軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24時間耐久勝負

「投石っ!」

掴んだハニワ兵を、もう一体のハニワ兵に投げる。

二体が砕け、Dコインと勾玉が残った。

これで勾玉1000個達成だ!

今度からもっと経験値の高い魔物にしてほしい。

そうしたらレベルも上がるのだが。

ということで、ここからがお楽しみだ。

「クロ、行くぞ」

「ワウ」

俺たちが向かったのは、前回下見だけで魔物を倒さずに終わった白浜Dの十階層――を元に作った十階層だ。

途中、九階層で宝箱を見つけた。

中に入っていたのは魔石で動く冷蔵庫だった。買えば結構高い奴だ。

中身は空っぽだった。

PDの一階層に設置しよう。

このまま家電(電気で動かないけど)が増えていったら本当にPDの中で生活ができそうだ。

でも、これって普通のダンジョンで見つけた探索者はどうするんだろ?

外まで担いで出るのか?

ダンジョン探索を中断して?

途中で魔物に襲われたら?

うわぁ、大変そうだ。

インベントリがあってよかった。

そして十階層。

ここには少し変わった魔物が出る。

サンダースネークという雷を出す蛇だ。

電気ウナギみたいに筋肉細胞が変化して電気を生み出せるようになった変わった生物ではなく、あくまでも魔法の一種らしい。

ゲームとかだと、魔法によるダメージの計算って専用の魔法防御の値が重要になってくるが、ダンポンやダンプルが生み出したダンジョンの中では、魔法防御なんてステータスは存在しない。

魔法によるダメージを減らすスキルや装備は存在するが、それらがないと一定の体力が減る。

そして、減った体力は魔力と違って直ぐに回復するものではない。

そして、体力が0になったら必ず死ぬというわけではない。

瀕死、もしくは戦闘不能と呼ばれる状態になり、ポーションの類が一切効果がなくなる。

前に牛蔵さんが病院に搬送されたのもその状態だ。

外科的な治療で治ることもあるのだが、高確率で死に至る。

唯一、確実に治療できるのが英雄の霊薬だが、手元にはもうない。

瀕死になれば動けなくなるので、ソロでダンジョンで潜っている俺なんかだと確実に死ぬ。

「わう」

「ああ、ソロじゃないな。クロがいるよな」

クロの体力を見ることはできない。

だから、クロの体力にも気を配らないと。

これがパーティ攻略の大切なところだ。

さっそくサンダースネークが出てきた。

黒い鱗に覆われているが、顔のところに黄色い模様がある。

いかにも雷打ちますよって模様だが、黄色と黒は危険色を示す配色だって聞いたことがある。蜂とか虎とか。

なるほど、危険な魔物ってことか。

俺は布都御魂を鞘から抜き、魔法を撃たれる前に倒そうとするが、魔法の方が速かった。

「ぐっ」

痛みが全身を駆け抜け、剣を落としてしまう。

雷魔法は光魔法と並び、全ての魔法の中で最速の一つと言われている。

専用のスキルがなければ回避はほぼ不可能――回避タンクを自称する姫にとっても最悪の相性の魔法だ。

それでも俺は剣を拾い直し、サンダースネークの首を斬り落とした。

まだ頭が痛い。

これが魔法の力か。

ステータスを確認するとちょうど体力が15減っていた。

確か、俺のレベル1の頃の体力が15だったので、あの時にこの魔法を受けていたら一撃で瀕死になっていたということか。

回復薬を飲み、減った体力を回復させる。

体力に気を配るまでもない。

ダメージを受けたまま動くのは無理だ。

回復薬は現在インベントリに4種類、キノコから作った回復薬、キューブのトレジャーボックスから出てきた低品質ポーション、トレジャーボックスTから出てきた高品質ポーションとハイポーションで合計300個以上入っている。

体力ではない、この300本というのが俺の生命線だ。

気を配るのは体力ではなくこの本数だと肝に銘じておこう。

Dコインは自動収納されて、あと落ちているのは黄色い石?

