軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強化合宿へ

「今度の土日、友だちだけで合宿に? 例のEPO法人のあれか。いいんじゃないか?」

発泡酒を手酌でグラスに注ぎながら、父さんは簡単に認めてくれた。

俺も十八歳になったから、ある程度は自己責任でできるだろうということらしい。

信頼されていると思うとなんか嬉しいが――

「しかし、このCM最近よく見るな」

GDCグループのCMに視線を移していた。

ただ、雄大な自然の映像と、音楽と一緒にGDCグループの子会社の日本企業の名前が流れるだけのCMだ。

これだけの企業がGDCグループの傘下に入っているんだ……と内心ビビる。

押野グループもその中にあった。

ん?

「押野リゾートグループと、押野ホテルズ&リゾーツってあったけど、別の会社なの?」

「押野リゾートグループは西日本中心の企業で、押野ホテルズ&リゾーツは東日本中心の企業だな。元々同じ企業だったけれど、GDCグループの傘下になったときに分裂させたって聞いたな。とはいえ、経営母体は一緒だし、クーポンとか株主優待券も共通で使えるから同じ企業って見方もある」

「へぇ……」

ってことは、俺のブラックカードは東日本ではあまり使えないわけか。

いや、株主優待券と同じで東日本でも使えるのか?

今度姫に聞いておこう。

「お土産は梅干しでいいからな」

「遊びじゃなくて仕事なんだけど」

「何言ってるんだ。お前だって父さんが出張に行くたびにお土産要求してただろ?」

うっ、心当たりは確かにある。

まぁ、梅干しくらいなら別にいいか。

と話していたら、母さんがクロを抱いてやってきた。

クロが期待する眼差しでこっちを見ている。

一緒に連れて行って欲しいと訴えかけているのだ。

「クロは留守番だ。今度泊まるホテルはペット禁止だからな」

「くぅん」

そんな悲しそうな声で鳴いてもダメなものはダメだぞ。

合宿に行く前にPDでいっぱい 探索して(あそんで) やるからな。

「それなら、私たちがペットの泊まれる旅館を探すから、クロちゃんは夜だけこっちに来たらいいわ」

「お、それいいな! 久しぶりの夫婦水入らずの旅行か」

何故か父さんと母さんが盛り上がり始めた。

「いやいや、え? マジで?」

「どうせなら、一緒に行く友だちも送ってやるぞ?」

「うちの車、四人乗りだろ」

「詰めれば五人乗れるさ」

姫は前乗りするって言ってた。

まぁ、後ろの席で母さんとミルクとアヤメの三人だったら乗れるか。

とりあえず電話で聞いてみる。

『泰良の家の車で? うん。一緒に行くよ。泰良のお父さんとお母さんと会うの久しぶりだよね』

『壱野さんのご両親と!? うまく挨拶できるでしょうか。あ、はい。お願いしまひゅ――』

二人とも快諾してくれた。

電車なら天王寺から特急くろしおで一本なんだが、まぁクロが嬉しそうにしているからいいか。

「ところで合宿はいいが、今週はテストだろ。勉強は大丈夫なのか?」

……あっ。

※ ※ ※

その週は自主的にPDでのダンジョン探索やD缶の開封作業はお休みにして、勉強に集中した。

既に高校卒業のための履修過程を終了しているというミルクやアヤメ、京大というエリート大学生の姫と違い俺は凡人なので勉強に集中しないと赤点コースで卒業も危ぶまれる。

必死に頑張った。

PDで勉強をすれば他人より遥かに勉強ができるのだが、さすがにそこまでするほど勉強好きではない。

そして、テストは無事に終了。

赤点は回避したと思う。

そして、いよいよ合宿の日になったのだが……なぜこうなった?

