作品タイトル不明
アイデア募集
「で、何の用事だ?」
この日、俺が家で寛いでいたらダンプルがやってきた。
突然現れたのではない。
ちゃんと玄関で呼び鈴を鳴らして、さらに言えば菓子折りを持って現れた。
虎屋の一口羊羹24本入りだ。
母さんが「夜の梅」が大好物なのを知っていてのチョイスだろうか?
「いきなり用事を聞くのかい? お茶でも出してくれたらありがたいんだが」
「歓迎してくれると思ってたのかよ」
確かに、エルフの世界で俺はダンプルに救われた。
ダンプルがいなかったら、エルフの世界の活動が止まると同時に動けなくなっていた。
しかし、それはエルフの世界のダンプルであり、地球のダンプルではない。
こいつのせいで、何人の人間が死んだと思っている?
万博公園ダンジョンで一人死に、石舞台ダンジョンで大勢死に、そして世界同時の黒のダンジョン攻略では姫の兄や姉たちのグループが一部壊滅している。
いまは学園の理事長とかしているらしいが、なんで世間はこいつを許しているのかわからない。
ネット上では驚くほどにダンプルを叩く声が聞こえないから、情報規制でもかかっているのかもしれない。
表現の自由はどこにいった?
「ちょっと君に聞きたいことがあってね」
「……あぁ、そうか」
なにしろ、俺はこの世界の勇者らしい。
そして、エルフの世界に旅立つことができた。
ダンプルもいろいろと聞きたいだろう。
だが、何の見返りも無しに教えるつもりはない。
条件として、ダンプルが持っている情報を得る。
リソース? そんなの知ったことか。
こいつが教えないなら俺も教えない。
「いいか、ダンプル。俺は――」
「文化祭の出し物について相談があるんだよ」
「――簡単に情報を出したりは……ん? ブンカサイ?」
何かの隠語か?
それとも、俺を揶揄っているのか?
「ほら、僕はダンジョン学園の理事長だろう? それで、文化祭を盛大に盛り上げようと思っているんだが、何分、探索科四人、生産科二人の生徒合計六人しかいない学園だ。出店をするにしてもせいぜい二店舗が限界。だったら、今年は僕が出張ろうかと思ってね」
「俺が知るか。それならお前のところの生徒と相談しろよ!」
「いやぁ、僕はこれでも生徒から尊敬されているんだ。その威厳を保つためにも、ここはドカンと目新しい企画を立てて生徒の自慢の理事長先生でいたいのだよ」
「だったらキングさんに相談したらどうだ? お前ら仲がいいだろ」
「ははは、そんなことしたらまた殺されるよ。それに、キングの担当は僕の分身であって、その分身の指揮権はないから無理だよ」
はぁ、文化祭ねぇ。
「ダンジョン学園の文化祭なんだから、ダンジョン体験でいいんじゃないか? 死なないダンジョンを体験してみたい人間ならいくらでもいるだろ?」
「はぁ…………」
ダンプルが深いため息を吐いた。
なんだよ?
「ダンジョン学園では、毎週土曜日と日曜日、抽選で若干名だけど受け入れをしているんだよ? 全然目新しい企画ではないよ」
「そんなの知らねぇよ」
EPO法人の関係者は抽選とか関係なくダンジョン学園を利用できるからな。
「第一、文化祭は何百人、何千人も来るんだよ? そんなに受け入れられないよ」
「それは入り口を増やせば対処できるんじゃないか? 別に入り口は一つじゃなくてもいいんだろ?」
「よく知ってるね」
「エルフの首都ではそうだった」
「女王様に聞いたのか」
俺がエルフの世界に行ってきたんだが――ダンプルは知らないのか?
エルフの世界に……ん?
それって――
「なぁ、ダンプル。世界の記憶で異世界を再現してくれたことがあったよな? あれは面白かったんだが――」
「文化祭で異世界を再現しろって? 無理に決まってるだろ。エネルギーが全然足りない」
「いや、本当の異世界である必要はない。異世界風の世界を再現できないか? 仮想異世界召喚みたいなのはできないか?」
「仮想異世界召喚――なるほど、それは少し面白そうだ。日本では異世界召喚が流行っていると聞くからね……うん。NPCの設定とかはいろいろと面倒だが、データさえあれば可能か。異世界召喚についていろいろと聞きたいな。僕の感性だと古事記でイザナミが黄泉比良坂を通って異界に行く話になってしまいかねないからね」
「それは求めているものと絶対に違うな……俺は別にそっちの専門家ってわけじゃないんだよな……ちょっと待ってくれ」
俺はスマホを取り出すと、電話を掛ける。
呼び出すこと数回、
『壱野。どうした?』
「いや、青木って異世界系の小説とか結構読んでるって言ってたよな? やっぱりそういうの詳しいの?」
『もちろんだ! なんだ、語りたいの!? いいぜ、語ろう!』
「あ、いや、直接話が聞きたくてな。あと、知り合いを連れて行ってもいいか?」
『なんだ、壱野がダチ紹介って珍しいな。いいぞ、待ってるよ』
よし、これでいいな。
ある程度話を聞いたら、あとは青木に丸投げだ。
「お前、なんてもんを連れて来てるんだよっ!」