雷の石というらしい。

前にD缶の中から出てきた火の石と同系統のアイテムだろう。

「どうせなら三匹くらいいっぺんに出て来てくれたら回復も一回で済んで効率的なんだろうけどな」

俺はクロにそう言ったら、本当に三匹一度に出てきた。

いやぁ、死ぬかと思った。

一つわかったのは、雷魔法は絶対に当たるわけじゃないってことか。

そりゃ、拳銃だって普通の人間は避けられないけれど、相手の技術が未熟だと少し離れていたら外れることがある。

映画なんかだと、主人公にはまず当たらない。主人公補正ってやつだ。

つまり、サンダースネークの魔法も外れることがある。

三発同時に魔法を放たれ、一発外れた。

つまり、二発同時に魔法が当たり……死ぬかと思った。

実際のところ30しか体力は減っていない、十分の一もダメージを受けていないのだが、これまでで一番の痛みだった。今度から電流ビリビリの罰ゲームを受けた芸能人を笑って見ることができないくらいの。

それを考えると、イビルオーガによって投げられたウサギの角とか、クロことダークネスウルフの死闘で受けたダメージも大したものではなかったのかもしれない。アドレナリンの異常分泌により痛みが麻痺していただけかもしれないが。

経験値は美味しいらしいが、このまま戦っていたら精神的にきつい。

俺は一度一階に戻った。

魔法耐性のあるスキルか装備、もしくは体力の上限を上げるスキルが欲しい。

一階層に冷蔵庫を設置した。

魔石投入口に黒の魔石を一個入れる。

これで一年間動くらしい。

白の魔石だったら十年か。

「冷蔵庫なのです! これで泰良にいっぱいおやつを買ってきてもらって保存ができるのです」

かげろうとドーナツですっかり美食に目覚めたダンポンが言う。

手土産に何か買ってくるけどさ、俺のものは勝手に食べないでくれよ?

さて、D缶だ。

体力や魔法耐性で気になるのはこれら。

【開封条件:所有者が雷魔法の攻撃を10回受ける(残り6回)】

持ち歩いていなくてもカウントされていた。これはいつか開きそうだ。

条件的にも魔法耐性か雷耐性が上がりそうな雰囲気がある。

【開封条件:所有者が体力500以上の状態で24時間以上起きている(残り8:51)】

ステータスは満たしているが、24時間起きているのは辛い。

正直、そろそろ眠くなってきていた。

しかし、残り9時間を切っているとなると、ここで寝るのが勿体ない気がしてきた。

よし、これは今日開けよう。

その間――

【開封条件:経験値薬を100本作る(残り15本)】

これがそろそろ開きそうだ。

その間は経験値薬作製を頑張るか。

D缶といえば、アヤメにあげたD缶はもう開いただろうか?

中身を言って来ないってことは、かなりショボいアイテムだったのかもしれない。

一度クロとPDを出て歩いてコンビニに行き、眠気防止用の栄養ドリンクとおやつ、アイス、コーラ、コーヒー、書籍を購入。

そしてPDに戻る。

「ほい、ダンポン。今日はシュークリームな。冷蔵庫に入れておくから好きなときに食べ――って、おい」

「いただきますなのです」

冷蔵庫に入れようとしたシュークリームをダンポンがそのまま念動力で持っていき、袋を破って食べ始めた。

「うーん、美味しいのです。シュー生地は甘味をおさえることで中に入っている生クリームとカスタードクリームの甘味を際立たせているのですね」

まぁ、あいつに買ってきたもんだし、別にいいか。

俺はブラックコーヒーを飲み、早速作業開始。

といっても、キノコを持つだけのスキルさえあれば誰にでもできる作業だが。

鍛冶師の作業もこんな感じなのだろうか?

