軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

水野さんはアヤメに何を吹き込んだのか?

制服姿のミルクとアヤメがオフィスに入って来る。

あぁ、なるほど。

新しい仲間が気になったわけだ。

その気持ちはわかる。

「俺のクラスメートの水野真衣さんだ。ダンジョンには行かないが、鍛冶師として俺たちのサポートをしてくれる」

「よろしくね。話は聞いているよ。ミルクちゃんとアヤメちゃんだよね? えっと、私の顔に何かついてる?」

ミルクとアヤメはじっと水野さんを見ている。

何か警戒しているような表情だ。

「女の子……しかもクラスメート……一緒にいる時間が長い」

「カワイイですね……それにしても名前が水野……また……またですか」

水野と言う名前にアヤメは何か引っかかっているようだ。

一体どうしたんだ?

「アヤメ、どうしたんだ?」

「どうしたもこうしたも、私だけ仲間ハズレなんですよ。壱野、牧野、押野、水野……私だけ名前に野が入っていないんです!」

アヤメの名字は東だ。

言われてみれば確かにそうだ。

気にすることはないって思っていたけれど、ここまで偶然が続くと確かに気になってしまう。

でも、こればかりはどうすることもできないぞ。

アヤメを東野アヤメに改名させることはできない。

と思っていたら、水野さんがすっとアヤメの横に移動し、耳元で何かを囁く。

「アヤメちゃん、これでいいかな?」

「ウ、ウン、ダイジョウブデヒュ」

アヤメが顔を真っ赤にして頷く。しかも噛んだ。

一体何を言ったんだ?

