軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンプルのルール説明

「さて、ゲームのルールを説明しようか」

ダンプルはマイペースにルールの説明を始めようとする。

「説明するもなにも、ここであなたを殺せばハッピーエンドでそのままエンディングのスタッフロールが流れるんじゃないかしら?」

姫が風魔のクナイをダンプルに向けて言った。

それで済めば確かに話が早いが――

「試してみるかい? そうすればダンジョンの破壊は永遠にできなくなる。魔物が外に解き放たれるところを見ることができないのは残念だが、なに、大勢の人間の命を巻き添えにして星の記憶と一つになるというのも一興だね」

「姫、たぶんそいつの言う通りだ」

ミコトは俺にダンジョンを破壊しろと言ってきた。

一言もダンプルを殺せと言っていない。

たぶん、殺しても意味がないのだ。

まったく意味がないとは言わないけれど……たぶん、姫の分身体のようなものなのだろう。

「で、ルールの説明は?」

「そうだね、手早く済ませよう。正直、僕は君たちに何の期待もしていないのだが、それでも勝負は公平であるべきだ」

やけにムカつく前置きの後、ダンプルはルールの説明をする。

「十階層にある黒いドクロを破壊することができれば君達の勝ちだ。ダンジョンが破壊される。逆に破壊できなければ君達の負け。どうだい? シンプルだろう?」

ダンプルの頭上に黒い頭蓋骨の映像が浮かんで、そして消えた。

確かにシンプルなことこの上ないな。

「ああ、それとこのダンジョンの攻略の様子は全て配信させてもらおう」

とダンプルが言うと、突然無数の配信クリスタルが浮かび上がり、ダンジョンの壁に突き刺さっていく。

「テステス、聞こえているかい?」

ダンプルが声を掛ける。

暫くして文字が浮かび上がった。

〔uematsu:どういうつもりかね? ダンプルくん〕

うえまつ……上松?

これは、大臣のアカウントから発信されているのか。

「なに、彼らの攻略を全世界に配信させてもらいたいのさ。これは人類と僕たちの戦い。にもかかわらず、人類の大半がこの戦いを見届けられないのは非常に心苦しい。僕は情報は常にオープンであるべきだと思っているんだ。ちなみに、君達に拒否権はない」

なんて自分勝手な。

お前だって隠し事だらけだろうに。

〔uematsu:条件がある。彼らの個人情報保護のために、その姿と名前を隠させてほしい。日本にはその技術がある〕

「アバターだね、前に見せてもらったよ。いい暇つぶしになった。あれなら構わない。名前を隠すことも認めよう。リスナーからのコメントもこちらで選別して、誹謗中傷の類は送らないようにしてあげよう。それで彼らのやる気が削がれるのは僕にとっても本意ではないのでね」

ダンプルは虚空を見て――おそらくカメラ目線で説明したあとこちらを向く。

「構わないね?」

「さっき拒否権がないって言ったばかりだろう」

「君たちが望むのなら、アバターや偽名は無しにできるという意味で了解を取っているんだが」

俺は舌打ちをする。

「いまはこの上の基地にしか映像を送っていないが、君たちがその扉を潜ったその瞬間から世界中に動画がほぼリアルタイムで配信される。では、僕は自分の部屋でじっくり観察させてもらうから、後は楽しんで攻略してくれ」

そう言うとダンプルの姿が消えた。

「配信か……普通の配信なら隠せる実力は隠したいんだが」

「さすがにそんなに甘くないでしょ」

「それに、ダンプルの言っていたことも私、少し理解できます。今回の件、外にいる人は全員不安だと思うんですよ」

「そうね。そう思うと、配信はむしろありがたいかも。ダンジョンの中でわからない情報があったらコメントで教えてもらえるかもしれないし」

アヤメとミルクはお人よしだな。

まぁ、俺も二人の意見に賛成だ。

「隠せる秘密は隠しておきたいんだけどね――」

〔uematsu:申し訳ない。君達の個人情報が流出しないようにこちらでも尽力する〕

テキストだけだが、上松大臣の辛そうな表情が目に浮かぶ。

あの人、いろいろと牛蔵さんに似ているんだよな。

さすが兄弟弟子だ。

「大臣のせいじゃないわ。この件が片付いたらここにいるダンプルを捕まえてバルサミコ酢の刑にしてやるんだから」

バルサミコ酢の刑っていうのがどういう処刑法なのかは知らないけれど、そこは姫に任せることにしよう。

俺たちは扉を開けた。

扉の向こうの壁にも、ところどころ配信クリスタルが埋められている。

〔はじまった〕

〔デルタちゃんたちがダンプルに選ばれた挑戦者!?〕

〔これは勝つるかも〕

俺たちのことを知っている人たちも見てるんだな。

不安になるようなコメントはいまのところ見えない。

そして、コメントはそれほど多くない。

ダンプルが精査して俺たちが読み取れる情報だけを送ってくれているのかもしれない。

「じゃあダンジョン攻略を始めるわよ。リスナーのみんな、今回はただの調査じゃなくて本当に命がけだから、コメントに返事できないかもしれない。先に謝っておくわ」

〔アルファ、ワン、了解〕

それだと、お前がアルファになるぞ――とリスナーに対して心の中でツッコミを入れた。

通常のダンジョンと違い、地図を作りながらの移動になる。

現れたのは、狼一頭。

バイトウルフか?

いや、違う。

〔バイトウルフリーダー、9階層相当の魔物がいきなり出てくるのか〕

〔バイトリーダーは早出が基本〕

なんかダジャレ言ってる人もいるが、こっちはそれどころじゃない。

こいつの下位種であるバイトウルフにミルクは殺されそうになった経験がある。

その時の記憶がトラウマになっていたら大変だ。

ダンプルめ、いきなりなんて魔物を配置しやがる。

「ミルク、下がってろ……ミルク?」

ミルクは淡々とゴルフバッグから銃を取り出していた。

「解放: 火薬精製(クリエイトガンパウダー) 、解放: 熱石弾(ホットストーンブレット) 」

と早口言葉のごとく呟くと同時に銃弾ぶっ放した。

銃弾は天井にぶつかり跳弾すると、バイトウルフリーダーの真上からその首を貫通。

〔銃だ〕

〔ダンジョン内に銃って持ち込めるの?〕

〔コルク銃の原理を使った空気銃をダンジョン内に持ち込んで使う試みがかつてあったが、その実用性は現在普及していないことからお察しの通り〕

〔バイトリーダーなのに早退した〕

〔解放って言ってたし、魔法の一種だと思う。ただ、ガンパウダーって火薬。火薬を作る魔法って存在するのか?〕

〔デルタさんの特技は薬魔法〕

〔薬魔法で火薬作りました。私、何かやっちゃいました?〕

〔いまの跳弾なにっ!? 物理的にあんなのありえるのかっ!?〕

〔連射できるの?〕

コメントがかなり賑やかになってきたな。

新種の魔法に関する情報規制は入ってないのか?

そういえば、ダンプルが認めてくれたのって、アバター化と俺たちの名前の隠蔽だけだった。

まぁ、銃についてはそれがなくても騒ぎになるのは当然だ。

これまでダンジョンの中で銃は扱えないっていうのが常識だったのだから。

「はい、これは銃というよりは魔法の補助具みたいなもので鍛冶技能で作ったためダンジョンに持ち込むことができます。連射は無理です」

ミルクが律儀にコメントに答えた。

俺たち、他にどれだけ驚かれることをしでかすのだろう。