軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

139.精霊の全力

「えーっと、それをどうすればいいの?」

「次が素材としての最後の行程となります」

「じゃあ、次が終わったらナイフに加工できるってことだね」

「ご明察でございます」

ノワールはそういって、腰を折って深く頭をさげた。

結構時間がかかったけど、いよいよ最終段階だと知ってテンションが上がった。

「どうすればいいの?」

「エーテルの精髄と吸収したこの毛髪をマグマに投入いたします」

「マグマ?」

「はい」

「燃やすって事?」

「いいえ、マグマが持つ熱量、熱の伝達、そして鉱石が溶けた時に気化する特殊なガス。これら全てが必要となります」

「そうなんだ……じゃあ、火山に行かないとね」

「ご主人様、火山ではだめなのです」

「どうして?」

俺は不思議がって、首もかしげて、聞き返した。

というか火山じゃないところにマグマなんてないだろ? と思った。

「地上に流れ出たマグマでは、先ほど申し上げましたガスの部分が空気中ににげてしまします」

「そうなんだ」

「ふむ、温泉と同じだな」

イシュタルはなるほど、って感じでつぶやいた。

「温泉?」

「温泉地独特のあの臭さのことだ。地中にあった温泉が地上に噴き出されて、その成分が空気中に放り出されて匂うのだ」

「あ、硫黄のことだね」

俺がいい、イシュタルは頷いた。

本で読んだ知識が引っ張られて出てきた。

「そっか、じゃあ地中にこれをいれる……のはどうするんだろ?」

「かのものは細い穴を掘りました。細い穴で地中までマグマを掘り当てれば、穴から吹き出されるガスは最小限、したがってマグマの中にほとんど遺された状態となります」

「それってすごく大変そう」

「苦労はしたようでございます」

「そっか……」

俺はうつむいて考えた。

ちょっと聞いただけでも大変そうなそれをどうやればいいのかを考えた。

海神ボディならいけそうか?

神の力があるし、溶岩相手なら水の力でどうにかなるか?

いや、水はまずいかも。

「……熱量が大事なんだよね」

「はい」

ノワールは即答した。

それだけ大事な要素なんだなと理解して、水はうかつに使えないと理解した。

それなら方法は――と。

「だったらあたしにお任せ!」

「うわっ! お、オノドリム!?」

真ん前にいきなり顔が迫られて、思わずのけぞるくらいびっくりした。

一歩下がってしまう位のけぞって、それで落ち着いてよく見ると、現われたのはオノドリムだった。

「い、いたの?」

「ううん、マテオがあたしを呼んでるのを感じたから来てみた」

「よ、よんでないよ?」

「魂の声だよ。マテオは今、あたしの力が必要のはず。必要とされてるのを感じてきたんだ」

「そ、そっか……オノドリムらしいね、それ」

ちょっと焦ったが、感想で口にしたように、すごくオノドリムらしい

彼女と知り合ったいきさつからしたら、「必要とされる」は最重要な要素でキーワードだと納得した。

「それ、あたしに任せて」

「それって?」

「マグマの中にこれをもってって、その後持ち帰ればいいんでしょ?」

「そうだけど――」

ちらっとノワールをみた。ノワールは無言でそうだと頷いた。

「――できるの? それ」

「楽勝だもん! あたしを誰だと思ってるの?」

「大地の精霊……あっ」

「そっ。地中の話ならあたしに出来ない事はないもんね」

「すごいね、さすがオノドリムだ」

「ふふん」

オノドリムは腰に手を当てて、めちゃくちゃ得意げな顔でふんぞり返った。

そして話を最初から聞いていたかのように、話の出所であるノワールにきいた。

「どれくらい置いてくればいいの?」

「申し訳ございません」

ノワールは珍しくあやまった。

「オノドリム様なら完全密閉した状態で持ち込めるのだと推察いたしますが、それは人間には不可能なことですので、その状態での所要時間は分かりかねます」

「ありゃ、そうなるんだ?」

「ですのでオノドリム様の感覚で。これが完全に人毛ではない別物に変化したら完成でございます」

「なんだ、簡単じゃん」

言うほど簡単か? とおもっていると、オノドリムはこっちを向いた。

「じゃあいってくるねマテオ」

「うん、おねがい」

「まっかせてよ」

オノドリムはそういい、ウインクしたあと、たらいごと髪を持って消えた。

「ちょっと予想外だったけど、これで上手く――」

「ただいま」

「――うわっ!」

俺はびっくりした。

イシュタルももちろんびっくりした、あのノワールでさえも普段とはちがってわずかに眉をひそめた。

「お、オノドリム? それは?」

持っていったたらいはなくなって、床に髪よりもひとまわり小さい、透明の岩が置かれていた。

「変化したから持ってきた」

「変化? 速くない?」

「せっかくだから深い方がいいっておもって、100キロくらいの所においてきたら一瞬でこうなった」

「100……キロ? 地面ってそんなに深いところまであるの?」

「もっとあるよ? どこでもマグマだと大体何十キロくらいからだし、だから切りの良い100って所にもってった」

「そ、そうなんだ……」

オノドリムが実にあっけらかんと言い放った。

どう考えてもそんなに簡単な話じゃないけど、大地の精霊からしたら簡単なんだろうか。

「ノワール? これで完成?」

「はい。むしろ以前より透明度が高く品質の高さがうかがえます」

「大成功って事かな」

「おっしゃる通りでございます」

「ねえねえ、嬉しいマテオ? あたし役に立った?」

「うん、すごく助かったよオノドリム」

「んーーーーー」

オノドリムは目をぎゅっとつむって、胸元で拳をぎゅっと握り締める、力を溜めるような仕草をした。

そして、ぱっと俺に飛びつき、抱きついてきた。

「嬉しい!」

「うわっ!」

オノドリムの勢いに押し倒されて、もつれ合って床にすっころんだ。

「やっとマテオの役に立てた!」

「いたたた……お、大げさだよオノドリム」

「おおげさじゃないもん。もっとあたしをたよってマテオ。空も海もいいけど 大地(あたし) もね」

「わ、わかった。ありがとう、オノドリム」

もう一度お礼をいうと、オノドリムはますます嬉しそうに、更に力強く俺にぎゅっとしがみついてきたのだった。