軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

浅草ダンジョンの分かれ道

ソロになってしまったが、念話を使って仲間とやり取りはできるし、本当に危なくなれば 迷宮転移(ダンジョンワープ) で二十一階層の入り口に戻ることができる。

一つ気になるのは、さっきの分かれ道、男と女で分かれていたが、たとえば性自認が女性の男性の場合は、または逆の場合はどうしたらよかったのだろうか?

一人になって最初の部屋には豚の人間――オークがいた。

前にレッドオークという上位種と戦ったが、このオークは黒い。

ブラックオークか。

「なるほど、女性があっちっていうのはよくわかる」

ブラックオークはオーク種の中でも特に性欲が強い雄ばかりで、女であれば誰でも性的な意味で襲う魔物だ。

その時、オークは興奮状態になり、戦闘力が向上するので女性がいないと戦いやすい。

と同時に、さっきのことを考えると、性自認が男性の女性がこちらに来ていたら、やっぱりオークの力は増していただろうからさっきの分かれ道は生物学的な男女で分かれるのが正解だったと思いいたる。

「二刀流応用剣術、双剣竜巻切り」

二本の剣を回転させて、周囲のブラックオークを斬っていく。

すると、ブラックオークが桐の箱に入った豚肉に変わっていく。

【最上ダンジョン黒豚ヒレ肉:最高級の黒豚ヒレ肉】

元がオークだったと思うとアレだが、オークと豚肉は別物だと思おう。

Dコインとともに全て回収する。

『泰良、そっちはどうだった?』

姫から念話が入った。

ブラックオークがいたことを説明すると、男女分かれた理由に納得していた。

『こっちはサキュバスがいたわよ。万が一サキュバスに泰良が魅了されて敵に回っていた可能性を考えると、本当に男女分かれてよかったわ。魅了の怖さは魅了石でよく知ってるもの』

そうか、あっちにはサキュバスがいたのか。

綺麗なお姉さんの姿だったのだろうか?

少し見てみたかった気がする。

『壱野さん、もしかして少し見てみたかったと思いました』

『そ、そんなことはないぞ』

アヤメからの念話を慌てて否定する。

顔が見えないから表情からバレることはないはずなのに、なんでわかったんだ?

