軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

変わりゆく何か

ソファーから立ち上ったロランを見ながらジゼルはうっすらと額に汗をかいた。

早く行けということだろうか?

もう一度ロランに頭を下げ部屋を出ようとした時、ロランに腕を掴まれベットに押し倒された。

驚くジゼルに目を細め、ロランはジゼルのブラウスに手をかけその服を素早く脱がした。ジゼルを見つめるロランの瞳は捕食者の輝きがある。

「ロ、ロラン様?!あ、あの、洋服が汚れていて、すぐに着替えますから、、ご、ご不快で、」

ジゼルは慌ててロランに言った。この汚れた洋服を見たく無いと我慢できず脱がし始めたのだと思ったのだ。

だがロランはそのままジゼルの結った髪をほどき自らのシャツも脱ぎ始めた。

ロランの鍛えられた体が露わになった時、ジゼルはようやく理解した。

四度目の契り。

ロランはそのままジゼルを抱いた。一度果ててもまたジゼルを抱いた。言葉では表せない感情をぶつけるように、ロランは何度もジゼルを求めた。

ジゼルは訳がわからぬままロランの求めに応じていた。けれどそれが嫌ではなく何度も求められることに深い幸せを感じていた。そんな濃厚な時間を過ごすうちにジゼルは疲れ果ていつの間にか眠ってしまった。

……温かい、このままずっと眠っていたい。

うっすらと目を開けると目の前にロランがいた。一瞬自分がどこにいるのか理解できず眠っているロランを見つめた。

「あ!!」

我に返ったジゼルはロランの腕の中で眠っていたことに気がついた。

「うそ……私……ロラン様、ごめんなさい」

血の気が引く、大変な失態を犯した。

ロラン様の腕、いえ、胸の中で眠ってしまうなんて……。

その声に目を覚まし、優しい眼差しでジゼルを見つめるロランを見て今度は顔が赤くなる。

「なに?」

ロランは不思議そうな顔をしジゼルに聞いた。その表情は柔らかく、裸のロランを見てジゼルは昨夜の契りを思い出し恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い言った。

「私が眠ってしまい……ロラン様の腕の中で……。朝まで、ど、どうしよう、申し訳ありません」

ロランに言い訳を言いながら自分も裸だと気がついたジゼルは恥ずかしさに息が止まりそうになった。髪で上半身を隠しながら体の横にあったシーツを引っ張り体を隠す。

もう、昨日から何が何だかわからないけど、恥ずかしくて申し訳なくてどうしよう!!

ロランはその様子を見つめながら徐にジゼルの両手を握り、額の傷跡を覗き込んだ。

キスができるほどの距離。ジゼルはロランの行動に戸惑い、どうして良いのかわからず耳まで赤くなる。これ以上赤くなる場所はない。羞恥心とトキメキと喜びで頭がおかしくなりそうだ。

「傷跡があるな」

ロランは言った。ジゼルはその言葉を聞き胸が苦しくなる。以前なら嘘の優しさだと傷ついた。でも今はその言葉が嘘であっても心からの笑顔で受け止められるようになった。目的を持って生きることを始めたジゼルは目的のためにそうせざるを得ないロランを理解したからだ。

「ロラン様、こんな傷平気です。心配してくださりありがとうございます」

そう言いながらロランから視線を逸らす。

ロラン様の優しさが本当ならよかったのに、そう思う自分も否定できない。

今向けられている優しさは本当か嘘か。

本当ならば、シャルロットとの関係を精算し、木の上で寝る必要などないと言ってくれるはずだ。

いつだって現実は思うようにならない。

それに。

昨日のロランとの話し合いは中途半端に終わってしまった。ジゼルの言葉に不満な表情を浮かべたロラン。だが突然始まった四度目の契り。ロランは一体何を考えているのかジゼルには見当もつかない。

「ゴーン、ゴーン」

鐘の音が聞こえた。

あ!

ジゼルは我に返った。

うっかりしていた。ロラン様の腕の中で気持ちよく眠っていたばかりに、ロラン様の出勤の時間が間近になっている。

「あ、すみません、ロラン様、今日お出かけは?」

ジゼルは慌ててロランに聞いた。

ロランは片手で髪をかき上げながらジゼルに答えた。

「二週間出かけない。休みなしで働いたから」

ロランはそう言ってジゼルに微笑んだ。

ジゼルはロランの微笑みを見て泣きそうになった。

嘘でもこんな微笑みを見せてもらえる今この瞬間に感謝したい。

あの腕に、あの胸に抱かれ、あの長い髪が肌をくすぐり何度も求めてもらえた記憶を鮮明に思い出す。

見つめられるその視線から逃げないと二度と離れたくなくなりそう。

ジゼルは視線を下げロランに言った。

「……それは、本当に、お疲れ様でした。すぐに朝食を用意いたしますからお待ちくださいませ」

ジゼルは火照った顔を押さえながら慌ててベットから出ようとした。これ以上ここにいたら心臓が止まってしまうかもしれない。それに、ここから去れなくなってしまいそう。

「待て、」

ロランは言った。ジゼルはロランの言葉に動きを止めた。

何を言われるのだろう?見当もつかない。

「はい」

ジゼルは緊張を隠すようにゆっくりとロランの方に振り向いた。

ロランは手を伸ばしジゼルの髪に触れた。その瞬間体に閃光が走ったようにビクッと反応してしまった。

怖いわけではない、その優しく触れるロランの指先が昨夜の契りを思い出させたからだ。

「……埃がついていた」

「あ、ありがとうございます……直々に取って下さって」

ジゼルは何も考えられなくなった。平常心でいられないほどの喜びと幸せと恥ずかしさでロランの顔が見られなくなった。ジゼルはロランと目を合わさないように俯きながら部屋を出て行った。

ときめきで死にそう。