軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武器強化計画(その3)

「これは鮒、これはうなぎ、これは鯉、これは鶏。今日の晩御飯」

水野さんが包丁を片手に構えて、自分に暗示をかける。

金のスライムを倒すところだ。

そういえば、水野さんの家には鶏小屋があったけれど、卵目的だけではなく、日常的に自分で鶏を絞めて晩御飯に使っているのか。

ハトとかカエルとかの名前が出て来なくてよかったと思う。

そして、水野さんは包丁を下ろした。

叩きつけるというより、本当に魚を三枚に卸すような手つきで。

そんな風に倒しても食べられないからな。

金のスライムが消えた。

そして――

「レベルが上がったよ」

「おめでとう、真衣。じゃあ、その流れで次に行きましょう!」

「う、うん」

間髪容れずに、姫が水野さんの前に金のスライムを置いた。

スパルタだなぁ。

次々に金のスライムを倒していく。

金のスライム酒は一本も出なかった。

俺が十匹倒したときは十回とも出たんだけど、やっぱり幸運値が低いと出現しないんだな。

「次!」

「はい!」

わんこそばみたいなペースで金のスライムが倒されていく。

そして、四十匹の金のスライムが全て消費された。

「ふぅ、終わったよぉ……徹夜して仕事するより疲れた」

「お疲れ様、水野さん」

温かいお絞りを渡す。

ウェットティッシュもあるけど、こっちの方が気持ちいいからね。

「ありがとう、壱野くん」

「それで、真衣。レベルはどうなった? スキルは?」

「うん、レベル160になってるよ。それとスキルも三つ増えてる。武器強化とパペット強化、神工鬼斧ってスキル」

武器強化とパペット強化はその名の通りだからわかるけど、神工鬼斧?

鬼の斧でも作るスキルか?

斧を普段から使う仲間はいないぞ。

「姫、どういうスキルか知ってるか?」

「人間の技とは思えない、精巧でち密な工芸品や美術品って意味の四字熟語だけど、スキルの効果はわからないわね。登録もされていないからユニークスキルかもしれないわ」

「ちょっとダンポンに聞いてくるよ」

ミルクがそう言ってPDの中に入ろうとするが、あんまり個別の質問には答えてくれないぞ。

「ミルク、これ持っていけ! たぶんこれで教えてくれるはずだから」

俺はそれを一箱渡した。

中身は滋賀県の銘菓糸切餅だ。

ミルクはそれを持ってPDの中に入り、直ぐに戻ってくる。

「泰良の言う通り、最初は渋っていたけれど、糸切餅を渡したら教えてくれたよ」

「よかった。それでスキルの効果は?」

「何かを作る時、運がよかったら特別な効果が宿ることがあるみたい」

運がよかったら……か。

俺の運を分けてあげたいが、そうはいかないよな。

「それでステータスもだいぶ成長して、いまならかなり高レベルの武器の作成や強化もできそうだよ」

「頼もしいわね。レベル160の鍛冶師なんて、世界でも片手の指で足りるほどしかいないわ」

姫が右手の指を一本一本折り曲げながら言う。

鍛冶師は覚醒者の一種であるが、しかしそのステータスには非常に偏りがある。

水野さんのステータスを教えてもらった。

――――――――――――――――――

水野真衣:レベル160(ランクE)

換金額:0D(ランキング:-)

体力:503

魔力:80

攻撃:3554

防御:201

技術:4625

俊敏:1341

幸運:93

技能:開発 不眠

スキル:鍛冶 修理 魔道具作製 属性付与

時短テク 仕上げ 念話 生産職の矜持

量産体制 パペット作成 鍛冶場の馬鹿力

武器強化 パペット強化 神工鬼斧

――――――――――――――――――

攻撃値と技術値だけならば俺よりも高い。

だが、体力値と防御値は非常に低い。

何しろ、その二つの値は俺がレベル35だった頃とほぼ同じ。

15階層の敵の攻撃でも深手を負うレベル。

30階層につれていったら、魔物の攻撃が掠っただけでも死ぬ可能性がある。

そういうわけで、高レベルの鍛冶師ほどレベルアップの手段は失われてしまう。

生産職の矜持は割と有名なスキルらしいが、それでも得られる経験値は多くない。

そのため、実戦で戦うのは非常に危険だ。

身代わりの腕輪があっても一瞬で貫通して死ぬだろうし、俺の持っている肩代わりスキルを使ったら俺が大ダメージを食らう。

きっと姫がいう他の高レベルの鍛冶師も、実戦では経験値を稼がず、パペット作成のような安全にレベルを上げる方法を持っている鍛冶師なのだろう。

たとえば、他人に自分の経験値を与えたり、戦っていない遠くにいる仲間にも経験値を配分したり。

うん、そういうスキルならありそうだ。

「それで、早速なんだけど。これから壱野くんと押野さんの武器の強化、あとみんなの防具を作ってみたいんだけど、場所ってどこかあるかな?」

「いまから? 今日は休んで明日でもいいんじゃない?」

「大丈夫! なんかいま、頭の中に凄くインスピレーションが湧いてきてるの。今しかできないって感じ。押野さん。私が送った荷物ってどこにあるの?」

「近くの多目的施設を借りてるからそこに運んでもらったわ」

「それと、鍛冶に使える魔物素材は全部ここに入ってるよ。これ、一覧」

ミルクがアイテムバッグと中に入っている物が書かれているリストを水野さんに渡す。

「ふんふん……これとこれと……これなら! 壱野くん、いつも着てる火鼠の外套も用意して! そっちも強化するから!」

「強化できるの?」

「任せてよ! 朝までには終わらせるから!」

水野さんのやる気が凄い。

仕事が終わったら、明日は一日ホテルで休んでもらおう。

それと夜も遅いから、クロ、水野さんの傍にいてやってくれよな。