迂闊なことは考えないようにしよう。

次の分かれ道に来た。

財宝を求めて強敵と戦う者は右、安全を求めて次の分岐に移動する者は左。

財宝か。

強敵といっても二十一階層の敵なら大したことはないだろう。

俺は右の通路に進む。

何かの気配が近付いてきた。

魔物の気配と、そして、人間の気配だ。

その姿が見えてきた。

三十歳くらいの男が四人、その後ろには石のライオンが五頭。

「おい、逃げろ! ストーンアニマルは二十八階層相当の化け物だ!」

なるほど、ストーンアニマルって魔物なのか。

二十八階層の魔物なら敵ではないな。

俺は剣を握って迎え撃つ。

「やめろ! あいつらの防御力は異常だ! 魔法がないのに戦うのは自殺行為――」

「大丈夫です!」

俺はそう言って、剣でストーンアニマルを斬る。

硬い――がこういう敵は硬いだけでは俺の敵ではない。

幸運値が異常に高い俺は、ラッキーパンチのスキルにより全てクリティカルとなる。

クリティカルにより相手の防御によって減算されたダメージの10%を貫通ダメージとして与えることができる

つまり、硬いだけの雑魚は――

「嘘だろ! あのストーンアニマルを――」

「なんだよ、あの剣は」

「たったの一撃で…‥」

「……カッコいい」

簡単に破れる。

剣を鞘に納めた。

「ありがとう、助かった。若いのに大したもんだ」

「……なぁ、あんた。もしかしてチーム 救世主(メシア) のベータじゃないのか? テレビで顔を見た気がするんだが」

「最強鈴原を倒したあのベータなら、ストーンアニマルを倒すこともできるの……か?」

「やっぱりいい男だ」

鈴原の方が確かに硬かったな。

「悪い。恩人に自己紹介がまだだったな。俺は葬送のタイタンのリーダーの土御門。レベルは132だ」

「EPO法人天下無双の壱野泰良です。ダンジョン配信ではベータと呼ばれています。レベルは……151です」

一瞬迷ったが、別に隠しているわけでもないし、相手が言ったのに自分も言わないのはどうかと思ったため、レベルを正直に伝える。

「驚いたな。強いとはわかっていたが、その年齢で151か……」

「助かったよ。俺たち、普段はもっと安全に戦ってるんだが、財宝って言葉に目がくらんでな」

「今度改めて礼をさせてもらうよ」

「な、なぁ、もしよかったら電話番号を教えて――い、いや、なんでもない。握手を頼む」

「えぇ」

俺のファンなのか、緊張している男の人と握手を交わして、それ以上は何もなくその場で別れた。

助けた結果にはなるが、あの四人なら魔物から逃げ切るくらいはできただろうし、命を助ける程の大袈裟な展開ではないからな。

さっき握手した人の手汗が凄かったので、水で洗い流し、奥に向かうと空の宝箱があった。

あいつら、財宝だけきっちり持って帰ったのか。

と思ってさらに奥に進むと、まだ宝箱が残っていた。

早速開けてみる。

【魔術師の秘薬:魔法のクールタイムを一時間0にすることができる秘薬】

【戦士の秘薬:魔法以外のクールタイムを一時間0にすることができる秘薬】

ぶっ壊れ性能の薬が残っていた。

これってかなりヤバいな。

いつか使おうとインベントリに収納する。

これまで何度か21階層で宝箱を開けてきたが、ここまでいいアイテムはそうそう出なかった。

もしかしたら、この階層の分岐における【財宝】というのは普通の宝箱よりもいいものが入っているのかもしれない。

さっきのメンバーもそのことを知っていてこっちに来たのかもな。

だからこそ、もう一つの宝箱の中身が気になる。

逃した魚は大きい。

今度、宝箱の中身だけでも教えてもらおうかな?

連絡先、聞いておけばよかった。

掃除機のダイソン? いや、何かのアニメのタイトルみたいな名前だった気がする。

興味がないから直ぐに忘れてしまった。

次の分かれ道に。

「恋人募集中の人は右、そうでない人は左……これ、右にいったら恋人ができるのだろうか? ……いや、左に行くよ、うん」

独り言を呟きながら、左の道を進む。

俺ってRPGはあまりしないけれど、遊ぶ時はダンジョンの全ての部屋に行って全ての宝箱を取るプレイをしていたから、こういう分かれ道で片方しか行けないのってなんかストレスがたまるな。

現れた魔物は普通の魔物で、さっきのアンケートの意味がわからない。

途中、一方通行で片側からしか開かない状態になっている扉を通って別の分岐と合流しながらも奥に進む。

しかし、この階層の質問。

本当にとりとめがない。

好きなのは胸が大きい子が左で小さい子が右って、そんなの選べるわけないだろ。

大切なのは胸の大きさだけで女の子の好き嫌いを決めてはいけない。

俺は憤りながら道を進み、その道の先にいたホルスタインのミノタウロスをぶち殺す。

最初の分岐で男女に分かれていて本当によかった。

なるほど、正直に進んだ方がいいっていうのはこういうことか。

次の質問は、トリか牛か。

機内食みたいだ。

ビーフオアチキンだな。

これはわかったよ。

きっと、トリを選んだら鳥の魔物が、牛を選んだらミノタウロス再びってことだろ?

ここはトリを選んで、鶏肉、牛肉、豚肉を揃えよう。

俺は意気揚々とトリ肉を選ぶ。

そして、その先には――

「え? 熊?」

なんか狂暴そうな熊がいて、奥に宝箱があった。

特に強敵でもないので、戦闘シーンは省略。

熊の手を落とした。

熊の手って、高級料理の材料になったっけ?

とりあえずインベントリに収納して宝箱に向かう。

宝箱の中に鶏肉が入ってるのか?

宝箱を開けると――中に入っていたのは巨大な……熊手?

【宝の熊手:これを使って砂地を掘ると、お宝が見つかることがある】

……うん、やっぱり熊手だ。

これはトリじゃなくてクマだろう。

さっきの分かれ道は一体何だったのか。

そんなことを思いながら、俺はさらにダンジョンの奥に向かった。

既にその先にはアヤメが待っていた。

「壱野さん! お疲れ様でした」

「アヤメもお疲れ様。姫とミルクは?」

「二人とは途中で別れたので」

そうなのか。

少し待つと、姫が来た。

ミルクがいない。

「私が三番目ね。ミルクとは途中で別れたわ」

「ミルクとはどういう質問で分かれたんだ?」

「身長150センチ以上か150センチ未満か」

「遊園地のジェットコースターの身長制限みたいな質問があったんだな」

「いくら私でもジェットコースターは(ナ○シマスパーランドのス○ールドラゴン2000だってギリギリ)乗れるわよ!」

そうだよな。

小学生じゃないんだから、ジェットコースターくらい――と思っていたらミルクの気配が近付いてくる。

気配が来たようだ。

「みんな、お待たせ」

「今来たところ……ってなんだそれ?」

ミルクの頭の上には塩、服のあちこちにお守り、さらに勾玉やら鏡やら開運グッズらしいものをてんこ盛に持ってやってきた。

「えっと、途中からサイコロを振って吉が出たか凶が出たかでルートが決まってたんだけど、全部凶を引いてたら毎回厄除けのアイテムが入っている宝箱があってね」

「そ……そうか。そうだ、俺も熊手が手に入ったんだ。これもやるよ」

「ううん、いらない。こんなにアイテムが貰えたんだし、逆に運がいいんじゃないかって思えてくるよ」

ミルクはそう言って笑った。

しかし、その目は笑っていない。

鑑定したところ、全ての厄除けグッズは特に何の効果もない気休め程度のアイテムだった。