軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強すぎて年齢詐称疑惑

次に出てきたグールにミルクは魔法を使う。

「解放: 聖放水(ホーリーシャワー) 」

おぉ、グールが溶けていく。

これはこれで気持ち悪いな。

と思ったら――

「なんだ、急に空気が重くなったような――何か気配が近付いて来るぞ。気を付けろ」

俺は警戒を促す。

全員が武器を構える。

最初に見えたのは腐った手だった。

その手がダンジョンの壁に触れると、そこから煙が上がる。

ダンジョンが溶けているのかっ!?

グールの色違いが出てきた。

他のグールよりも一際大きいそいつは、俺たちを見つけると、ゆっくりと近付いてくる。

〔屍肉食らい――ガストだ! グールの上位種。めっちゃ厄介〕

〔猛毒の息を吐くから、近付くだけで死ぬ〕

〔その身体も腐食性の酸を纏っているみたいで、触れるだけで火傷のような状態になる〕

〔データあった。十六階層くらいに出てくる敵って、こんなの二階層に出るの? 普通に死ぬぞ〕

〔そのガストさん、もう溶けて虫の息なんだけど〕

うん、コメントが流れる前に、ミルクの聖水がガストを倒していた。

ごめん、強敵感あふれる登場だったが、聖水浴びたら毒とか酸とか関係なく普通に溶けていった。

「ねぇ、早く次の階層に行きましょうよ」

「きっとその先よ」

ゾンビが苦手な二人の姫が俺の後ろで半泣きになって懇願する。

いつもの三割増しくらいで姫がかわいく見えてきた。

ちょっとハグしたいけれど、配信されているので我慢する。

姫の言う通り、ガストが出てきたところに地下に続く階段があった。

三階層に移動する。

「ふぅ、疲れた」

何もしていない姫がため息を吐く。

まぁ、何もしていないのは俺も同じだが。

さて、ここから先、どんな魔物が出てくるか。

「しかし、さっきのガスト、十六階層級の敵だっていうのならこの先かなり厄介そうだな」

「そうね。十六階層以降となると、特別な手段でしか倒せない魔物も出てくるし」

俺もかつては物理攻撃の効かないゴーストから逃げ回ったな。

あの頃が少し懐かしい。

「私たち四人合わせればだいたいの属性はカバーできますが、光属性と闇属性の攻撃手段はありませんしね」

「一応大臣からは、使い捨ての魔法の矢をいくつか貰ってるから、それを使うしかないな」

いまはミルクの矢筒の中に入っている。

ただ、そういう特殊な敵は倒すより逃げに徹したい。

と思っていたら、魔物の気配が。

そっと確認する。

そこにいたのはスライムの影だった。

しかし、普通のスライムではない。

光沢のある金属質のボディー。

「メタルスライムか。初めて見たがダンジョンにもいたんだな」

少し感動していると――

〔そいつに気付かれる前に逃げろ!〕

リスナーからのコメントが。

〔厄介だ〕

〔やばい、マジニゲテ〕

〔何がヤバイの?〕

〔メタスラはマジ死ぬ、逃げて〕

〔アメリカの探索者の配信で何度か見たことあるが、こいつは関わるな!〕

〔デトロイトダンジョンでもっとも探索者を殺した魔物って言われてる……あそこは州法で安全マージン激ゆるだから〕

どういうことだ?

え? メタスラってそんなにヤバいのか?

「メタルスライムへの魔法は一切効果がない。そのうえ、防御値がバカ高くて物理攻撃もほとんど通じない。体力は低いから金属を溶かす魔法の薬があれば楽に倒せるんだけど――」

「聖水じゃダメなのか?」

「言ったでしょ、魔法は一切効果がないって。聖水も効かないわ。そんな敵に囲まれでもしたら大変なのよ。ということで泰良、ちょっと行ってきなさい」

「そうだな。ちょっと行ってくる」

俺は今の説明を聞いて頷いた。

〔やめろっ! 洒落にならない!〕

〔アルファ何考えてるんだ。ベータ死ぬぞ〕

〔剣で戦ったら先に剣が折れる!〕

〔ゲームと違うんだ。メタルスライムが逃げるんじゃない、こっちが逃げるんだよ〕

リスナーさんたちが俺のことを心配してくれている。

ありがたいが、でも、俺向きなんだよな。

剣が折れるのは嫌なので、大量にある石切剣を装備。

メタルスライムが俺に気付いた。

こっちに向かって飛んでくる。

メタルスライム、結構速いな。

時速90キロくらいか?