「とってもカワイイワンちゃんですね。クロちゃん、よろしくね」

「クロちゃんか。アヤメ、あとで私にももう一回抱き着かせて! そのモフモフがたまらないよ」

クロが女性陣に大人気なのはいい。

問題は、なんで俺がミルクとアヤメの間にいるのかってことだ。

母さんが後ろに座るんじゃなかったのかよ。

俺が後ろにしても、普通は端じゃないのか?

なんかいつの間にか俺に選択肢が与えられることなく後部座席の真ん中に座らされたんだが。

「しかし、泰良の言ってた友だちがこんなカワイイ女の子たちとはな。てっきり青木くんを連れて来るかと思ったよ」

「本当にね。ミルクちゃん、暫く見ない間に大きくなったわね」

父さん母さんはやけにうれしそうだな。

途中、紀ノ川サービスエリアで少し休憩。

ドッグランでクロが大はしゃぎしていた。

他の犬にちょっかいをかけないようにって言ったところ、クロはとてもいい子なので悪さは一切しない。

一切しないのだが――

他の犬が全員伏せをしたのにはさすがにビビった。

まるで犬の王様だ。

犬たちはクロが普通の犬じゃないって見抜いたのか?

空を飛んでるツバメたちも(紀ノ川サービスエリアはツバメの巣がとても多い)こちらには全然近付こうとしない。

そういえば、クロと一緒に住むようになってから、近所からカラスの鳴き声が聞こえなくなった気がするが、もしかして……いや、考えるのはよそう。

ミルクやアヤメ、それに父さんも母さんも普通にかわいがっていたのに……なんでだ?

首輪の効果が切れたのだろうか?

【偽りの首輪:魔道具の首輪。この首輪をテイムした魔物に着けると、周囲の人間は普通のペットとしか思えなくなる】

……周囲の 人間(・・) ……あぁ、またこのパターンね。

大型犬をドッグランから連れ出そうとする飼い主がいて、でもクロに忠誠を誓うために伏せをやめずに困っているようだし、チワワは震えていまにも気絶しそうになっている。

このままここにいたら面倒だと思い、結局俺はドッグランを早めに出た。

そんな問題を挟みつつ、俺たちは観光地に一切行かずに今日宿泊予定の押野リゾート白浜に到着。

そう、合宿の目的地は和歌山県の白浜だ。

ここには押野グループの独占するホテル併設ダンジョンもある。

「お世話になりました、ありがとうございました。」

「おじさま、おばさま、ありがとうございました。じゃあね、クロちゃん」

「どういたしまして。泰良、明日、クロを連れていくから連絡よろしくな」

「はいよ」

俺が頷くと、ミルクが首を僅かに傾げて言う。

「クロちゃんもダンジョンに連れていくの?」

「あいつ、ああ見えて結構強いからな」

「あんなにかわいいのにですかっ!?」

まぁ、驚くよな。

あいつが魔物だってことはまだ言ってないし。

ホテルに入ると、既に姫がチェックインを済ませていて、多目的室で俺たちのことを待っているとフロントの人が教えてくれた。

係の人が荷物を部屋まで運んでくれるそうなので、そのお言葉に甘えて多目的室に行く。

「白浜久しぶりです。このホテルのお風呂、天然温泉なんですよ。楽しみです」

「時間があったら海岸を散歩したり、円月島に沈む夕日を見たりしたいね」

そうだな。せっかくの合宿なんだし、楽しまないといけないな。

そう思って多目的室に入ると、俺たちの言葉が聞こえていたのか、

「三人とも。合宿は遊びじゃないのよ。少しは気を引き締めなさい」

と姫に注意を受けた。

本来なら反省をしないといけないところなんだけれども――

パンダのニット帽子を被ってパンダのポシェットをして、さらに膝の上にパンダのぬいぐるみを乗せている姫を見ると説得力はない。

「楽しかったか? ア〇ベンチャーワールド」

「控えめにいって最高だったわ。なんで日本のパンダってあんなにかわいいのよ。アメリカとは大違いだわ」

それはよかったよ。