軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

水野真衣の依頼

青木の生徒手帳が奈良のダンジョンで見つかった。

青木が落とした場所なんて、一カ所しか考えられない。

俺は姫に、昨日青木がダンジョンの中で生徒手帳を落とした可能性があることを伝えた。

『やっぱり……』

『つまり、昨日の石切ダンジョンに繋がった通路が、実はそのダンジョンだってことか?』

『でも、分身が生徒手帳を拾った場所にはドラゴニュートはいないのよね』

『ということは、少なくとも青木が落とした場所ではないってことか……それともドラゴニュートがずっと移動しているのか』

むしろ、その場所にドラゴニュートがいてくれたほうが話は簡単だったんだが。

『ん? 姫、いま配信しているんだよな!? まさか、青木の生徒手帳を拾ったところも配信されたのか!?』

どこまで映ったのかはわからないが、それでも見る人が見ればどこの高校かは直ぐに特定される。

月新高校の生徒手帳だってバレたら、厄介なことになるぞ。

『安心して。拾ったのは配信をしていない分身グループよ』

『そうか。それは助かった』

姫は分身を九人出して、三グループに分けて行動しているが、全国配信をしているのは一グループのみ。

まぁ、この時間に十三階層まで到達しているってことは、かなり全力で走ったのだろう。

それを配信でされたら、見ている人が車酔いしたり目を回したりする。

『でも、研究用のデータ収集はしているから、そっちにはバレてるわ。閑さんにも話してる』

『それは仕方ないよ。情報ありがとうな』

『どういたしまして。あと、やっぱり一人でダンジョンってあまり面白くないから、明日は一緒にダンジョン探索付き合ってよね』

『わかった。好きなだけ付き合うよ』

『約束だからね』

姫と念話でダンジョン探索の約束をする。

「壱野、どうしたんだ? 急に黙って」

「青木の生徒手帳見つかったって」

「え? 本当に!?」

「閑さんのところに届くことになってるから、明日持ってきてくれると思うぞ」

青木が安心しているが、周囲に聞かれたら困るので奈良のダンジョンで見つかったことは黙っておく。

多分返却の時に聞き取り調査はされると思うが、幸い昨日の調査には閑先生も同行していたので、それほど長い話にはならないだろう。

さて、明日はいつも以上にダンジョンに潜る事になりそうだ。

姫のダンジョン廃人度合いは俺たちの中でも一段階上だからな。

今日は家で大人しくしていよう。

去年の年末は滋賀に詰めていたし、年末年始もゆっくりできなかったから未視聴の秋アニメが結構溜まってるんだよな。もちろん、ド〇ゴンボールDAIMAは除く。あれだけは今も毎週欠かさず見ている。

そして最終回予想もしている。

二人で合体できるくっつき虫という名前のアイテムが出てきたからな。

きっと強敵を相手に、悟〇とベ〇ータが合体して、ベ〇ットかゴ〇ータになるんだと思う。

ドラゴンボールファン歴8ヶ月の俺の目は誤魔化せない。

アニメと言えば、いろいろと新作アニメが発表されたな。

今始まった冬アニメもそうだが、春アニメも気になる。

特に、3月末から始まるという『勘違いの――

「壱野くん」

俺が放課後の予定とともにこれから始まるアニメについて考えていたら、水野さんが声をかけてきた。

「今日、うちにこない? 仕事関係でちょっと見て欲しいものがあるんだ」

「わかった。着替えたら行かせてもらうよ」

仕事関係で――とわざわざ念を押さなくても、話を横で聞いてる青木も俺が浮気をするだなんて思ったりしないと思うよ。

それはさておき、ドーナツでも買って持っていくか。

ドーナツ屋でドーナツを選ぶ。

手土産で持っていくとき、喧嘩にならないように同じ種類のものを纏めて買うか、それとも選ぶ楽しみを感じてもらうようにバラバラに買うかは悩みどころだ。

福袋が売っていた。

ちょっと悩んだが、福袋を購入して、その中に入っていた無料カードで購入する。

こうなったら話が変わってくる。

無料カードの金額で買えるドーナツの中で、一番値段の高いものを選ぶ。

せこいとか、お前は金を持ってるんだから期間限定の高いドーナツを買えよとか言わないでほしい。

生まれ持った貧乏性はそう簡単に抜けるものではない。

ドーナツを買って、工場の横にある水野さんの自宅に。

相変わらずの豪邸。

俺の匂いを嗅ぎつけて、シロが走ってきた。

少し大きくなったな。

やっぱり犬の成長は早い。

と、俺の影の中からクロが出てきて、門を乗り越えた。

「きゃん!」

「わふ」

二人で庭を駆けていく。

仲がいいな。

「壱野くん、いらっしゃい」

シロとクロの鳴き声が聞こえたためか、呼び鈴を鳴らす前に私服姿の水野さんが出迎えにきてくれた。

「おじゃまします。これお土産」

「わざわざありがとう。ドーナツのお兄ちゃんの面目躍如だね」

「そうだね」

俺が最初にドーナツを水野さんにプレゼントしたため、彼女の弟と妹は俺のことをドーナツの人と呼んでいたが、その後はドーナツのお兄ちゃんと言い方を改めてくれるようになった。

最初は他の呼び方をしてほしくて、ドーナツ以外をお土産に持っていくようにしていたが、呼び方が変わらなかったため、開き直ってドーナツを持っていくようにしている。

お金持ちになったのに、あの二人は今でも最高のお宝を手に入れたようにドーナツを喜んで受け取ってくれるので、プレゼントし甲斐がある。

「それ、福袋? 買ったの?」

「うん。水野さんは?」

「買ってないよ。うちからはちょっと遠いし」

と話しながら、彼女の家の中に入る。

横目で庭を見たが、以前来たときと何かが違う。

そうだ、無くなってるんだ!

庭の半分を占拠していた家庭菜園や魚の生け簀や鶏小屋が。

「水野さん、庭がすっきりしたね」

「うん。それについてはあとで説明するね。入って入って」

と彼女の家に案内され、そのまま作業場へ。

胡桃里さんは今日はお休みらしい。

「その辺に座って」

「ありがとう」

座っていると、パペットがお茶を運んできた。

「ありがとう……えっと――」

名前なんだっけ?

「その子はキレウリワリくんだよ。足に松茸が生えてるでしょ?」

パペットの足に松茸が生えてる。

パペットでキノコの養殖をするのは世界広しと言えど、水野さんくらいだろう。

パペットにお茶を運ばせるのも彼女だけだが。

せっかくなので、インベントリに入ってるアビコくんを出してあげた。

パペットに郷愁の念や仲間意識があるかはわからないけど、久しぶりの実家だ。

ゆっくりしてほしい。

「それで、水野さん。用事って?」

「うん。まず、パペット作成のスキルの熟練度が上がってね。作れるパペットの数が増えたみたいなの」

「へぇ、おめでとう」

スキルは使えば使うほど、熟練度という隠しステータスが上がっていき、効果が増える。

水野さんはパペットを普段から有効活用しているしレベル上げにも使っているから、熟練度が上がる頃だろうと思っていたが、やっぱり作成数が増えるのか。

じゃあ、またエルダートレントの木材を持ってきたらいいのだろうか?

「それでね。壱野くんにお願いがあるんだけど……エンペラートレントの種が欲しいの」

「エンペラートレントの……種?」

エンペラートレントはわかるけど(いや、聞いたことがない魔物だけど)、木材じゃなくて種がほしい?

何に使うんだ?