軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武器強化計画(その2)

琵琶湖ダンジョンで狩りを続けていた俺たちは、ふと50階層のボスを倒せるのではないかと気になった。

そこで、試しに姫の分身たちが突入したのだが、一つ問題があった。

50階層のボスは 金亀神(きんかめかみ) という甲羅が黄金に輝く亀の魔物なのだが、そのボスの甲羅が非常に硬い。しかも、その金亀神は子どものミニ金亀を大量に召喚するのだが、その甲羅も硬く、姫のクナイでは全くダメージを与えられなかったそうだ。

俺の剣なら、ラッキーパンチの力があればダメージを通すだろうが、剣の刃こぼれは必至。

修理費もバカにならない。

だったら、ここで水野さんのレベルを一気に上げて武器を強化しよう。

そういう計画になった。

ちなみに、水野さんのレベルを120にしてから金のスライムを倒してもらうことにしたのは、俺たち四人が揃ってレベル160でスキルを覚えたからだ。

スキルを覚えやすいレベルは存在する。

基本的に十の倍数でスキルを覚えやすく、特に百の倍数は非常にスキルを覚えやすいとされている。

だが、どういうわけか俺たち四人はそろってレベル160でスキルを覚えた。

姫が言うには、レベルとスキルの関係は解明されていないことがまだまだ多いらしい。

その偶然がどこまで適用されるのか?

水野さんはレベル100になったときに鍛冶場の馬鹿力(鍛冶スキル使用時に攻撃値が二割上昇する)というスキルを手に入れたらしいが、レベル160になったらスキルを覚える可能性がある。

まぁ、勝手なジンクスだけど。

そういうわけで、PDの中で四人バラバラに水野さんのレベル上げを行う。

琵琶湖ダンジョンと同じなのだが、魔物の出現量を十倍に調整しているのでレベル上げがしやすい。

ただ、それだと四十階層クラスの魔物には苦戦を強いられるので、三十階層から三十九階層の間でそれぞれ戦いやすい場所で戦っている。

さて、俺たちがPDに入っている間、水野さんと念話で会話はできない。

時間の流れが違うからだ。

水野さんからしたら俺たちの会話が早口過ぎて何を言ってるかわからないし、俺たちからしたら水野さんの会話が遅すぎてやっぱり普通に聞き取るのは無理だ。

だが、合図を送ることはできる。

レベルが上がったら、念話で「ピッ」と言ってもらう。いや、「あっ」でも「ポッ」でもいいんだけど、とにかく一瞬の、0.1秒くらいの念話を送ってもらう。そうしたら、俺たちには10秒間水野さんの声が届き、レベルが一つ上がったとわかる。

水野さんのレベルを七つ上げたら、彼女もレベル120だ。そこから金のスライムを40匹倒してもらってレベル160を目指す。

「行くぞ、クロ! アビコくん!」

俺が言うと、クロとアビコくんがこちらを見上げて頷いた。

「覚悟っ!」

ブルーロックタートルを殴る。

この魔物は琵琶湖ダンジョンの38階層のあちこちにいる巨大な亀の魔物だ。

基本、甲羅の中に引きこもっていて、周囲にある青い岩に紛れているが、顔のある部分に近付くととんでもない速さで噛みついてくる。

ロックタートルと違って自爆はしないが、防御値は高いし、魔法耐性も高い。

ブルーロックタートルの前に立ち、襲い掛かってきたところをカウンターで倒すのがセオリーらしいが、それだと時間がかかるし、危険だ。

そのため姫たちは敬遠するが、俺にとってはラッキーパンチがあるお陰でその手間を省くことができる。

ただ、剣で戦うには硬すぎるので、影獣化を使用して殴る。

「よし、まだ生きてるな」

一撃殴って甲羅に大きな罅が入ったブルーロックタートルだが、まだ生きている。

甲羅に強い衝撃が加わると、目の前に獲物がいなくても顔を出すのだが、手加減を間違うとそのまま倒してしまう。

顔を出した亀は再び甲羅の中に引きこもろうとするが、クロが大きく吠えた。

咆哮スキルにより、ロックタートルの動きが止まる。

そこにアビコくんがミスリルハンマーで叩く。

頭を引っ込めて殻にこもられたらミスリルハンマーでも倒せないが、スタン状態のロックタートルは頭を引っ込めることもできず、壊れて引っ込むことのできないワ〇ワニパニックのワニのように、簡単に叩き潰された。

よし、まずは一匹。

ブルーロックタートルはまだまだいる。

それに逃げることもないから順調に倒せそうだ。

この調子で倒すぞ。

ブルーロックは亀肉を落とさないけど、青岩亀の甲羅を落とす。

これらは防具の素材になるそうだけど、加工できる職人が少ないので買い取り価格は低い。

水野さんに頼めば加工できるようになるだろうか?

ただ、俺たちって、あまり防具に重きを置いていない。

姫の場合は動きにくくなるし、俺はこの火鼠の外套の内側に軽く着込んでいる程度。

アヤメは大魔術師のローブだし、ミルクもやっぱり魔術師系の装備だ。

とはいえ、安全を考えると防具についても考えないといけなくなるだろう。

「ピィィィィィィィィィイ」

お、水野さんから合図が来た。

レベルが1つ上がったらしい。

あとレベル6だな。

そして戦い続けること五時間。

水野さんから七回目の合図が来たところで、俺たちは狩りを終え、ホテルの部屋に戻った。

「みんな、お疲れ様。疲れてるだろうと思ってコーヒー淹れてるよ」

「この時間にコーヒー?」

「え? この時間だからコーヒーじゃないの?」

普通ならそろそろ寝る準備に入る時間だけどな。

まぁ、飲むけど。

ホテルのコーヒーは美味しいし。

俺はブラックで飲む。

アヤメと姫は砂糖と牛乳を少し入れる。

ミルクは牛乳をたっぷり入れてほとんどコーヒー牛乳状態だな。

「それで、これからが本番だ。ここに金のスライムが入ってるんだけど、どうする? 水野さんが倒す? それともパペットに倒してもらう? スライムくらいならホテルの部屋でも倒せるはずだけど」

「……魔物を倒すのはやっぱり怖いかな」

だよね。

だったらパペットに倒してもらうか。

アビコくんたちがハンマーを掲げてやる気を見せる。

元気なのはいいけどホテルの中でそのハンマーは振り回さないようにな。

「でも、私がやるよ。金のスライムって普通の魔物じゃないから、パペット経由でレベルが上がるかわからないんだよね? だったら、一つでも無駄にしないように私が倒さないと」

水野さんが覚悟を決めた目で言った。

俺は頷き、彼女に任せることにした。