軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覗きの対価

ティヴェロトルの姿が見えてきた。

周囲にはヴェロトルの群れもいる。

さて、魔法を使うか。

本城さんと兎束さんがいるので、 地獄の業火(ヘルファイア) をそのまま撃つことはできないか。

富士山から溢れた魔物を地上で倒したのが俺だってバレてしまう。

だったら、といつものように影獣化を使用する。

「これが、影獣化――アバターでしか見たことがなかったけど、本当に戦隊ヒーローみたいですね」

兎束さんが緊張感のない口調で言った。

俺たちのダンジョン配信は、鈴原と戦って顔バレをした今でもほとんどアバターだからな。

そして、最後に、琴瑟相和を使う。

姫がいないので、いつもの半分しか効果はないが、しかし魔法の威力が五割上昇する。

準備は終わった。

「ミルク、アヤメ。俺が魔法を撃ったら銃撃と魔法による攻撃を頼む」

「うん、わかったよ」

「はい、お任せください!」

敵の姿が見えた。

大量のヴェロトルと、その中央にいるティベロトルが。

「むっ、これは思ったより難しいな」

「どうしたんですか?」

「さっき見たよりヴェロトルが広がっているんだ」

本来ならティヴェロトルの足下に魔法を放ちたかったんだが、そうなると前にいるヴェロトルが邪魔なんだ。ここから狙えるのはヴェロトルの首から上だけ。

それを狙うことができるが、避けられたら遠くに飛んでいってしまう。

さて、どうするものか。

俺の身体機能は大きく向上している。

だったら――

「 短距離転移(ショートワープ) 」

俺は前方の、しかも上空に短距離の転移をする。

斜め上にいるここからなら十分狙える。

「解放: 地獄の業火(ヘルファイア) !」

闇の炎をティヴェロトルに向かって放つ。

それはティベロトルの胸のあたりに命中すると同時に、巨大な爆発を起こした。

と同時に、俺の落下速度が弱まった気がした。

爆風の影響だろうか?

いや、違う。

これは――

俺は振り返る。

アヤメが大魔術師の杖を使って意識をこちらに集中させていた。

風の魔法を使って落下速度を弱めてくれているのか。

学校の三階くらいの高さなら落ちても平気なのだが、それでもありがたい。

ゆっくりと降下して着地した俺は、皆のところに戻る。

撃ち漏らしたヴェロトルがこっちに向かってくるはずだ。

気配がまだいくつか残っている。

地獄の業火(ヘルファイア) は威力は申し分ないが、中範囲攻撃だからな。

と思っていたら銃声が聞こえてきた。

だが、おかしい。

銃声が聞こえても気配が消えない。

ミルクの腕ならば、確実に一撃で一頭仕留めることができるはずだが。

振り返ると、外側を走っていたと思われるヴェロトルが倒れていた。

死んでいない。

足を狙ったのか?

倒れたヴェロトルが障害となって、中央に寄ってくる。

そうか、ここまで集めれば――

「解放: 雷神(ゴッドサンダー) 竜巻(トルネード) 」

アヤメの雷を伴った竜巻が、中央に寄ったヴェロトルの群れを呑み込んだ。

「凄い……これがチーム救世主の魔法か」

「さっきの黒い爆発とか、今回の雷の竜巻とか理事長の魔法の何倍も威力がありそうですね。あの銃も魔法なんですよね?」

「魔力を感じましたよ。魔法詠唱を使っていないのは無詠唱なんだろうね。魔道具の類だったらうちに配備したかったのに残念だ」

「その魔法の威力に耐えられる銃も凄いんですけどね。あんなの下手な人間が造った銃なら暴発しますよ。いい鍛冶師がついているんでしょうね」

本城さんと兎束さんが感心するように言った。

と、落ちているアイテムを拾わないと。

インベントリについても隠しているので、自力で拾わないとな。

「壱野さん、待ってください。先に魔力の補給をしますね」

「ありがとう、アヤメ」

アヤメが俺の手を握り、マナタンクに貯めてあった魔力を俺に流してくれる。

これがなければ、いざという時に転移魔法も使えないからな。

「皆さん、私たちも手伝います」

「ネコババしたりしないから安心してください」

二人にも手伝ってもらい、竜の鱗と竜の肉、Dコインを拾い集めた。

ティベロトルのドロップ品の大きな竜の鱗と骨も回収する。

骨を集めたら骨格標本が完成するかもしれないな。

「皆さん、ありがとうございます。これで狩りが続けられそうです」

「お気になさらず。俺たちも皆さんの狩りの仕方を見て、いい経験になりました」

俺には集団戦の経験はほとんどない。

だが、集団戦の技能は持っている。

もし、この先、過去に戻ってエルフと一緒に終末の獣と戦うことがあるのなら、今回のような戦いになるのだろうか?

そう考えながら、地上に戻る。

「いい人たちだったね」

「お土産に竜の肉ももらっちゃいましたし」

「そうだな。今度会った時はしっかりお礼を言わないとな」

PDにここのダンジョンを登録するだけの予定だったのに、思わぬ出会いになったな。

「さて、帰ってメロンを食べるか」

「そうだね。でも、その前に遠くを見る魔道具について、しっかり説明してもらわないとね。なんで黙っていたのかと一緒に」

ミルクがさっきの笑顔で言う。

ヤバい、言い訳を考えるのを忘れていた。

「私、壱野さんのこと信じてますから!」

「もちろん、私も泰良のことは信じてるよ?」

アヤメが隣から俺の手を強く握り、ミルクも負けじと反対の手を握る。

「信じてくれてるのなら、話さなくてもいい?」

「「それはダメ(です)!」」

あ、うん。

その後――

「へぇ、覗いちゃったんだ。私たちがシャワーを浴びてるところ。それで黙ってたんだ」

「見たいのなら正面から見たいって言ってください。油断しているところを見るのはダメです」

ミルクが笑顔のまま言って、アヤメがちょっと角度が違うところから怒る。

「でも、不可抗力で一度だけなんだ! その後は本当に一切使ってない! ウソじゃない! 真実の鏡の前で証言をしてもいい!」

「黙っていたことを怒ってるんだけど?」

と考えた言い訳がミルクの説教を加速させることになった。

素直に謝るのが正解だったらしい。

その後、俺は挽回するために平謝りをした。

その結果、どうやら恩赦を貰えたらしい。

「わかった。泰良を許してあげるよ。じゃあ、遠視の義眼は私たちに預けてね」

「今回だけですからね」

素直に遠視の義眼をミルクに渡す。

正直、これを持っていたら誘惑されるのでこうしてミルクに預けることで肩の荷が下りた気分だ。

清々した気分に――

「じゃあ、今度、一回だけ泰良がシャワーを浴びているところを覗くことになると思うから、それで許してあげるね」

「え? 待て、覗くって、ミルク?」

「安心してください、壱野さん! 押野さんも念話でそれで許すって言ってくれてますから!」

「姫と連絡とったの!? って、覗くっていつ?」

俺の問いに、二人は笑って答えない。

いつ覗かれるかわからないまま、ずっとPDでシャワーを浴びる羽目になるのかよっ!