軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

疲れている響と、新しいスタイルの戦闘法

本当に伏見稲荷大社には一切行かないんだな。

とりあえず、駐車場の近くにPDの入り口を設置し、俺はトイレの横にある地下に続く階段を降りていく。

一階層の入り口部分には五百人くらいの人がいた。

最近は押野グループのダンジョンにばかり潜っていたが、これが普通なんだよな。

いや、昔はもっと多かったっけ。

石舞台ダンジョンの事件のせいで一時的に客足は遠のいたけれど、最近はまた戻って来たらしい。

青木はいい時期にダンジョンに行ってレベルを上げたよな。

とりあえず、レベル10以上を対象としている受付に向かう。

こっちは比較的空いていたが、前よりは多い気がする。

こりゃ数時間待たされるなって思ったが――なんと、EPOの正会員は優先的に入場の許可が下りるそうで、待ち時間は十五分程度らしい。

EPO法人、優遇されすぎだろ。

周囲に妬まれるんじゃないかと思いながら、レベル10以上の人のいる待合室に。

そこで――

「壱野!」

なんと青木が声を掛けてきた。

「青木!? それに――響さん」

そこにいたのは青木と、青木の職場の上司の響さんだった。

「壱野君――だったね。覚えてるよ。青木君とは知り合いだったの?」

「はい、友だちです」

「なんだよ、お前もこっちに来てたのか――ていうか、カワイイ女の子三人も連れて――そっちの子は前に会った――ってん?」

「久しぶりね、青木」

「お前、牧野かっ! 久しぶりだな! あ、響さん、紹介します。こいつ、俺と壱野の幼馴染で牧野ミルクです。牧野、この人は俺の職場の上司の響翔さん」

「牧野ミルクです」

「響翔です。牧野さん、確か牛蔵さんの娘さんだっけ? 青木君から聞いてるよ。その髪、三人とも覚醒者なんだ」

「東アヤメです。私は覚醒者ですが――」

「押野姫よ。私はアメリカ人とのハーフで、別に覚醒者ってわけじゃないわ」

と姫が言う。

「なんだよ、壱野。お前、普段は女に興味ないような素振りを見せて、可愛い女の子三人と一緒にダンジョンって人生満喫中かよ」

青木が揶揄って言う。

まぁ、傍から見たらそうなるよな。

これはこれで結構大変なんだぞ。

「しかし、壱野と牧野がねぇ。牧野、例の約束は――」

「わぁ、わぁ! 青木、ちょっとこっちに来て!」

とミルクが何か言って青木をどこかに引っ張っていく。

なんなんだ?

と思ったら、響さんもこっちを見ている。

「壱野くん、ちょっとだけいいかな?」

他の人に聞かれたくないことだろうか?

俺は皆に一言告げて響さんと部屋の隅に向かう。

響さんは何か言いにくそうにしている。

「あの、配信者になるって話は――」

「あぁ、いや、そっちはもういいんだ。青木君も入ってくれたしね……その、君に聞きたいことは青木君のことなんだ」

「青木の?」

「彼は――本当に彼なのか?」

ん? どういうことだ?

言っている意味がわからない。

俺が言葉の意味を掴み損ねていると、響さんがもう一度尋ねる。

「青木君は本当に男の子でいいのか?」

「は? そりゃそうでしょ」

「でも、青木くんは声は可愛いし、それに……彼がトイレに行った後、いつも便座が降りているんだ」

「あいつ、トイレはいつも座ってしますよ? 親父さんが警察官だから、あれでしっかりしつけられてるんです」

「君は直接見たのか?」

何をとは聞かない。

アレのことだろうというのは予想がついた。

確かに、アレがあるのなら、一発で男だと証明できる。

「そりゃ……うーん、見た記憶はありませんね」

俺は正直に言った。

別に友だちだからといって一緒に銭湯に行ったりはしないし、プールの時、着替えているときにわざわざ見たりしない。

ていうか高校生の大半はタオルで隠してる。

「だろ? もしかして――」

「いや、ありませんって。胸だってないでしょ?」

「それを言ったら、あそこにいる姫さんだって似たようなものだろ?」

「本人には絶対に言わないでくださいね。俺も一緒に怒られそうなんで」

響さんは混乱してかなり失礼なことを言っている。

青木が女ってのは万に一つもあり得ない。

そりゃ、女装させたら傾国の美少女に早変わりするかもしれないが、普段のあいつは下ネタ好きの童顔少年だ。

絶対にない――そう言っているのだが。

「やっぱり青木君が女の子である可能性も――」

最終的に彼が出した答えはそのままだった。

響さん、疲れてるんじゃないだろうか?

