軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

青木と石切ダンジョン

石切ダンジョン。

大阪の中でもできた理由が他のダンジョンと違い、都市部でも観光地でもない場所に設置されているため、入場者数は他の大阪のダンジョンに比べて遥かに少なく、行列の待ち時間も控えめだ。

もっとも、難波駅から電車で二十分、さらに駅から徒歩十分のこの場所は決して不便な場所とは言えず、また奈良県からも電車のアクセスが非常に便利ということもあり、閑古鳥が鳴いているということはない。

というか、一般人の感覚で言えば混雑している。

……はずなのだが。

やけに人が少ない。

ダンジョンの外には行列ができているはずなのだが。

駐輪場に自転車を停め入り口に行くと、臨時休業の文字が。

「今日、休みみたいだな」

「うわぁ、マジか」

ダンジョンに臨時休業なんてあるのか? と思うかもしれないが、これが実は意外と多い。

ダンポン側がダンジョン内の調整を行う時もあれば、逆に人間サイドの問題で臨時休業にすることもある。

実際、俺たちは利用していたが琵琶湖ダンジョンは最近まで使えなかったわけだし。

こういう情報はダンジョン局のホームページを見ればわかるのだが、つい見落としていた。

俺たちがうなだれている間にも、何人かの探索者が臨時休業の文字を見て、ため息を吐いたり悪態を吐いたりして引き返していく姿が見えた。

「どうする? 俺の家でゲームでもするか?」

「そうだな。久しぶりにス〇ブラするか」

と帰ろうとしたら、一台の車が停まり、一人の男性が降りて来た。

作業着姿のその人は――

「壱野さんじゃないですか。奇遇ですね」

ダンジョン局の園原さんだった。

「こんにちは。ダンジョンの臨時休業の情報を見ていなくて来てしまいました」

「ははっ、さすが探索熱心ですね」

「こちらはダンジョン局の園原さん。いつもお世話になってるんだ。園原さん、こいつは青木と言って俺の学友の探索者です」

「青木です」

「初めまして。青木さんのことも存じ上げていますよ。唯一無二のユニーク槍使いですからね」

「ありがとうございます……おい、聞いたか、泰良。俺有名人だって」

青木が嬉しそうに言うが、有名人なんて一言も言ってねぇよ。

とはいえ、友人の名前が知られていることは悪い気はしない。

「園原さんはお仕事ですか? って、まぁその姿なら仕事ですよね」

「ええ――あ、ちょっと待ってください」

と言って園原さんはスマホで誰かと連絡を取り、何か話をする。

そして――

「壱野さん、青木さん。ダンジョンに入りたいのでしたらご一緒しませんか?」

「え? いいんですか?」

「はい。お二人なら問題ないと支部長からオッケーが出ましたので」

俺はともかく青木もいいのか?

というか、園原さんの表情、なんか俺を巻き込む気満々な気がするんだが。

青木は「いいんですか!?」と乗り気のようだ。

嫌な予感がするが、園原さんにはいつも迷惑をかけている。

思惑はわからないが、ここは乗っておくことにしよう。

「では、準備をしましょう」

封鎖されていた更衣室に行き、貴重品を預けて戦闘用衣装に着替える。

闇火鼠の外套一式に着替えるのもだいぶ慣れたものだ。

青木はジャージか。

「そういえば、青木に聞きたかったことがあるんだが」

「なんだ?」

「天使の状態で服を脱いでから変身解除したらどうなるんだ?」

「服を着た状態に戻るぞ」

「じゃあ、逆に服を着ないで変身した場合って衣装はどうなるんだ?」

「普通に着た状態に変身するな。見てみるか?」

青木は武人の槍を取り出す。

青木専用装備のエンジェルストーンがついた武人の槍は、いつでも手元に取り出すことができる。

青木はその槍を使い、天使の姿に変身した。

金色の長い髪、白いバトルドレス、ワルキューレの槍といった戦闘天使の姿だ。

「それにな、服を脱いで変身を解除したあと、再度変身したら元に戻るんだ」

と青木が美女の姿のまま服を脱ごうとし――止まった。

「ん? どうした?」

「壱野は止めないんだなって思って。響さんは俺が脱ごうとしたら慌てて後ろを向くから」

「いや、青木は青木だろ? 髪の長さは変わっても顔は変わってないし」

「それもそうか。悪い、変な事言った。正直、この姿になってから周りの反応も違って、自分でもチ〇コついてるだけの女みたいな気分になってたよ」

チ〇コついてるだけの女って、凄い表現だな。

大切なのは青木の中身が変わったか変わってないかだろうに。

青木は上だけ脱いだ状態で変身を解除し、再度変身をすると、服が元に戻っていた。

「凄いな。いつでも元に戻れるなんて」

「ああ、着替えは便利なんだが、不便なこともあるぞ」

「なんだ?」

「パンツを穿き替えても直ぐにこのパンツに戻るんだよ。本当はこんなパンツじゃなくてトランクスを穿きたいのに」

青木がスカートを捲り上げ、黒い女物のパンツを俺に見せた。

俺は別に青木のパンツだとしか思わないし、男のパンツを見て興奮することなんて絶対にないのだが――響さんには見せるなよ。

青木も一度変身を解除し、石切ダンジョンのロビーに向かう。

園原さんとダンポンが待っていた。

「お待たせしました」

「いえいえ、こちらの準備も今終わったところですよ」

準備?

やっぱりなにかするつもりか?

「いったい何をするんですか?」

青木が尋ねると、園原さんではなく代わりにダンポンが答えた。

「お客様、これからこのダンジョンで設置アイテムの実験を行うのです」