軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その4

【転移用魔法陣の起動に必要なMP(百万の位)】

このカードを使えば、転移用の魔法陣を起動させることができるんじゃない?

とはいえ、いきなりぶっつけ本番で使うのは怖い。

持っているカードで、実験に使えそうなものを確認する。

【商品の値段(万の位)】【所持金(千の位)】【取得経験値】【宝箱の数】【最大MP】【空腹度(%)】【すばやさ】

ここで【所持金(千の位)】【-】【1】にしたらどうなるんだろう?

こっちの世界のお金は持っていない。

いきなり借金生活?

誰に借りていることになるんだろ?

世界に?

さすがに怖いので、【所持金(千の位)】【+】【2】を三枚合わせて、

「所持金千の位+2」

と言う。

すると、目の前に突然銀色の貨幣が2枚現れた。

その貨幣には数字とアルファベットが。

【1K】

……1K……1000ってことかな? Kが貨幣の単位ということはないと思う。

裏を見ると、ダンプルの絵があった。

ゲームセンターのメダルみたいだな。

高校に入学してから泰良と再会するまでの間、泰良に会いたくてゲームセンターに通っていた日を思い出す。

メダルゲームで遊んだことはほとんどなく、イベントの日に無料で貰ったメダルを使ったくらいだ。

もっとも、一回も当たりを引いたことがなかったので、メダルゲームに嵌ってしまうことはなかった。

やっぱり、三枚のカードの数式通りに物事が運ぶんだ。

これが算数大好きっ子の特殊な力。

私は魔法陣に行くと、クエンドさんがいた。

昨日の夜と比べて魔法陣の数値が僅かに増えている。

クエンドさんも魔力を注いでいたみたいだ。

「ミルク。早速で悪いが、MPを注いでくれ」

「あの、その前に魔法陣について試してみたいことがあるんです。うまくいったら魔法陣が起動できるかもしれません」

「なんだと!?」

説明も面倒なので、三枚のカードを用意する。

「転移用魔法陣の起動に必要なMP百万の位-1】

そう呟くと、持っていたカードが消えて、そして魔法陣が光り輝き始めた。

突然のことに、クエンドさんが口を開く。

【5187/1】

【5186/1】

【5185/1】

一秒ごとに魔法陣の魔力が1消費されていく。

え? つまりこれってMPを100万注いだところで1秒しか魔法陣が起動しなかったってこと!?

知らなかったら、みすみす脱出の機会を逃していたよ。

「クエンドさん。魔法陣の起動に必要なMPを1に変えました」

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!?」

クエンドさんが叫ぶ。

その声が引き金となって、寝ていたみんなが起きてきた。

「クエンド、朝っぱらからどうしたんだ?」

「スチュワート! ちょうどいい! 集合だ! 転移魔法陣が起動した! 地上に帰れるぞ!」

「なんだってっ! わかった、みんなを呼んでくる!」

「地上に戻ったら金がいる! このときのために用意していた換金できる魔物素材も忘れるな」

「わかった!」

そして、クエンドさんは私を見た。

「どうやったかは詳しくは聞かない。特別な力っていうのは気軽に話すもんじゃないからな。だが、礼は言わせてくれ。ありがとう」

クエンドさんは私にお礼を言った。

私は笑顔で、「どういたしまして」と返す。

その後はいろいろと大騒ぎだった。

全員で荷物を集めて転移陣を使用。

転移した先は遺跡の中だった。

そこからみんなで脱出。

出て来た魔物は、せいぜい三階層くらいの弱い魔物。

遺跡の外はまた森だった。

遺跡の外観はアンコールワットみたいで随分と古いもののように思える。

そこから歩いて昼過ぎには小さな町に辿り着いた。

遺跡の町アントワというらしい。

クエンドさんを含め、大半はこのアントワにいた人間だったそうだ。

魔物の素材を換金したお金は全員で山分けになった。

一人当たり500イェン。大きな銅貨五枚だった。

イェンというのがこの世界の通貨らしい。

この辺りは物価が安いのか、宿屋の一泊の値段は10イェンととても安かった。

とダイジェストで脱出話をしたけれど、問題はここからだった。

「ミルクはハジメ王国から飛ばされたのか。ハジメ王国は別の大陸だ。そこに行くには船に乗る必要がある」

「……船? そんなに遠いんですか?」

「地図はないが、行き方は書いてやる。本当は俺も一緒に行ってやりたいが、俺にはやらないといけないことがある」

昨日の冒険者ギルドでのやり取りを思い出す。

『え? クエンドさん、生きていたんですか!? アスラさんとモイラさんが死んだって』

『ご覧の通りだ。アスラとモイラの奴に嵌められて転移の罠にな。それで、アスラとモイラの野郎はどこにいる?』

『それが、冒険者を引退して故郷に帰るといって――パーティ名義の口座と荷物を全て引き取って。冒険者ギルドの規約により、クエンドさんは戻らず規約的にあなたは死んだものとなっていたのと、クエンドさんは家族もいらっしゃらないので』

『ちっ、俺の貯金と荷物も全て奪われたか』

『申し訳ありません』

『あんたが悪いんじゃないよ』

あの時のクエンドさんの表情は冒険者ギルドの職員が思わず謝ってしまうのも仕方ないくらい鬼の形相だった。

本当は復讐なんてやめてほしいんだけど、きっと私が止めても無駄なんだろうね。

「クエンドさん、復讐するのはいいですが、穏便にお願いします」

「あいつら次第だ」

「私が穏便にとお願いしたことを心の片隅に留めておいてください」

「……わかった」

クエンドさんは少しバツの悪そうな表情になったが、最後は笑顔で見送ってくれた。

それと、今朝には例のカードがやっぱり私の胸元に置かれていた。

どうも夜明けと同時にカードが十枚手に入るらしい。

泰良のいるハジメ王国に行くにはきっとこのカードが役に立つ。

最初はなんて運が悪いんだって思ったけれど、このカードがあればきっとすぐに泰良に会える。

そう思って――

ただ……

「このカードなんだろう?」

十枚のカードのうち一枚に何も書かれていないカードがあった。

この何も書かれていない空白のカード。

このカードの役割を私が知るのは、まだまだ先の話。