「……うん」

二人は心ここにあらずって感じで、生返事してきた。

よほど「森」に心惹かれているのがそれだけでも分かる。

そんな二人の為に、一晩過ごすための準備をしてあげようと思った。

水間ワープで屋敷に戻って、あれこれ取ってこようとおもった。

海神の力を使えば、ちょっとした「小屋」くらいなら簡単に持ってこれる。

簡単な作りの、地面に固定されていない小屋がどこかになかったかな、と、思った瞬間だった。

「「……」」

ああ、ちがうなと思った。

互いに手を握り合って、森の空気に身を任せている二人をみて、それは違うと思った。

俺は少し考えた。

頭の中にある知識を引っ張りだして、考えをいったん纏める。

そうしてあれこれ纏めてから、二人から離れて森の中を歩いて必要なものを探して回った。

俺の腕くらいの太さの木を何本かへし折って持ってきた。

丁度いい草むらがあったから、そこからも大量に毟り取ってもってきた。

木を地面に立てて頂点を蔓で結んで、同じように結んだ草を縛り付けた。

余った草は地面に敷き詰めておくと、簡単なテントのできあがりだ。

更に日の当る場所でよく乾燥した枯れ木があったから、それを擦ってこれまた乾燥した落ち葉で火種を作って、たき火をおこした。

あれこれやって、たき火を起こしたところで日が暮れた。

と同時に、俺が色々やっているのを、ナナとカナが見つめていることに気づいた。

「どうしたの?」

「あんた何してんの?」

「野宿の準備だよ」

「それは、わかる」

「そうじゃなくて、なんでそんなやり方をしてんの? あんた魔法得意じゃんか? なんで魔法使わないの?」

そっちのことか、と質問の内容をりかいした。

「あってるかどうか分からないけど、エルフの生活に少しでも近づけようっておもって」

「エルフの生活?」

「最初は屋敷からいろいろ持ってこようとおもったんだけど、森に住むエルフ達は貴族の屋敷でつかわれてるものは使ってないんじゃないかって。それに日常の生活にいちいち魔法をつかってないんじゃないかって。木と草と、たぶん粘土を捏ねて瓦とかつくったりしたのかな? そういうので家をつくって、枯れ木の摩擦で火種をつくって。他にもいろいろあるけどそういう生活してたんじゃないかって」

「あたし達のためにそれをやってくれてたの?」

「うん、すこしでもエルフの生活っぽくしてみたくて。どうかな」

「わかんない、でも」

「悪くない」

二人はそういい、小さく頷いた。

悪くないのならいいと思った。

やり取りをしている間に完全に日が暮れてしまったから、俺達三人はたき火の周りに集まった。

もうちょっとしたらその辺でウサギか鳥かなにかをとってきて料理でも作ろうかと思う。

即席のテント作りもたき火の起こし方も、そしてこの後やろうとしているサバイバル料理も。

全部が爺さんとイシュタルが集めてくれた本から得た知識だ。

貴族になって、その上魔法をあれこれ覚えたもんだから、このあたりの知識は一生使う機会がないんじゃないかって思ってたけど、意外な形で出番ができた。

使う機会がないからといって無視しないでちゃんと知識として吸収してて良かったと思った。

ふと、カナが意外そうな顔をしてきた。

「あんたって、聞いてたのと全然ちがうじゃん」

「きいてたのって?」

「おじいちゃんから聞いてた話」

「侯爵様は僕のことを何っていってたの?」

「あいつの孫じゃ、どうせ才能を鼻にかけてるにきまっとる」

「鼻が頭のてっぺんに生えてるような小僧」

「こんな感じかな」

ナナとカナはウォルフ侯爵の口調を真似ていった。

それがなんだか、ちょっとだけ面白かった。

「面白い表現だね。鼻が頭のてっぺんって」

「いろいろ聞いてて、なんかやなやつだなっておもってけど」

「いい人」

「あはは。うん、僕のおじい様も同じような感じだったかな。侯爵様への対抗心と、それとなく君たちのことを下げてたかな」

「一緒じゃん」

「困った人達」

夜の森の中。

何となくだけど、二人との距離が更に一段階近くなったような気がした。

同じような爺さんをもつもの同士の連帯感というのもあるだろうけど、それ以上に森に入ってから二人の表情が和らいでいて、それで気持ちのゆとりがでてたから何じゃないかって思う。

いや確実にそうだ。

そんな二人の穏やかな空気にひかれてか、小鳥が二羽、二人の前に飛んできた。

二人とたき火の間で、まるでそのたき火に当っているかのように羽を畳んで身を休めた。

「鳥じゃん」

「鳥、ね」

「なんで? 夜なのに」

「少ないけど夜に活動する鳥もいるんだよ」

「しらなかった」

「……物知り?」

ナナが小首を傾げ、聞いてきた。

その横でカナが手を伸ばすと、小鳥はしばしそれを見つめてから、カナの手の平に飛び乗った。

カナはその小鳥をナナの肩に乗せた。

ナナも小鳥も、それを厭がること鳴く受け入れた。

それをみる、やはり二人は森になじんでいるんだなと、改めてエルフの血なんだなと密かに納得した。

ふと、たき火の向こうにある、一本の木に それ(、、) を見つけた。

「あっ」

「なになに、今度は何?」

興味津々って感じのカナと、無表情にちかいままナナ。

二人は俺の視線をおって、木を見つめた。

瞬間、二人の表情が固まった。

その表情の意味を理解するよりも早く、俺はちょっとしたワクワク気分で言って しまった(、、、、) 。

「カブトムシだよ」

そう、木にとまっていたのはカブトムシだった。

黒光りする鎧のような見た目が、たき火を反射して一段とてらてらと光る。

村人だった頃に捕まえて遊んでたなあ、と、そんな事を思い出して、捕まえようと腰を浮かせかけた、その時。

「「――き」」

「どうしたの?」

「「きゃああああ!」」

ナナとカナ、二人の悲鳴が綺麗にかさなって、森に響き渡った。

それだけではなかった。

悲鳴を上げる二人は片手で握り締めあって、もう片手を突き出した魔法を放った。

高速詠唱が「超」高速詠唱に進化して、更に威力も屋敷で見たときよりも数段強くなっていた。

「…………」

俺はポカーンとなった。

二人の 魔法(ひめい) によって吹き飛ばされた森が、いつの間にか魔力がアップしていることを物語っていた。