作品タイトル不明
ダンジョン学園(その3)
ダンジョン学園ダンジョン……なんかバ〇ク川崎バイクみたいな名前になってるが――の五階層に到着。
さすがにここまで来ると無茶してる他校の生徒もいない。
もしかしたら、俺たちや青木のようにダンジョンに潜った経験のある探索者がいるかもしれないって思ったが、考えてみれば真面目に通常のダンジョンでレベルを上げた探索者の方が、レベルを上げる苦労を知っているため、レベル1に戻ってしまうリスクのある深い階層まで来ようとは思わないだろう。
ということで、姫が配信を開始。
今日の始まりの挨拶はアヤメが担当することになった。
「おはようございます。日曜日の朝から配信を見ていただきありがとうございます。東アヤメです」
アヤメが挨拶をすると、早速コメントが届く。
〔来た待ってた!〕
〔ガンマちゃんの声癒される〕
〔今日はどこのダンジョンだろ?〕
「はい。今日の配信は巷で話題のダンジョン学園ダンジョンに特別招待枠で参加させていただいています」
〔ダンジョン学園っ!? いまニュースで見てた〕
〔配信で使われるの初めて?〕
〔ダンジョン局の公式配信で前に少しやってたが、魔物と戦ってるところとかは映ってなかった〕
〔海外の学園ダンジョンは少し前に既に配信されてる〕
「コメントありがとうございます。はい、そのダンジョン学園のダンジョンですね。まずはその説明から致しますが、その前に今日はこの方に来ていただきました」
とここで閑さんが登場。
「おはよう、モルモット諸君! 私が稀代の天才科学者月見里閑だ! 閑ちゃんと呼んでくれたまえ」
視聴者のことをモルモットって呼んでるんだ。
自分で稀代の天才科学者とか言っちゃうんだ。
そして、やっぱり閑ちゃんって呼んで欲しいんだ。
こんな風に言われてみんなどう思うんだ?
〔しずかちゃん来たぁぁぁぁっ! コラボ感激!〕
〔しずかチャンねる毎月見てます!〕
〔チャンネル登録してないけどファンです〕
〔インパクト凄い人だなぁ〕
〔モルモット呼ばわりされてゾクゾク感じるものがある。なんだ、この感情は……〕
〔↑風邪だから病院行け〕
〔病院:手遅れです〕
と思ったら思いのほか大好評だった。
閑さんを知ってる人も知らない人も好意的に取っている気がする。
あ、そうか。
ダンジョン配信者って昔から変わり者が多いから、逆に彼女くらいのインパクトある発言は普通なのか。
「今日は解説要員として参加させてもらう。では、まずダンジョン学園ダンジョンと通常ダンジョンの違いについて移動しながら説明をしよう」
と閑さんは慣れた様子で非常にわかりやすく説明をした。
もう、彼女の台詞を一言一句抜かすことなく紙に書きとってこのダンジョンの入り口に貼っておきたいくらいわかりやすい。
お陰で俺たちは説明をすることがなく、魔物退治に専念できる。
「レッドバイパーか」
現れたのは赤い蛇の魔物だ。
蛇型の魔物の中では弱い部類らしい。
いつもなら無視して突破してもいいんだけど、配信なのでとりあえず倒しておくことに。
「私が行くわね!」
と姫が大地を蹴った。
レッドバイパーは尻尾を振って攻撃してくるが、姫は空中を蹴って軌道を変えてそれを躱すとレッドバイパーの首にクナイを突き刺した。
と思ったら首がぽとりと落ちて、蛇の鱗と魔石が落ちた。
巧遅拙速のお陰で攻撃力が上がっているところを見られると思ったのだが、レッドバイパー相手なら試金石にもならないか。
〔アルファちゃん、いま空中で動き変わらなかった?〕
〔速すぎてそんなのわからない〕
〔気付いたら蛇の首が落ちているように見えた〕
本来なら騒ぎになるはずの姫の天翔も、速すぎて見間違い扱いされてるな。
と閑さんが落ちている魔石を拾う。
「皆も見て欲しいのだが、ダンジョン学園ダンジョンに限らず、ダンプルの生み出すダンジョンはDコインではなく魔石が落ちる。ベータくん……それは何故だかわかるかね?」
と閑さんが急に俺に話題を振った。
ちの太くんではなくベータくんと呼んでくれているのは、俺の身バレ防止かな?
