軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話 『エレメントマスター』の最大火力(1)

新陽の月30日、最短襲来予想である3日を過ぎても十字軍は現れなかったので、より強固な防衛線を築くべく現在も工事を続行中である。

そうして、ある程度要塞化のめども立ち、MPK作戦に出ていたメンバーも全員無事に合流と順調に準備が整ってきたので、本日はこれまで先送りになってきた、

「俺達の最大火力を確認する実験を行う!」

ということで、アルザス村から西へ1キロほど離れただだっ広い平地へとやって来た。

ちなみにメンバーは俺とリリィとフィオナ、冒険者パーティ『エレメントマスター』のみである。

今日の実験は、自分が出せる最大の魔法をぶっ放してその破壊力を見ようという至極単純なもの。

本格的にやれば 魔法具(マジックアイテム) に分類される種々の計測機などあるようだが、今はそんなもの用意して厳密に数値測定する時間も無いし、そもそも田舎であるこの辺にそんな魔法的にハイテクなモノなどあるはず無かった。

とりあえず、一度魔法を見ておけば大体どんなものか把握できるだろう。

「でもこれって今更な気もしますね」

「そういうこと言うなよフィオナ、ほら、今まで忙しかっただろ」

まぁ今も忙しいことには変わりはないけどな。

「俺は大人状態のリリィとフィオナがどれくらい威力のある魔法を使えるのか分からないからな。

けど二人の実力はかなりのものだと思うし、きっと今回の戦いの鍵になるはずだ、期待してるぜ!」

「面と向かって言われると何だか照れますね」

「ねー!」

本当に照れてるのかどうか分からない表情のフィオナとニコニコ元気な笑顔のリリィ、このツーショットは、なんだかんだで絵になるな。

ただのハイキングやらピクニックやらでここにいるのだったら、そりゃあもう楽しいことだったろうが、今はそんな愚痴は言うまい。

「それじゃあまず――」

「クロノさんからどうぞ」

「あ、俺から?」

「はい、リーダーですので」

「頑張って、クロノー」

そうか、俺もやるのか、確かに俺が戦っているところをリリィは兎も角フィオナは見ていない、すっかり失念していたな。

「よーし、じゃあいいとこ見せるぜ!」

「わー」

「わー!」

フィオナの無感動な拍手とリリィの無邪気な拍手が耳に心地いいぜ。

いざ、と思うが、ちょっと待てよ。

俺の魔法で最大火力といえば『 魔弾(バレットアーツ) 全弾発射(フルバ-スト)』だ。

魔剣(ソードアーツ) も貫通力だけで言えば魔弾一発あたりを遥かに上回るが、これは武器依存の攻撃力なので置いておこう、実際ただの投擲攻撃だと言われればそれまでだし。

あと魔法と武技も別扱いなので、『呪怨鉈「腹裂」』を装備して発動可能となる武技『黒凪』もここでは除外。

それで、『 魔弾(バレットアーツ) 全弾発射(フルバ-スト)』なのだが、その効果は黒色魔力の弾丸を大量に撃ち込むというものだ。

この遮蔽物の無い平原で撃ちっぱなしにすれば、その弾丸は遥か彼方へ飛んでゆくのみで、特に爆発が起こるわけでも光るわけでもなく、後には攻撃前と何の変化も無い風景が広がるのみである。

これでは拙い、何も破壊力が分からないではないか、そう、射撃には的が必要なのだ!

「難しい顔をして、どうしたんですかクロノさん?」

「おなか痛いのー?」

勤めて冷静を装って、俺は一直線に走り出す。

「あ」

後ろに残された二人の声が聞こえたが、聞こえないふりでそのままダッシュ。

100メートルほど進む、うん、まぁこの辺でいいだろう。

「『 影空間(シャドウゲート) 』」

『 影空間(シャドウゲート) 』はこれまで使っていた『影空間』と効果そのものに変化は無いが、高位の闇魔術士であるところのモっさんから助言と術式の提供を受けて、その容量と展開速度など、様々な追加効果を持つレベルアップバージョンだ。

その追加効果の一つである、影の操作を応用して、地面に直系1メートルほどの丸い影を作り出す。

影の操作は基本的に俺自身の影を様々な形に変形、あるいは拡大・縮小も可能。

だが術者本人の影から分離することはできないので、今作り上げたこの丸い影も、細い影で密かに俺の足元へと繋がっている。

「えーと、確か十字軍兵士の防具が1セットくらいあったような――」

四次元ポケットを漁るタヌキ型ロボットのような感じだな、ここ最近は中に入れている物品の量も増えている為、尚更だ。

容量が増えた影空間の中から、目当てのものである十字軍の基本的な歩兵装備である白いサーコートとチェインメイルを取り出す。

あとは、適当に人型を作ってかぶせればいい。

魔力の 物質化(マテリアライズ) は俺の黒魔法が得意とするところだ、硬さ、耐久性、形状維持の時間、その他諸々に目を瞑れば、とりあえずはある程度の物体を出現させることが出来る。

適当に作った脆い物など戦闘では何の役にもたたないが、こうして的となる案山子くらいの役目は果たせるだろう。

数秒で俺と同じくらいの高さをもつ人型、頭と肩のラインだけであとは板状になっている簡単な形の的が出来上がる。

チェインメイルとサーコートをそのまま頭から被せると、見事な的の完成だ。

「ま、こんなもんだろ」

そして、来た時とは逆に100メートルダッシュして、フィオナとリリィが待ってる場所へと戻ってくる。

「よーし、じゃあいいとこ見せるぜ!」

「あ、そこからやり直すんですね」

フィオナからちょっと冷たい言葉が刺さるが、気にしてないフリをして話を進める。

「見れば分かると思うけど、あの的に向かって魔法を撃つ、行くぞ」

俺は二人から一歩前へ進み出て、『ブラックバリスタ・レプリカ』を構えた。

すでに弾丸は『装填』済み、俺の周囲を取り巻くように、弾丸の列が現出する。

「『 魔弾(バレットアーツ) 全弾発射(フルバ-スト)』」

千を越える黒き弾丸が、一斉に的へ向かって撃ち出される。

そこに立つのはただの的ではなく、本当に十字軍兵士へ向かって撃つように、発射された弾丸の威力に加減は無い。

100メートルの距離を刹那の間に0にしてターゲットへ到達。

蜂の巣になる、という状態すら通り越して、黒色魔力の人型も、チェインメイルもサーコートも全て、ミキサーにでもかけたようにバラバラに吹き飛ぶ。

的があってもなくても、撃ち終わってみれば結局、そこに元から何も無かったかのような平野の風景が広がるのみであった。

「どうだ?」

「えーと、終わりですか?」

「え、これで終わりだけど?」

それほど驚かれることは無いだろうとは思っていたが、まさかここまで拍子抜けされるとは……

「爆発したりとかは?」

「いや、爆発もしないし、ただ魔力を固めただけだから」

「あ、では追尾性能を持っているとか?」

「……真っ直ぐにしか飛ばないよ」

「ただのシングルアクションなんですか?」

「ああ、シングルアクションを大量に撃ってるだけだ」

「そうですか――」

俺はフィオナが言う前に気がついてしまった、そうか、俺の黒魔法って、

「――思ってたよりも地味なんですね」

フィオナの容赦ない感想に、俺はちょっとだけ泣いた。