だが――

「必中剣っ!」

俺の剣がメタルスライムに命中。

砕けたのは剣ではなくメタルスライムの方だった

残ったのは魔石と何かの金属の塊。

鑑定してみるとメタル金属って名前の特殊な金属らしい。

水野さんに頑張って鍛冶してもらわないとな。

〔はぁぁぁぁぁぁぁっ!?〕

〔なに、いまの? ただの基礎剣術だよね? しかも威力減るやつ〕

〔特殊な武器なのか? アバターのせいでよくわからない〕

〔いきなりメタル金属出てる。さすがは幸運のベータ〕

そりゃわからないよな。

いまのはただのマグレだ。

ただし、そのマグレが俺にとっては100%の必中である。

つまり、ラッキーパンチによって起こったクリティカル。

その減算されたダメージの10%分貫通効果だ。

「じゃあ行くか」

俺はみんなに向かって言った。

道中出てくるメタルスライムも俺たちにとっては雑魚同然。

どんどん奥に進んでいく。

〔この人たち、本当に全員18歳の新人探索者なの? 十年潜ってるトップ攻略者の間違いじゃない?〕

〔分身のアルファ、幸運値とよくわからない攻撃のベータ、殺傷力激やばのガンマ、銃と聖水のデルタ〕

〔18歳かどうかは見守りスレで議論されつくして、ほぼ間違いないと言われてる〕

〔政府の調査動画で嘘の年齢言わないだろ〕

疑われても仕方がないと思いつつ、本人たちの目の前に議論しないでほしい。

それとも、ここで「実は28歳でした」って言うのを期待しているのか?

それこそ嘘になる。

その後も攻略は順調に進んでいく。

そして――

「九階層に続く階段だな」

ようやくここまでやってきた。

インベントリから魔力回復薬を取り出してアヤメとミルクに渡す。

魔力回復薬と言っても即座に魔力が回復するわけではないので、少し休憩が必要だ。

「リスナーさん。他の国の攻略情報はどうなってます?」

携帯食を食べながら、俺はリスナーに他の国の状況を聞いた。

一応、何回か話には出ていたのだが。

〔7チームが完全攻略成功。10階層のコアを潰してます〕

〔9階層が広い部屋になっていて、そこにボスがいるのは共通してる〕

〔全滅、敗走したのは9チーム。苦戦してるところも結構多い〕

〔死者は42人。完全攻略したチームの中でも死者は出ている。ここまでほぼ無傷でやってきた四人は凄いと思う〕

〔日本の救世主になって欲しい〕

〔uematsu:ダンジョンのコアを壊したら自動的にダンジョンの外に転送されるそうだ。崩落の危険に巻き込まれる心配はない〕

階層を降りるにつれて、リスナーたちも冗談を言わなくなってきた。

というより、それを言う雰囲気じゃなくなってきた。

テレビなどでも俺等の様子や世界のダンジョン攻略の様子が中継されている。

そして、攻略に失敗した一つの国では、既にダンジョンの外に魔物が現れたと報告もあった。

実際、リスナーたちはここまで無傷でやってきたと言っているが、肩代わりスキルを使っている俺の身代わりの腕輪が三回も壊れているし、最大で300ダメージを受けている。

攻略開始直前までのPDでの修行がなかったら、俺たちもその死者の数に含まれていた可能性もある。

それと、姫は大丈夫だろうか?

その死者の何人かは、おそらく彼女の兄弟姉妹の誰かだ。

キングの子どもは100人以上いるというので、ほとんど交流のない相手も多いだろうが、当然知っている顔もあるはずだ。

俺は携帯食を何度も咀嚼し、水で流し込んだ。

気合いを入れろ、俺。

ここまで来たとて九階層のボスに負けたら意味がない。

全員で生きて帰る。