軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19.一生推します!

後日、アランとロザリア様の婚約破棄は、王都中を駆け巡る大ニュースとなった。

セルドア様の想像通り、パーティーの開催も婚約破棄もアランの独断だったと判明した。この事実を知った国王陛下の怒りはすさまじいものだったという。

さらにフィローレに関しても容赦がなかった。

「そんな小娘に王妃が務まるわけないだろう!」

激怒した国王の怒鳴り声が、城中に響き渡ったとかなんとか。

考えてみれば当然だった。原作のフィローレは、教会との和解を成功させ、ポルーノの件で「幸運の女神」と崇められ、貴族たちとの絆を深めた後に満を持して王妃となった。

しかしこの世界では、フィローレはまだ何も成し遂げていない。ただ光の魔法を持つだけの、男爵家の令嬢に過ぎない。怒られるのも当然だろう。

案の定、焦った国王からセルドア様のもとに「婚約破棄を取り消して欲しい」という旨の手紙が来たそうだ。しかしセルドア様は一蹴した。そりゃそうだ。

この混乱に乗じて、アランの弟君である第二王子派の勢力が拡大しているという。王位継承争いの構図が、大きく変わりつつあった。

「まぁ私には関係ないけれど」

ロザリア様は新聞記事に目を通しながら、他人事のように感想を漏らした。私も「そうですね」と同意の頷きを返す。

記事を読み終えると、ロザリア様は新聞を無造作に机に放り投げた。そして手紙の山を呆れたように見つめる。アランからの婚約破棄が公になってから毎日こんな感じだ。ロザリア様に近づきたいという輩が後を絶たないのだ。

「全て燃やしておいて」

「よろしいのですか?」

「今は結婚とか考えたくないの」

「え……!!」

想定外の言葉が返ってきて、ショックを受ける。それはつまりダミアンとの結婚も考えていないということだろうか。

(あんなに良い雰囲気なのに、ダミロザが成就しないなんて……! いや、ロザリア様のお気持ちが一番だけど……!!)

すると私の内心を読み取ったのか、ロザリア様が指をくいくいと動かして手招きした。

「ソレイユ、しゃがみなさい」

素直に従った瞬間、ロザリア様の指が伸びてきて──

「あうっ!」

額に強烈なデコピンが炸裂した。思わず呻く。

「アンタが考えていることは手に取るように分かるわ。そのニヤけ顔をやめなさい」

「す、すみませんでした……っ!!」

「……今は、って言ってるでしょう」

ロザリア様がぼそりと呟いたが、額の痛みに気を取られ、何と言ったのか聞き取れなかった。聞き返そうと顔をあげると、意地悪そうに微笑むロザリア様がいた。

朝の光が彼女を包み込み、まるで後光が差しているよう。紫の髪が輝き、赤い瞳が優しく細められていている。──ああ、私の愛しの美しい女王様。

「商会を大きくするのが先だからね」

「お供いたします!!」

私が元気よく答えると、ロザリア様は声をあげて笑った。鈴を転がすような、美しい笑い声が部屋に響く。

時計を一瞥したロザリア様は、すっと立ち上がった。朝日を背に、私の方を振り返って微笑む。

「さ、行くわよ。ソレイユ」

「はい!」

ロザリア様の紫の髪が、歩くたびに優雅に揺れる。その後ろ姿は、もう悲劇の悪女じゃない。自分の人生を切り開いた、強く美しい令嬢の姿だった。

(ロザリア様、一生推し続けます!!)

美しい女王の後ろ姿を見つめながら、私は決意した。