謎だ。

簡単に名字を変える方法――ってわけでもないだろうし。

「改めて、壱野くんとは ただの(・・・) クラスメートで友だちの水野真衣です。よろしくね」

と言うと、何故かさっきまでのミルクの顔からも警戒心が薄れた。

「そう……真衣はそういうスタンスで行くのね。こっちとしてはありがたいわ」

と姫は一人で悟ったようなことを言った。

そして、彼女は俺の方を見て尋ねる。

「それで、泰良。真衣にはあなたの秘密、どこまで話したの?」

「壱野君の秘密? 姫ちゃん、それってどういうこと?」

「泰良はね、こう見えて秘密主義なの。本当に秘密だらけで嫌になるけど、それを聞いたらもっと嫌になるわ」

ははっ、否定はできない。

「えっと、みんなは壱野くんの秘密って知ってるの? たとえば、なんで経験値薬をいっぱい持ってるのかとか」

「半分は――理由の一端は知ってるけど、全部は知らない」

姫が言っているのは幸運値と簡易調合のことだろう。

そして、知らないことはPDのことだな。

「ほとんど何も教えてないけど、三人が知ってることなら言ってもいいんじゃないかって思ってる。さっき秘密保持契約も結んだし」

「そうね。ここで一緒に仕事をするのなら彼女だけ除け者にするのもあれだし」

と言うことで、世間に知られていない秘密について話す。

①俺の幸運値が異様に高いこと。

②詳細鑑定という俺にしか使えないスキルがあること。

③詳細鑑定を使ってD缶の開け方がわかること。

④D缶の中にはスキル玉というスキルを覚えることができる飴玉があること。

⑤俺がかつて富士山から溢れた魔物を一人で食い止めた謎の仮面男であること。

⑥クロの正体はダークネスウルフ。

⑦政府からの依頼で日下遊園地ダンジョンの調査をしたのは俺たちだということ。

「…………なんかいろいろ秘密はあるんだろうなって思ってたけど、想像以上。特にクロちゃんは驚いたかな。あの子、魔物だったんだ」

「黙っててごめん。水野さん、魔物が怖いって言ってたけど、大丈夫か?」

「うん。私が怖いのは襲って来る怖い魔物だから。クロちゃんはいい子だしカワイイから全然平気だよ」

よかった。

遠慮ではなく本心から言っている感じだった。

これが原因で水野さんとクロの間に溝が生まれたら、クロに怒られてしまうからな。

「でもさ、これだけ凄い秘密を暴露しているのに、それでも話せない残りの秘密ってなんなんだろう」

「ハハハハ」

「あ、ごめん、詳しく聞くつもりはないよ。壱野くんは恩人だし、うん。もう忘れた。気にしない気にしない」

そう言ってもらえると助かる。

PDについて話をしないのは、これを話したところで皆にメリットがないからだ。

これを伝えたところで、みんなが強くなるわけではない。

「D缶か……みんなは壱野君からD缶を貰ってるの?」

と水野さんが尋ねたところ、全員が頷き、それぞれD缶を取り出した。

全部開封済みになっている。

「ええ、この前の日曜日に貰ったD缶、さっそく開けてみたわよ」

「……うん、私も」

「私もです」

まだ三日しか経っていないのに。

それぞれちょっと面倒なものを渡したんだが。

そして、それぞれ出てきたものを見せる。

「D缶を持ってフルマラソン完走――出てきたのは腕輪だったわ。まだ着けてはいないわよ」

「……神社の御神籤で5回連続凶……正確にはD缶を持って帰ったときにはもう開いてた。私おみくじで凶以外出したことなかったからそれまでの分もカウントされていたみたい。中身はお守りだった」

「100桁暗記したら開きました。中身は飴玉でしたが、これがスキル玉でしょうか?」

おぉ、凄いな。

ミルクは昔からくじ運だけは悪いからもしかしたら可能かもと思ったが、成功したのか。

「D缶が開く条件っていろいろあるんだね」

「水野さんにも今度協力してもらうから」

「うっ、ほどほどに」

てことで、それぞれ詳細鑑定で調べてみる。

まず、姫の腕輪から。

【持久のアンクレット:装備していると疲れにくくなるアンクレット】

なるほど、フルマラソンらしい装備だな。

腕じゃなくて足につけるものだったのか。

「持久のアンクレット。疲れにくくなる効果があるんだってさ」

「アンクレットだったのね。便利そうだし使わせてもらうわ」

次にミルクのお守り。

ピンク色で、何か文字のようなものが書かれているが読めない。

異世界の文字だろうか?

お守りだから、幸運値の上がる効果とかあったりして。

【恋愛成就のお守り:恋愛に関する願いが叶うかもしれないお守り。気休め程度の効果しかない】

……あ……あぁ。

詳細鑑定で調べてもステータスが上がるとか、耐性があるとかそういうものはないらしい。

「泰良、どうだった? 運が上がったりする?」

「恋愛成就のお守りだって。気休め程度の効果はあるみたいだから――」

「うん! 大事にする!」

あれ? 何故か喜ばれた?

アヤメも「いいなー」って目で見ている気がする。

まぁ、安産祈願のお守りとかよりはいいかもしれないが。

最後のアヤメのは――

「うん、スキル玉だ。舐めればスキルを覚えられるよ。噛まないようにね」

「私が貰っていいんですか?」

「いいよいいよ」

ミルクも姫も覚えてるんだ。

次はアヤメの番でいいだろう。

てことで、アヤメが舐めている間、次のD缶を配る。

あれからいろいろとみんなが開けやすいD缶を見繕ってみたんだよな。

三人にそれぞれ開け方を記した付箋付きのD缶をプレゼントする。

最後に水野さんにも――

「水野さんにはこれ――」

「D缶と昔のゲームと電池? なんでゲーム機二台もあるの? それにこのケーブルって……」

「ポ〇モンの赤と緑。150種類全部集めたらD缶が開くから頑張って! 全部自力で集めないといけないから、誰かに手伝ってもらうのはダメだよ」

「え? 本当に? 私、ゲームってしたことがないんだけど」

「頑張ってね! 大丈夫。攻略サイトとかは使っていいから」

「……うん、わかった。弟と妹に見つからないように頑張るよ」

これは俺の勘だが、なんとなくいい物が入っている気がするんだよな。

水野さんには頑張って遊んでもらおう。

「あの、弟と妹がいるなら、私が昔使っていたゲームあるから使う? お姉ちゃんだけゲームしてるのがバレたら羨ましいって思うでしょ?」

「いいの? ありがとう! 是非貸して!」

と交渉が終わったところで、アヤメが飴玉を舐め終わった。

「スキル覚えました!」

「なんてスキル?」

「えっと、ラーニング……魔物の使った魔法や特技を記憶し、使用できるスキルのようです」

なんか凄いスキルを覚えたな。