作品タイトル不明
ダンジョン学園(その2)
「じゃあ行くか」
扉を開けてダンジョンの中に入る。
おぉ、高校生たちがスライムを探して走り回ってるな。
俺たちも高校生だけど。
「あの、もしかしてチーム救世主さんたちですかっ!?」
と近くにいた女子校生が俺たちに声をかけてきた。
いきなりバレた?
って、まぁ、そりゃバレるよな。
日本広しと言えど、ロリ金髪ツインテール忍者は姫くらいしかいない。
「ええ、そうよ」
姫が堂々と言うと、周囲の高校生が集まってきた。
「アルファさん! 分身の術見せてください!」
「かまわないわ」
と言うと、姫が分身を一体作ったら、「本物だ!」とさらに集まって来る。
一気に騒ぎになった。
「アバターよりカワイイ! 本当に俺たちと年齢変わらないんだ」
「どこの高校に行ってるんですか?」
「どうやったらそんなに強くなれるんですか!?」
と質問が次々に飛び交って来る。
「プライバシーについてはノーコメントだけど、私は大学生よ。それと、強くなる方法は努力と才能と運ね」
「「「「運」」」」
とみんなが俺を見た。
「ベータさん、次の競馬、どの馬が来るか予想してくれませんか?」
「ジャンケンしてくれませんか!?」
と要望が――
「ギャンブルについてはお断りで――ジャンケン……じゃあ一度だけ。最初はグー、ジャンケンポン!」
と俺がグーを出して十人くらいがチョキを出して俺の一人勝ちだった。
全員グルじゃないかってくらいの偶然だ。
それだけでみんな大騒ぎだ。
姫やアヤメにも次々に質問や要望が飛び交う。
「じゃあ私たちはこれから深い階層に行って配信を始めるから。配信はアーカイブに保存しているからみんなはダンジョン探索終わったら是非見てね」
と言って移動を開始。
疲れた。
「まるで芸能人になった気分だな」
「認知度で言えば売れてない芸人や歌手より遥かに上だもの。三人とも自分のサインを考えておきなさいよ」
「ギリシャ文字でベータって書くだけじゃダメか?」
「さすがにそれだけだと貰っても納得しないでしょうね。自分で考えるのが面倒なら外注できるわよ。」
三階層に移動すると人の数も減った。
ただ、三階層でも人がいるんだな。
男が一人、一角ウサギと戦っているが、殴っても一撃で倒せずに反撃を受けている。
と腹を角で突かれていた。
「助けはいるか?」
「必要ない!」
と彼は腹を刺されながら一角ウサギを殴り殺した。
そして彼は体力をチェックする。
残り体力が2しかなかった。
おいおい、現実だったら瀕死の重傷で動けないぞ。
「回復魔法は必要?」
「あんた、魔法が使えるのか? 金は払えないが頼めるか?」
「うん」
ミルクが薬魔法でポーション水を放つ。
体力の数値が回復した。
魔法を使ったあと、ミルクが言う。
「あなたのレベルだと3階層はまだ早いんじゃない?」
「回復してもらってなんだが、余計な忠告だ。ダメージ計算はしっかりできている」
と言って、彼は別の魔物を探すように去っていった。
身代わりの腕輪を着けていたら命の危険がないだけではなく、痛みも感じない。
レベルにステータスにスキル。
確かにゲームのような設定だ。
ある程度ゲームのように楽しむのは俺もアリだと思っている。
でも――
「危ないわね」
姫が目を細めて言う。
俺も同意だ。
あんな無茶な戦い方はいつか破綻する。
だが、俺は破綻すればそれでいいと思っている。
いい教訓になるだろう。
問題は破綻しなかった場合だ。
「三年間、あんな風にダンジョンに挑み続けたらレベル100に到達すると思うか?」
「ええ、到達するでしょうね。あの子の言う通り効率はいいもの」
スライム一匹の経験値は1。一角ウサギの経験値は12。
そして、自分より格上の相手を倒した場合、その経験値はさらに増えるという。
そんな戦い方を破綻せずに続けられたらレベル100に到達するだろう。
通常のダンジョンだと、安全マージンのお陰でこのような無茶な戦いはできない。
むしろ、安全に戦うことを当たり前だと思い、21階層以降でも自ずと無茶はしなくなる。
だが、さっきの彼みたいに無茶な戦いを続けたダンジョン学園の生徒がレベル100になり、通常のダンジョンに潜ればどうなるか?
それこそ21階層以降も無茶を続ける。
破綻するまで。
だが、ダンジョン学園と違い、普通のダンジョンの破綻とは良くて大怪我、最悪は死である。
「ダンプルはダンジョンは生死を掛けた戦いの場所だって言ってた。このダンジョンはダンプルの理想とは正反対だって思っていたが、ダンプルのしようとしていることって――」
「ダンジョンに入る心構えを説くのは我々教師の仕事だろうな」
閑さんが言った。
もしかしたら学校の授業で一番大切なのって道徳の授業なのかもしれないな。
「って、閑さん。なんで普通についてきてるんですか?」
「なに、私もトップランクの探索者だからな。下層を目指しているだけだよ」
さては、俺たちに便乗してるな。
地図は無いが、俺たちにはアヤメの 風の道標(ウインドポスト) があるから迷うことがないからな。
と思っていたら、ミルクが俺の袖を掴み、こそこそと話しかける。
「(泰良、大丈夫なの? 信用ならないって言ってたでしょ?)」
「(悪い。俺の勘違いで、なんか普通にいい先生だった)」
それにアヤメと姫も加わった。
「(でも、壱野さんのことモルモットって言ってましたよね?)」
「(実験動物って意味じゃなくて、子猫ちゃんとか、ベイビーとか、カワイイ生徒って意味の言葉らしいぞ)」
「(なにそれ? 紛らわしいにもほどがあるじゃない)」
本当にそう思う。
そして、閑さんも一緒についてくることになった。
配信をすることになっているけれど、閑さんは問題ないらしい。
彼女も、ダンジョン配信者で「教えて閑ちゃんネル」という、ダンジョン内のあれこれを科学者の目線から解説する動画をアップしていて、登録者数も15万人ほどいるのだとか。
絶対に俺たちと視聴者の層が異なるだろうけれど。
ということで、急遽俺たちチーム救世主の配信は、閑さんとコラボしてスタートすることになった。