軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

京都ダンジョン配信

「また厄介な依頼を受けたわね。しかも無報酬」

姫が合流するなり、悪態を吐くように言った。

このダンジョンの35階層の魔物を退治する。

50匹くらい倒せば、とりあえず解決するらしい。

「報酬なら先払いで貰ったぞ」

「え? 本当に? 神様からの報酬って何?」

姫の機嫌が治った。

どうせ深い階層まで潜るつもりだった。

三十五階層くらいまでは潜るつもりだったし、なにより魔物がいっぱいいるのはありがたいくらいだ。

そのくらい姫も知っているのだから、報酬が貰えるのであれば万々歳だろう。

しかも、それは神様からの報酬なのだ。

「五穀豊穣の力がこもった守り石だってさ。これを置くと周辺数十メートルの作物が良く育つらしい」

鑑定でも確かめたから本物だ。

作物の育ちがよくなり、病気になりにくくなるらしい。

農家垂涎の一品だ。

「へぇ、一応凄い品ね」

少しガッカリした表情になる。

まぁ、これがあるからって戦闘が楽になるわけじゃないからな。

「姫、使うか? 押野グループのブランド野菜を育ててる畑とかあっただろ?」

「あるけど、あの畑を管理しているのって子会社だからそんな貴重なものを預けるのはちょっとね。ミルクとアヤメはいる?」

「私はいらないかな? 畑はないし、家にある花壇も買ってきた花を植えてるくらいだけですから」

「私もお母さんが鉢でミニトマトを育ててるくらいです」

だったら、水野さんに渡すか?

水野さんの家は家庭菜園もある。

せっかくもらったんだし、インベントリの肥やしにしておくくらいなら、家庭菜園の肥やしに使ってもらおう。

「今日は久しぶりにダンジョン配信するんだよな?」

国民栄誉賞の授賞式でも配信枠があったらしいが、あれはダンジョン配信ではない。

「国民栄誉賞を貰ってから全員で揃ってするのは初めてだよね」

「十二時から五時間、枠を予約しているみたいですね。妹もアーカイブ保存している動画を学校の友だちと一緒に見るって言ってました」

リアルタイムで見ないのか……と思ったが、ダンジョン局でバイトがあるらしい。

どんな仕事なのかは守秘義務の関係でアヤメも教えてもらえなかったらしいが、園原さんにこっそり聞いてみよう。

軽めの昼食を食べて、ダンジョン探索開始。

現在の時刻は十一時三十分。

んー、配信開始の十二時には二十一階層に行きたかったんだけど、流石に難しいか。

とりあえず、前回潜った場所まで 迷宮転移(ダンジョンワープ) で移動して、そこから走って移動することに。

「前回って、たった七階層までしか潜ってなかったのか。そう考えると成長したよな、俺たち」

一気にレベルが上がったのはその後の生駒山上遊園地でPDのことをみんなに明かしてからだもんな。それまで女性陣はPDを使えなかったんだから、レベルが低いのは当然か。

「あれからまだ半年も経ってないんだよね」

招き猫そっくりの猫人形がいたので、懐かしみながら走って下の階層を目指す。

十五階層に到着したところで、配信の時間になった。

姫が持っていた配信クリスタルが自動的に起動し、コメントが映し出される。

[枠乙です]

[こんにちは]

[KES受賞おめでとう]

[今日は京都ダンジョンですね。地元なので嬉しいです]

[……酔いそう]

[始まったと同時にジェットコースター状態……うっぷ]

[ゲロロロロロ]

みんなが文字で吐いている。

俺たちは現在、走っていた。

もちろん、全力ではない。

ただ、一番遅いアヤメですら700以上の俊敏値を持っている。

レベル1の俊敏値が一桁だ。

単純に百倍の速度が出ているわけではないが、それでも時速300キロは出ている。しかも、その速度で何度も急カーブをしたりしている。

その俺たちを動画が自動的に追尾している。

「みんな、今日も配信に来てくれてありがとう。いま、二十一階層に向かってのんびり走ってます」

姫が走りながら笑顔で言う。

見事な営業スマイルだ。

この笑顔はアバターになっても反映されていることだろうが、残念なことに、リスナーたちはその笑顔を見ている余裕はないだろうな。

[のんびりじゃねぇ、なんでその速度で走って噛まずに言えるの?]

[アルファ様は俊敏値の尖端異常者だから]

[三人も汗もたらさずについていってるんだけど]

[進路上の魔物が一瞬で細切れになってる]

[もうダメ…‥三半規管が悲鳴をあげている。ちょっとバケツ取ってくる]

今回のダンジョン配信動画は、催吐動画として伝説に残ることになるのだが、それは別の話。