軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

メル、社交界デビュー!? その七

幻獣パーティーの件で話があるというので、アメリアとステラ、エスメラルダを連れてリヒテンベルガー侯爵家に呼び出された。

この前、蚤の市で買ったワンピースを着ようとしていたら、ステラが『これが可愛いかも?』と言いながら服の一式を持ってきてくれた。

それは、リヒテンベルガー家の養女になったさい、侯爵が用意してくれた余所行き用の服だ。

贅沢な品過ぎて、長い間クローゼットの中に吊るしておくだけの品となっていた。

袖や襟にレースが重ねられたブラウスに、黄色いリボン、深緑のスカート。外套は分厚いフエルト製の品だ。上品なシルエットで、着こなせるか不安だったのだ。

たしかに、ステラの言う通り、可愛い。けれど、似合うだろうか?

そんなことを考えていたら、アメリアが使用人のお姉さんを連れてきてくれた。身支度を手伝ってくれるらしい。

「いかがなさいますか?」

「じ、じゃあ、お願いします」

深々と頭を下げ、お手伝いしてもらうこととなった。

一時間半ほどで身支度が整う。

髪は三つ編みをティアラのように編み込んだ、ハーフアップにしてもらった。化粧も、薄くしている。

鏡を覗き込んだ先に映る私は、お嬢様みたいだった。

一応、アルブムも行くか聞いてみたが、クッションの上で寝転がりながら『アルブムチャン、幻獣ジャナイカラ、遠慮シテオクネ』と返された。

きっとアレだ。侯爵様がいるから、行きたくないのだろう。

そんなわけで、チーム幻獣だけで出かけることとなった。

そろそろ出発の時間だ。

アメリアに乗って移動しようと思っていたら、馬車が迎えに来てくれた。

馬車の中には、リーゼロッテがいた。

「メル、お待たせ」

「わっ、リーゼロッテ! まさか、迎えに来ていただけるとは」

「いいのよ。乗って」

「あ、はい」

アメリアとステラは、馬車のあとから付いて来てくれる。エスメラルダは私が持つ籠の中で優雅に寝そべっていた。

馬車に乗り、エスメラルダを床に置いたら『キュッ!』と怒られる。座席に置けと。

馬車が揺れた時、落下しそうで怖いんだけどな。まあ、いいか。

久々に見たリーゼロッテは、綺麗な大人の女性に変化していた。

紫色の髪は編み込んで、リボンで結ばれている。大人っぽい、濃紺のドレスがよく似合っていた。

そんなリーゼロッテは、私を見てにっこりと微笑んでくれた。

「メル、久しぶりね」

「ええ、本当に」

リーゼロッテは除隊届を提出し、正式にエノク第二遠征部隊から除隊した。

なんだか心の中に穴がぽっかりと開いたような、寂しさを感じている。

「リーゼロッテがいることが当たり前になっていて……なんだか、不思議な気持ちです」

「わたくしも。騎士でいた期間は短いのに、濃い毎日を過ごしていたわ」

リーゼロッテは、見聞を広げるいい経験になったという。

「今、貴族女性としての嗜みを叩き込まれているんだけれど、うんざりで」

「どんなことをしているのですか?」

「会話のマナーとか、刺繍とか、お茶会のお約束とか」

「大変そうですね」

「本当に」

リーゼロッテは日々、頑張っているようだ。

「そういえば、結婚相手の候補とかいるのですか?」

大貴族リヒテンベルガー侯爵家の令嬢となれば、引く手数多だろう。

しかも、伴侶となった男性は、もれなく爵位がついてくる。

基本、爵位は家督を継ぐ者しか名乗れない。

だが、リーゼロッテの夫となった場合、侯爵様が持っている他の爵位を得る特典も付いているのだ。

「侯爵様って、他にどんな爵位を持っているのですか?」

「ドレント伯爵、フェレストミラ子爵、アーランド男爵は……一代限りだったかしら?」

「すごいですね」

「昔、王宮勤めをしていた時に賜ったみたい」

今ではすっかり幻獣大好きおじさんとして有名な侯爵様だが、その昔は王宮勤めをしていて王都一の回復術師として名を馳せていたらしい。

話がズレてしまった。

「それで、婚約者候補は?」

「いないわ。というより、お父様がお断りをしているらしいの」

「ええ~……なんでですか?」

「財産や爵位に目が眩んでいそうな人を排除していたら、自然とそうなったのですって」

「はあ……」

なんというか、「うちの娘は嫁にやらん!」状態なのか。

「リーゼロッテはどんな人と結婚したいのですか?」

「わたくしは──そうね。趣味に寛容な御方、かしら?」

「へえ~、意外ですね。てっきり、同じように幻獣大好きな人かと思っていました」

「それは、ないわ」

「どうしてですか」

「幻獣は、たくさんいるでしょう?」

鷹獅子(グリフォン) に 山猫(イルベス) に 魔石獣(カーバンクル) 、 黒銀狼(フェンリル) ……幻獣は数百種類にも及ぶ。

「鷹獅子が大好きな人、山猫だけを愛している人、魔石獣以外の幻獣は目に入らない人。同じ幻獣好きでも、いろいろ種類があると思うの。もしも、愛し方が違う場合、相手に理解されなかったり、考えを押し付けたりしそうで」

その問題は、幻獣保護局でもしばしば起こる問題らしい。

リーゼロッテのすべての幻獣を愛し、慈しむという姿勢も、一つの幻獣を愛する人にとっては異端に映るのだろう。

「最初から、幻獣保護局や幻獣の契約者と結婚しようだなんて、考えてないわ」

「そうだったのですね」

てっきり、幻獣大好きな人と結婚するのかと思っていた。

「メルは、どんな人と結婚したいの?」

「私ですか? そうですねえ。まず、アメリアやステラ、ニクスやエスメラルダを大事にしてくれるということが大前提です。次に、一緒に料理してくれたり、裁縫してくれたり、お買い物をしてくれたり、価値観が合う優しい人と結婚したいですね」

私の結婚願望を聞いたリーゼロッテは、とんでもないことを口にする。

「メルが結婚したいのって、ザラ・アートではなくって?」