軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

淡路島ダンジョン(その1)

EPO法人には税金の優遇措置や、正会員用ダンジョンの優先入場など様々な特典があるが、それは義務を果たしてこそ得られるものだ。

その義務というのが政府やダンジョン局からの依頼である。

天下無双は生駒山上遊園地ダンジョンの破壊、捕獲玉の開発販売、そして打ち出の小槌の貸し出しなどの実績もある。そのため、かなり大目に見てもらっているが、本来は結構面倒な仕事が多い。

そして、普段は大目に見てもらっているがそういう仕事が全く割り振られないというわけではない。

時には依頼を受けないといけないことがある。

「本当はダンジョン局は泰良にもっと依頼を回したいみたいなのよね」

姫がモニターを見ながら言う。

「そうなのか?」

「ええ、依頼の大半はダンジョン内のドロップアイテムだもの。特に一年以上放置されている塩漬け依頼とかね。やってみる? たとえば淡路島ダンジョンの玉ねぎ坊主を退治して黄金の玉ねぎを手に入れるとか、泰良だったら直ぐに終わりそうよ」

玉ねぎ坊主は淡路島ダンジョンの2階層に出てくる魔物で、ドロップするアイテムが二種類ある。

一つは玉ねぎで、最低幸運値10でドロップ率20%の普通の玉ねぎ。俺なら100%落とすだろう。

もう一つが黄金の玉ねぎ、こちらは最低幸運値100、ドロップ率0.05%とスライム酒以上に手に入らない。最後に淡路島ダンジョンでドロップが確認されたのが8年前だと言うのだから凄い確率だ。

しかし、俺の幸運値はもう2000を超えてるので、10%くらいの確率で手に入りそうな気がする。

「淡路島ダンジョンって洲本の方だっけ? そんな依頼があるなら前に海水浴に行ったときについでに行ったらよかったな」

「仕方ないでしょ、この依頼が届いたの先週なんだから」

洲本市は淡路島の南東にある市だ。

車だと混雑していなければ片道二時間くらいかな?

「なんならヘリを使えば? それなら片道30分くらいでしょ? 報酬を考えればそのくらいの経費大したことないわ」

姫は自家用ヘリを持っていて、いつでも使えるようにしているし、ヘリポートの使用料を払えばこのビルの屋上に止めることもできる。

だけど、洲本にヘリを停めるところってどこにあるんだ?

「淡路島のホテルよ。ここね。うちの傘下じゃないけど提携はしているからヘリポートくらい使わせてくれるわ」

淡路島のホテルと聞いて、俺は思わずその名前を口遊んでしまった。

多分関西の人間以外にはわからないと思うが、関西人はこのホテルの名前を聞くとかならずリズムをつけずにはいられないのだ。

「あ、それと配信用クリスタルで録画だけしておいて」

「ライブ配信じゃなくていいのか?」

「今日は明石を休ませてるから編集できる人材がいないのよ。こちらが強制的に休ませないと全然休まないのよね」

と姫はまるでダメな子を嗜めるような口調で言う。

仕事が出来過ぎるのも問題なんだな。

※ ※ ※

ということで、本来ならば二時間弱かかる道のりをこのオフィスビルの屋上から30分、待ち時間合わせても一時間弱で洲本市にやってきた俺。

ヘリ上空から眼下に広がる大阪湾の眺めはとても綺麗だった。

そして洲本のホテルに到着し、そのまま車で淡路島ダンジョンへ。

淡路島ダンジョンは梅田ダンジョンほどの混雑はなかった。

人の数も少なめな気がする。

ネギ坊主が出るのは2階層。レベル10から20の人が入る階層で、いつもなら10人くらいで一緒に入るのだが、これから入るグループはいまのところ俺を含めて2人しかいないらしい。

これも俺の幸運のお陰だろうな――と思って待合室に行く。

そこにいたのは――

「え? 壱野?」

「青木っ!?」

まさかのクラスメートの青木だった。

響さんも一緒に――っていない。

どうやら青木一人のようだ。

だったら、こいつがここにいる目的は――

「お前、俺のこと尾行していたのか? ストーカーとかマジキモいぞ」

「いや、後から来たお前が言うなよ。親父に連れてこられたんだ」

「その親父さんは?」

「6階層に行って、玉ねぎの剣士と戦ってる。オニオンソードとか使ってきそうな敵だよな」

悪い、元ネタわからん。

玉ねぎの剣士ってなんだ?

「壱野は何で来たんだ?」

「玉ねぎ取りに来た」

「そりゃいいな。淡路島ダンジョンの玉ねぎ坊主の玉ねぎは、他のダンジョンの玉ねぎ坊主の玉ねぎより糖度が高いらしいぞ」

「それってマジか?」

地域の特産によってドロップアイテムが変わるって聞いたことがないが。

まぁ、青木が言っているんだ。

信じる価値はないな。

「そうだ、一緒に回ろうぜ」

「配信用の録画をするんだが別にいいか?」

「え? お前も配信やってるの? チャンネル名は?」

「いや、個人の配信はまだやってないんだ」

「撮りためするタイプか? まぁ、俺は問題ないぞ。有名ダンジョン配信者の青木とコラボって企画でアップしてもいいくらいだ。響さんには後で許可取りしておくよ」

青木は笑って言った。

まぁ、青木と一緒のところなら録画してもアップされることはないだろうな。