軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ジョルジュ・ジュベール

壮絶なお茶会が終わった翌朝ロランはベルトランの執務室を訪ねた。

別邸を出る時にジゼルはまだ眠っていた。疲れているだろうと音を立てぬよう部屋を出て、待機していたエミリーにジゼルの専属メイドになるよう伝えた。昨夜の様子を見て、ジゼルを任せられると感じたからだ。

そして、朝から執事のヤニックが新聞を持って大騒ぎしていた。

その新聞には『ロラン・ジュベール、妻のために王家に抗議か!?』などと書かれている。

それを見たロランは鼻で笑う。

「抗議? 宣戦布告だ」

その言葉にヤニックは青ざめていたが、それを横目にロランは笑って新聞を魔法で消し、ジゼルには何一つ知らせないように、と念を押し屋敷を後にした。

ジュベール公爵家に移動したロランはベルトランの執務室をノックする。

だが返事がない。近くにいたメイドに尋ねると、エントランスに向かったと聞き、ロランもエントランスに向かった。

ジュベール公爵家のエントランスには古い古木がある。ベルトランは時間があるとその古木の前のベンチに腰をかけ時間を過ごす。

ロランも幼い頃からベルトランと共に眺めた不思議な古木に愛着を持っている。

屋敷の通路を出てエントランスに向かうと、古木の前に佇むベルトランとモーリスの姿が見えた。

「お祖父様、おはようございます。モーリス、おはよう」

ロランは二人に挨拶をする。古木を見つめていたベルトランはロランの声に振り返り笑顔を見せる。

モーリスもロランに頭を下げ、後ろに控えた。

ロランは改めて昨日のことをベルトランに謝った。

「お祖父様、大切なお茶会をあのような形にしてしまい申し訳ありませんでした」

ロランは唇を結びベルトランに頭を下げる。ベルトランは笑顔を見せロランの肩に手を置く。

「何を言う、さすがワシの孫だ。お前はそれでいい。ワシはいい加減この状況に嫌気が差しておったからな」

ロランは笑顔を浮かべ話すベルトランを見て、肩の荷が降りた。

ベルトラン主催のお茶会を滅茶苦茶にしてしまったことはロランも本望ではなかった。だがベルトランの表情は清々しいほど明るく、その笑顔は本物だ。

見ている場所が違う。そして器が違う。覇王のような風格のあるベルトランにロランはずっと憧れ尊敬の念を抱いている。

我が祖父ながらに人並外れた器を持つベルトランに、前々から思っていた疑問をぶつけた。

「お祖父様、お祖父様は一体どなたなのでしょうか? あ、このような質問理解できませんよね……」

ロランは息を吐き口を結ぶ。

自分が前世を思い出し、ベルトランにも同じような経験があるのではないかと思ったからだ。

ベルトランは明らかに人と違う。ジゼルに対する思いも違う。

ベルトランは目を細めロラン答える。

「ロラン、お前も思い出したのか?」

ロランはその言葉に目を見開いた。ベルトランはそうか、と言うように頷く。

「ロラン、このジュベール、いや、この王国を作ったのは私、ジョルジュ・ジュベール」

「!! 最高の大魔法使いと称される…… ジョルジュ……初代ジュベール公爵……」

ロランは愕然とする。

「ロラン、この世界はな、人間とドラゴンが互いに殺し合う世界だった。それを嘆いた女神メシエは人間とドラゴンを繋ぐ魔力のない娘を異世界から召喚した。そしてその娘が互いの架け橋となりこの世界を安定させる。これが大魔法使いと魔力のない娘の因習の始まりだ」

ロランはベルトランの言葉に息を呑む。初めて知る因習の起源。

ベルトランは言葉を続ける。

「私はその異世界の娘とドラゴンと共にこの世界に安寧をもたらした。お互いが共存できる平和な世界だ。だがな、それが終わると娘は異世界に帰ってしまった……」

ロランはその言葉に愕然とする。

ベルトランはロランの気持ちを察している。かつての自分を思い出すからだ。

「ロラン、私は、その娘を忘れることができず命をかけ異世界まで迎えにいった。だがな、目の前の、想像を絶する現実にどうすることもできなかった。そんな……選択を娘にさせた私は……娘を殺し命を絶った。そして……私たちの子、愛する人が産んだ我が息子アンジュだけこの世界に戻した」

「……アンジュ・ジュベール……二代目公爵」

ロランは息を呑む。ベルトランの表情は悲しみと苦しみが滲み出ている。

「本来ジュベールは王になるはずだった。だが、私は愛した娘を追うため、神官だったモーリスの甥に王の座を譲った。だが長い歴史の中で王家は争いが起き、今はその血が繋がっていない人間が王家となって随分経つ。彼らは世界を一つにまとめる能力がなく、この状況になった。だから私は王に刃を突きつけたのだ」

ベルトランは天井を見つめる。

「あとはロランが知っている通りだが、もうこの王国は限界だろう。そろそろ、ジュベールにこの国を返してもらわねばなるまい」

ロランは衝撃的な言葉に声が出ない。

だが、異世界の娘、元の世界に帰る、その言葉がロランの不安を煽る。

「お祖父様、ジゼルはこの世界の人間ではなく、異世界からの転生者……いずれ帰ってしまうのですか!?」

ロランの手は震え出す。ベルトランは青ざめた顔のロランを見て優しく微笑み言った。

「ロラン、安心しろ。女神メシエは娘に選ばせる。ここにいたいか、それとも帰りたいか」

「だから、だからお祖父様は……ジゼルを大切にしろとおっしゃったのですね?」

「ああ、そうだ。ロランはジゼルを愛するとわかっていたから。大魔法使いは聖女を愛するんだ。そしてジゼルを大切にしないと ジ(・) ゼ(・) ル(・) は(・) こ(・) の(・) 世(・) 界(・) か(・) ら(・) 出(・) て(・) 行(・) っ(・) て(・) し(・) ま(・) う(・) からな」

ロランはその言葉を聞き、不安が胸を覆った。