軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【閑話】水野真衣の夢#side水野真衣

私――水野真衣には夢があった。

普通に言えば笑われるかもしれない夢。

でも、いつか叶えたいと思っていた。

「――輩、水野先輩、どうしたっすか?」

横から花蓮ちゃんが声を掛けてきて、私はハッとして返事をする。

「あ、花蓮ちゃん。ごめん、ちょっと考え事をしていた」

「やっぱり寝不足っすか?」

「『やっぱり』って何? これでも納品締め切り前以外は最低七時間は寝るようにしてるよ?」

睡眠不足はパフォーマンスの低下を招くからね。

ただ、数をこなせばいいだけなら、睡眠不足でも問題ないけど、良質な製品を作ろうと思えば、それは避けねばならない。

パフォーマンスが低下していたら、どうしても手元が狂うことになる。

「それで、どうしたの?」

「錬成したっすけど、鑑定をお願いできるっすか?」

花蓮ちゃんが赤黒い色のインゴットを手に持って言った。

見たところ鋼鉄にも似ているけれど、そうじゃないはずだ。

「うん――ちょっと待ってね」

私は鑑別のモノクルでそのインゴットを調べてみる。

凄い、ちゃんとできている。

「できてるよ、花蓮ちゃん!」

「本当っすか?」

「うん、ちゃんと伝説の金属――」

私は鑑別のモノクルの鑑定結果を見て言う。

「――の劣化品が」

そう、劣化品だった。

「マイナス8、それってどうなんっすか?」

「鋼鉄より少し硬いくらいだって」

私がそう言うと、花蓮ちゃんが落ち込んでる。

アダマンタイトに必要な素材に使われている鋼鉄、そして金属を強化するための硬化剤、他にも結構お高い素材や道具を購入してできたのがこの金属だ。

だいたい、作るのに三億円くらいかかってる。

【アダマンタイト(-8):決して壊れることがないと言われる金属の劣化品。その硬度は鋼鉄より少し硬い程度】

私は鑑別のモノクルを再度見る。

そして、花蓮ちゃんも鑑定結果を見て、落ち込んだ。

「うぅ、ごめんなさいっす。やっぱりまだ早かった見たいっす」

「何言ってるの! 凄いよ、花蓮ちゃん!」

「でも、こんなの使い道ないっすよ」

「そんなことないよ。むしろこの方が都合がいいんだよ! これで姫ちゃんのアダマンタイトの籠手を作るよ!」

私はそう言って、劣化版アダマンタイトを手にとり作業を始める。

この大きさなら籠手が作れそうだ。

これまで、ミスリルの籠手は作ったことがあるけれど、アダマンタイトの籠手を作るのは初めてだ。

ミスリルは丈夫だけど、魔法に強い耐性を持つ方に重点が置かれている。

でも、アダマンタイトはその逆で、魔力に僅かに耐性はあるけれど、それ以上に丈夫だ。

姫ちゃんはミスリルの籠手を使っているけれど、彼女の戦いは基本近接戦闘。

だったら、魔法攻撃よりも物理攻撃に対抗できる方がいい。

「よし、できた!」

「できたって、でも先輩、それ――籠手じゃないっすよね」

「うん、籠手じゃないよ」

さすがに籠手みたいな凝ったものはこんな短期間にできない。

【アダマンタイトの棍(-7):アダマンタイト製の棍の劣化品。鋼鉄よりも硬い】

棍ってあるけど、要するにただの棒だ。

特別な効果もなにもない。

でも――

「これを使えば――」

「あ、そういうことっすか」

私はリセットハンマーを取り出して、それでアダマンタイトの棍を叩いた。

すると、

【アダマンタイトの棍:アダマンタイト製の棍。ダイヤモンドよりも遥かに硬いとされる】

うん、マイナス補正がなくなった。

「アダマンタイトの棒ができたよ。劣化品じゃないから、これを素材に籠手を作るの」

「なんかズルいっすね」

「あはは、ズルいって今更だよ。チーム 救世主(メシア) から支援を受けて、最高の環境と凄い魔道具をいっぱい提供してもらって、魔道具のレシピまで貰ってるんだから」

「そう言えばそうっすね」

そしてアダマンタイトの籠手ができた。

しかも、神工鬼斧のお陰で攻撃値にも少しプラス補正が掛かる特殊効果がついた。

劣化版のアダマンタイトで籠手を作ってからリセットハンマーでマイナス補正を消す方が作業としては楽だったんだけど、一度棍を挟んだのは、これに期待してのことだった。

明日、姫ちゃんに届けよう。

「水野先輩、アダマンタイトの籠手っていくらくらいするっすかね?」

「そうだね。籠手は売ってないけど、ニューヨークのオークションでアダマンタイトの盾が千二百万ドルで落札されたらしいから、籠手だと五百万ドルくらいじゃないかな?」

「五百万ドル……えっと、一ドル一四〇円か一五〇円くらい? 七億円くらいっすか……よかった。赤字じゃないっす……というか、この短時間で四億円の儲けっすか……とんでもない話っすね」

「もっと稼げてるよ。アダマンタイトがまだ三分の一も残ってるし」

技術料って本当に凄いよね。

壱野君が瞬間調合を使って強化剤を調合できるようになったら、もっと安上がりになると思う。

強化剤の原材料は魔物素材だけど、扱える人が少ないせいかかなり安く取引されているって姫ちゃんが言っていたし。

そうなったらもっと稼げるようになる――あ、でもアダマンタイトが安定供給できるようになったら、値段も下がるから今回みたいに稼げるわけじゃないか。

「今回のは姫ちゃんが使うから利益になるわけじゃないよ」

「それはそうっすけど、稼ごうと思ったら稼げるってことっすよね? 水野先輩はそんなにお金を稼いで、何するっすか?」

「そうだね。どこか無人島でも欲しいかな?」

「それ、どこのブ〇ックジャックっすか」

「花蓮ちゃん、古い漫画知ってるね。ブ〇ックジャック先生って手術代で無人島を買ってるの?」

「そうじゃなくて、先輩、無人島を買ってどうするっすか? 自然保護とか、日本固有の領土を守りたいとかそういう意図じゃないっすよね?」

「私ね、いつか完全自給自足の生活をしたいって思ってるんだ」

畑を耕して、生産動物を飼って、海で釣りをして。

そんなのんびりとしたスローライフみたいな生活を――

「スローライフのために、現在ファストライフを営んでるんっすか?」

「本当に、なんでこうなってるんだろうね? 今の生活も嫌いじゃないんだけどね」

私はそう言って、残りのアダマンタイトで何を作ろうか考えるのだった。