壱野や泰良のような名前はベータと自動変換されるように設定されているが、ちの太くんだと多分変換されないだろうから。
それで、問題の答え――黒のダンジョンにDコインが落ちない理由?
「えっと……ダンプルが黒のダンジョンを作ったときは政府と取り引きをしていなかったから、Dコインを持ってこられても換金する手段がなかったから……でしょうか?」
「確かにダンプルは現金は持っていなかった。しかし、それならば普通のダンポンくんのところで換金すればいいだけの話だろ?」
そう言われてみればその通りだ。
「そもそも、Dコインとは一体何か? と言う話になるのだが」
「Dコインは確か異世界からの力の結晶みたいなものでしたっけ? Dimension Coinの略だと聞いたことがあります」
「素晴らしい。これはあまり知られていないことなのだが、ベータ君が知っているとは思わなかった。」
リスナーからも〔知らなかった〕〔ベータさんって実は秀才?〕などと良い評価を貰う。
ミコトから教えてもらっていてよかった。
「ここからは私の推測なのだが、ダンポンくんとダンプルくんのダンジョンはそれぞれエネルギーを送ってきた世界が異なるのではないか? 私はそう思っている。実際、黒のダンジョンの魔石と通常のダンジョンの魔石のエネルギーの測定結果に若干の違いが見つかった。詳しく語ると――」
閑さんがすらすらと語り出す。
わかりやすい言葉を選んでくれていると思うのだが、専門的な分野になると理解できない。
〔学生時代に戻った気分〕
〔ZZZ……はっ、おれはしょうきにもどった〕
〔非常に興味深い(理解は諦めた)〕
授業に慣れていないリスナーも寝始めている。
「閑さん、そろそろ行きましょうか」
「そうだな」
と再び移動を開始。
「魔物の数が多いな」
閑さんが言う。
俺たちは普段PDの中で、魔物の数を10倍にして戦っているのでむしろ少ない気がしていたが、通常のダンジョンに比べると多いのか。
「出来たばかりのダンジョンだからですか?」
「いや、黒のダンジョンは魔物が多い傾向にある。ダンジョン学園のダンジョンでも同様の変化があるのだろう。しかし、この量は面倒だな」
「そうよね――毎回魔石を落とすから拾うのが大変」
「それを言うなら持って歩くのも大変だぞ」
と姫の分身が魔石を拾って俺のリュックの中に入れた。
魔石の量も確かに凄いことになってきている。
魔石一個一個は大したことがないのだが、それでも拳半分くらいの大きさの石だ。
数が増えれば重くなるのは必然。
かといって、落ちているものを拾わないのもなぁ。
15階層まで一気に潜ったが、リュックの中は魔石でいっぱいだ。
〔ベータのアイテムボックスにも入りきらない量の魔石〕
〔ほとんど黒の魔石だったけどな〕
〔こんだけ魔石が出るのなら、そりゃ政府も買い取り価格引き下げるわ〕
と魔石を見てリスナーが言う。
確かに凄い量だよな。
〔魔石の量が凄いのはベータさんだから。アルファさんが倒していた魔物のほとんどは魔石を落としてなかった〕
〔魔石はDコインと違って100%ドロップじゃなさそう〕
〔たぶん普通の探索者だったら稼げる額はそれよりだいぶ下になると思う〕
〔だが、安全だ〕
〔魔石だったら換金額ランキングも上がらないし、トップランカーの地位が欲しいなら行く価値はないな〕
〔価値あるだろ! 安全に金になる!〕
〔金にならないって言ってたじゃん〕
とリスナーもいろいろと言ってる。
てか魔石がこんなに集まったのは俺のせいなのか。
「そうだ、入りきらないなら小さくすればいいんだ」
「小さくするって――あぁ、あれを使うのね」
「「あれ?」」
姫は知っているが、ミルクとアヤメは知らないんだよな。
インベントリからそれを取り出した。
「これは――」
と説明をしようとすると、
「まて、ベータくん」
と閑さんは待ったをかけ、魔石融合機を手に取った。
何か問題が?
「たららたったたーん! 魔石融合機ぃ」
と閑さんは魔石融合機を掲げた。
ていうか物真似、全然似てないな。
「何してるんですか?」
「私の配信ちゃんねるでは、便利な魔道具を紹介するとき、このように紹介するお約束なのだ」
「……それをするのはド〇えもんであって、閑さんの役目じゃないでしょ」
と俺は目を半分閉じて小さな声でツッコミを入れた。