作品タイトル不明
その3
船が来ないって言っていた理由も、脱出ができないって言っていた理由もわかった。
パラシュートがあれば――ううん、パラシュートがなくても姫みたいに天翔のスキルがあれば走って降りることができるのに。
私は落ちている倒木を見る。
「んん」
私は力を入れて念動力スキルを使って倒木を浮かせる。
これに乗って空を飛ぶことができれば――ってダメだ。
念動力って重い物を長時間浮かせることはできない。
「って、私が重いんじゃないよっ! 倒木のことだよ!」
「何も言ってねぇよ。あと、倒木を浮かせて乗ることができるのはわかったが、長時間浮かせられないのならやめておけ。途中で力が尽きて落ちたらミルクがどれだけ強くても死ぬぞ。それよりミルクは魔法の才能がある。魔物を倒してレベルを上げるんだ。レベルが上がり最大MPが上がれば、魔法陣の起動に必要なMPも早く貯まる」
……あれ?
私のこっちの世界でのステータスを確認する。
――――――――――
ミルク
職業:算数大好きっ子
レベル:1
HP:15
MP:10
ちから:13
まもり:19
素早さ:12
運の良さ:1
装備
・水野ライフル
・魔術師の杖(紅)
・戦う魔術師ローブ
・成長のリボン
・成長の指輪
とくぎ
・-
――――――――――
やっぱり、レベルが全然上がっていない。
昨日、結構魔物を倒したよね?
ゲームは小学生の頃、青木の家で泰良と三人でちょっと遊んだ程度だけど、あれだけ強い魔物を倒したんだから、レベルがいっぱい上がっていてもおかしくない。
チュートリアルだから経験値が少ないのかな?
「クエンドさん。レベルって魔物を倒しただけでは上がらないんですか?」
「レベルを上げるには十分経験を積んだ後にレベル神に祈りを捧げる必要がある。拠点に簡易だが祭壇を作った。そこで祈ればいいだろう」
えっと、つまりこの世界では魔物を倒して経験値を貯めるだけではレベルが上がらないのか。
拠点に戻ると、昨日は気付かなかったが小さな祠のようなものがあった。
これが祭壇なのだろう。
どうやって祈りを捧げたらいいかわからないけれど、とりあえず手を合わす。
すると、光の玉が降り注いできた。
合計十六個の玉だ。
その光は私の中に入ってくる。
「お前、どれだけ経験値を貯めてたんだ?」
クエンドさんが呆れるように言った。
昨日の分しか貯めてない。
ステータスを確認する。
――――――――――
ミルク
職業:算数大好きっ子
レベル:17
HP:125
MP:120
ちから:98
まもり:125
素早さ:81
運の良さ:2
装備
・水野ライフル
・魔術師の杖(紅)
・戦う魔術師ローブ
・成長のリボン
・成長の指輪
とくぎ
・-
――――――――――
MPが110も上がっていた。
元のステータスを含めても1000ちょっと。
転移魔法陣を起動させるには全然MPが足りない。
とりあえず、魔法陣に魔力を注いで――
「さて、ミルク。お前の仕事を伝える。ついてこい」
クエンドさんは拠点から近い場所に連れていく。
「この辺りは比較的弱い魔物が出る」
とクエンドさんが言うと、ダンジョン一階層でおなじみのスライムが現れた。
クエンドさんが簡単にスライムを斬る。
すると、死んだスライムの横に魔石やDコインでもなく、ましてやスライム酒でもなく、なんか青い土の塊ようなものが落ちていた。
「これはスライム粘土だ。ミルクはスライムが落とすスライム粘土を10個集めて持って帰れ。それが今日のお前の仕事だ。スライム粘土は設備の補強に使えるからな。残った時間は自由にして構わないが、ここと拠点から離れた場所に行くのは禁止だ。お前の強さは知っているが、だからこそ死なれたら困るからな」
と言ってクエンドさんは自分の仕事に向かった。
彼が見えなくなると、スライムがわらわらと現れる。
それ以外の魔物はいない。
きっとこれが本当の意味で戦闘のチュートリアルなのだろう。
昨日私が倒した魔物は、実は負けイベントで、クエンドさんが助けに入って代わりに倒してくれていたんだな。
スライムを10匹倒してスライム粘土を十個集めた私は、とりあえず森の中を歩いて回った。
強さは、一階層から十五階層くらいの敵だった。
俺TUEEEモードじゃなかったら、たぶんスライム以外の魔物とは戦えなかっただろう。
とりあえず倒した魔物とドロップアイテムは全部アイテムバッグの中に入れて、川に行く。
なんかボスっぽい魔物がいたけれど、やっぱり十八階層くらいの敵で、ライフル銃一発で倒した。
川の上流に行くと、小さな泉があった。
こっそり水浴びをする……私が水浴びした水が川に流れていき、誰かが汲んで飲み水に変わるかもしれないって言われても、やっぱり水浴びをしないと辛いよ。
水浴びをしてからは、薬魔法で作った化粧水で顔を洗い、拠点に帰還。
祭壇で祈りを捧げたところレベル22まで増えた。
でも、MPが思っているより伸びない。
スライム粘土をクエンドさんに渡して、魔法陣に魔力を注ぎ、もう食べたくないと思っていた蛇肉と木の実を食べて寝る。
泰良には愚痴を聞いてもらった。
空の上だと伝えたら、だったら飛空艇を探すか、飛竜を仲間にするかと考えてくれているようだ。
そう簡単に空を飛ぶ手段って見つかるものなのかな?
泰良と話ができるのはいいけれど、そろそろ泰良に会いたいな。
異世界召喚風の世界のはずなのに、がっつりサバイバルをしているのはどういうことなんだろうと文句を言いたい。
とりあえず、アドバイザーの青木には絶対に文句を言う。
そう決意した翌日――胸元にカードがあった。
「まただ……なんだろ、これ?」
カードを確認する。
【1】【2】【3】【-】【+】【宝箱の数】【最大MP】【空腹度(%)】【すばやさ】
数字にプラスマイナスに文字。
もしかして――
私は【最大MP】のカードと【+】のカード、そして【3】のカードを手に持ち、言う。
「最大MP+3」
すると、三枚のカードが私の周りをくるくると回って、そして消えた。
ステータスを確認すると、最大MPが3増えていた。
わかった、これが算数大好きっ子の力なんだ。
きっと、カードを三枚使うことで、その数式通りの現象を引き起こすことができるんだ。
ということは――
と私はもう一枚のカードを見る。
【転移用魔法陣の起動に必要なMP(百万の位)】
このカードを使えば、転移用の魔法陣を起動させることができるんじゃない?