ちゃんと休んで欲しいと心から思った。

少し心配になってきた。

その後、青木たちを抜かして俺たちが先にダンジョンの中に入る。

特に周囲から反対の声もなかった。

待合室で待っている人もいるが、中には待ち時間の間に周辺の観光に行っている人もいるので、俺たちもかなり前にここに来て先に受付だけ済ませていたのだろうと思われたようだ。

低階層は人が多いので、姫の用事のあるという7階層まで移動する。

「なんて魔物を探してるんだ?」

「猫人形よ」

「猫人形ってどんな魔物なんだ?」

「見た目は招き猫。物理的な攻撃はしてこない。ただし、そのスキルはすさまじいわ」

「スキル?」

「 養蚕守護(ようさんしゅご) と言って、獣系の魔物の力を封じるスキルなの。私たちが拠点としているてんしばダンジョンの20階層のボスは猿の魔物だから是非覚えておきたいわ」

獣系――つまり動物相手ってことは俺たちにも効果があるのか。

「封印された能力は相手を倒すか別の階層に移動すれば元通りになるから心配は無いわよ」

「それなら安心だ――じゃあ、魔物のいる気配の方に行くとするか」

魔物の気配のする方に進む。

そこにいたのは――巨大なネズミだった。

まるでヌートリアみたいな大きさだが、その前歯と牙は野生のネズミより遥かに鋭そうに見える。

あんなのに噛みつかれたり引っかかれたりしたらどんな病気を貰うことか。

俺は布都御魂をインベントリから取り出して倒そうとするが――

「待って、泰良! ここは私にやらせて!」

とミルクがゴルフバッグからそれを取り出した。

ってそれ――嘘だろっ!?

「鉄砲じゃないかっ!?」

見た目は火縄銃みたいな感じだ。ただし縄はない。

鉄砲はダンジョン内に持ち込めないはずだろ?

それに、魔物相手だと近代兵器の効果は薄いって――

「解放: 火薬精製(クリエイトガンパウダー) 」

銃の中が一瞬輝いた。

そして、ミルクは銃を構えて狙いを定め、

「解放: 熱石弾(ホットストーンブレッド) 」

とさらに魔法を放った、直後。

銃声が鳴り響いた。

次の瞬間、巨大鼠の腹に小さな風穴を生み出す。

「よしっ!」

「いや、よしじゃないって――お前、いまのって――」

「これは銃に見えるけど、魔法の補助具なんだ。火薬の力を使って、 熱石弾(ホットストーンブレッド) の射出速度を大幅に強化する魔法。本来、火薬はダンジョンの中に持ち込めないけど、これを使えば可能。射程範囲も大幅に強化されて、遠くにいる敵も一撃だよ」

可愛く言っても、言ってることスナイパーのそれだから。

「よく政府の許可が下りたわね」

「えっとね、水野さんのお父さんから聞いたの。ダンジョンができたばかりの頃、ダンジョンでも通用する銃が作れないか各社が試行錯誤してたんだって。原理としては火薬じゃなくて風魔法で空気を圧縮して石魔法の速度を高める銃の開発だったみたい」

「聞いたことあるわ。結局、射的に使うコルク銃みたいなものしかできなくて計画は頓挫したって」

「結果的にはそうなんだけど、その時にダンジョン用の銃の開発と製造、持ち込みに関する法律が制定されたの。だから、それを利用して大阪のダンジョン局から許可を貰ったの。ギリギリだったよ。パパからも根回ししてもらって――」

とミルクは笑いながら言った。

牛蔵さん、海外に行ってもその影響力は強いんだな。

そして、たった数日でそれを形にした水野さんも凄い。

そういえば玩具の銃とか作っていた。

銃に関するノウハウは既に彼女の中にあったわけか。

「ミルクちゃんの魔法も凄いけど、水野さんの技術も凄いですね」

「真衣には特別報酬を渡さないといけないわね」

「だな――ここに来てミルクの戦闘力が大幅に上がったわけだ」

しかし――聖水と鉄砲を使う女子校生。

なんという新しいスタイルの戦い方を確立しようとしているんだ、こいつは。