最近ネットで詳しく調べてわかったのだが、簡易調合は技術の値に影響を受けて時間が短縮されたり、より複雑な調合ができるようになるらしく、最初は一時間かかっていた調合作業もいまでは30分強くらいまで短縮している。

簡易調合をしている間、暇なのでコンビニで買ってきたクロスワードパズルに挑戦。

しかし、これが結構大変だ。

言葉が出てこないとき、スマホで調べることができない。

昔の人はこういうとき、どうやって言葉を調べていたのだろうか?

もしかしたら、俺たち人類はスマホというなんでもどこでも瞬時に検索できる電子機器を手に入れたと同時に、何かを記憶するという大切な能力が失われたのかもしれない。

いや、俺の学力が低いだけか。

そして、作業開始八時間。

途中飲んだ栄養ドリンクの効果もそろそろ怪しくなってきたころ、経験値薬100本の調合が終了。

さて、缶の中身はなんだろうな?

「リボンか」

リボンといっても、レッ〇リボン軍の模様のようなザ・リボンではなく、細長い銀色のリボンだ。

成長のリボン?

経験値が1.2倍になるアイテム。これが二個ある。

成長の指輪の仲間のようだが、これは少し困った。

男の俺が着けるには少し、いや、かなり恥ずかしい。

そうだ、髪に結ばなくても腕とかに結べばいいんじゃないか? と腕に巻こうとしたが、

「リボンは髪飾りなのです。髪以外に結んでも効果がないのです」

ダンポンに注意された。

だったら、ハゲの人はどうなるんだよ。

「ダンポン、成長の指輪と成長のリボン、両方装備した場合って、取得経験値1.4倍になるのか? それとも1.44倍になるのか? もしくは重複しないのか?」

「個人の質問には答えられないのですよ。ダンポンは便利屋じゃなくてただの管理人なのです。さっき教えたのはシュークリームのお礼で特別なのです」

「冷蔵庫にシュークリームの仲間のエクレアってのがあるんだが――」

「1.4倍なのです! ただし、リボンを二つ装備しても意味ないのですよ」

ダンポンにエクレアを贈呈した。

よし、一個はミルクのところに行くか。

この時間ならもう帰ってるだろ。

クロと一緒に行こうとするが――

あいつ、PDに飽きたので勝手に庭に移動して、白犬のシロ(仮名)とじゃれていた。

仲がいいことで。

微笑ましいその光景におもわずほっこりし――ダメだ、眠りそうになった。

部屋に行ってスマホでミルクに電話をするが、出ないな。

もう夜も遅い時間だし、まだ家に帰っていないってことはなさそうだが。

眠気覚ましに彼女の家に行くことにした。

呼び鈴を鳴らすと、お婆ちゃんが出てきた。

あぁ、家のお手伝いさんを雇っているって言っていたな。

「あの、友だちの壱野と申します。ミルクさんは御在宅でしょうか?」

「ミルクお嬢様でしたら体育祭の準備で今日も放課後遅くまで居残りなさってますよ」

「そうですか。では、失礼します」

ミルクの学校はスマホの持ち込み禁止だからな。

電話に出られないのも無理はないか。

俺はそう思って家に帰った。

そして、いよいよD缶の開封の時がやってきた。

24時間――長かった。

青木と完徹でカラオケ大会したことがあって、あのときも24時間起きていたはずなのだが、あの時の数倍辛かった。

これだけ頑張ったんだ。

中に何が入ってるだろうか?

缶の中を覗き込む。

入っていたのは茶色の薬瓶だった。

ちょうどさっき飲んだ栄養ドリンクくらいの大きさだ。

もしかして、凄い薬なのでは?

鑑定してみる。

【栄養ドリンク:黄色と黒は勇気の印。24時間戦う男のための飲み物。医薬部外品】

……よし、寝るか。

令和のご時世、24時間戦う勇気よりも、しっかりと休む勇気を持つべきだ。

働き過ぎは身体に毒なのだから。

俺はPD内の寝袋にくるまって、そのまま目を閉じた。