軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大森林にて その三

なんと、ホロホロ鳥の解体を行うという。

魔物の毒の反応もなく、いい感じに絞められている状態らしい。

「ホロホロ鳥は宮廷料理の食材としても選ばれる、美味な鳥だ」

「び、美味な鳥……!」

『タ、食ベタイ!!』

視界の端でアルブムが涎を垂らしている様子が見えたので、慌てて地面に置いた。

「すでに、ここに転移した時は息絶えていたようだ。助けることはできなかったが、食材として食べることにより、供養してやろう」

一応、シエル様は隊長をチラリと見る。隊長はコクリと頷き、言葉を返した。

「我々は、しばし待機しておりますがゆえ」

「感謝する」

引き抜いた水晶剣をホロホロ鳥に近づけていたが、私はあることに気づいて「あ!」と叫んでしまう。

「リスリスよ、どうかしたのか?」

「剣を、消毒したほうがいいかなと」

「ああ、そうであったな」

シエル様の水晶剣は普段、魔物を斬りつけている物だ。調理用ではない。

使う前に、しっかり消毒しておいたほうがいいだろう。

「この剣はありとあらゆる悪きものを断ち斬ることを可能とする。常時展開の浄化作用もついておるが、わからないからな」

シエル様はまず、石鹸で水晶剣を洗うようだ。鎧の中から石鹸を出したように見えたが、突っ込んではいけない気がした。

魔法で水を出し、石鹸を泡立てている。

ちょっと泡立てただけで、もこもこアワアワに泡立っていた。

『おじいちゃん、洗うの、手伝うよ』

「おお、アリタよ。感謝する。手を切らぬよう、気をつけよ」

『は~い』

アワアワ泡立つ石鹸で剣を洗う全身鎧の大英雄と蟻妖精……。不思議な光景だ。

これも、突っ込んだら負けだろう。

「よし、洗うのはこれくらいでよいな」

そう言って、魔法で作り出した水球の中に剣を入れる。

「はあっ!!」

かけ声をあげると、水球がぶるぶると震えた。謎の衝撃波からなる振動で、剣の泡を落としているらしい。

これを、フォレ・エルフの村で使えたら、どれだけよかったか……!

非常に便利な魔法だ。

続いて、シエル様は二個目の水球を作る。これに、火魔法を加えて沸騰状態にさせる。

すると、水晶剣は煮沸消毒された状態になった。

「ふむ。これでいいだろう」

「完璧です」

というか、シエル様は四大属性の魔法が使えるのか。さすが、大英雄である。

そして、ようやく解体作業に取りかかった。

「このように、大きな鳥を解体するのは初めてだ。リスリス、どうすればいいのか、改めて教えてくれぬか」

「え、あ、はあ……」

私もホロホロ鳥の解体は初めてだ。しかし、大きいだけの普通の鳥なので、体の構造は同じだろう。

「え~っと、まずは血抜きですね」

通常は足を紐で縛り、木の枝などに吊るして全身の血を抜く。

しかしこれは、三メトルもある大きな鳥だ。その方法は難しいだろう。そう思っていた時もありました。

シエル様は水晶剣でホロホロ鳥の首を切り落とし、その辺の木に巻き付いていた蔓を引っこ抜く。

蔓で足を縛り、逆方向には大きな石を結ぶ。

それをどうするのかと思っていたら、蔓を結んだ石を五メトルはある高い木の枝に向かって投げた。

枝に引っかかり、落ちてきた石を拾うと、シエル様はそれを思いっきり引っ張る。

地面に横たわっていたホロホロ鳥は、一気に吊り下げられた。

なんという腕力なのか。

私だけではなく、第二部隊のみんなも呆然としている。

シエル様の工夫と腕力で、いつも通りの血抜きが行われた。

血抜きが終わったら、今度は毛抜きを行う。

これは、全員で行った。

アルブムは羽根を団扇代わりに使えそうだと言って、選別し始める。

ウルガスは矢羽に使いたいと、張り切って参加している。

隊長は山賊のごとく、むっしむっしと乱暴に毟っていた。

ホロホロ鳥の羽毛は綺麗なので、ザラさんは枕を作りたいらしい。

アメリアとステラは、綺麗な尾羽を帽子に飾りたいと、熱心に選んでいる。

リーゼロッテは羽毛に近づくとくしゃみが出ると言って、遠巻きにしていた。

なんというか、みんな自由だ。

真面目に毛を毟っているのは、ガルさんとスラちゃん、ベルリー副隊長、アリタだけである。いや、これだけの人達が真面目に作業していたら、いいほうか。

毟り終わったあと、残った毛はシエル様が水晶剣に火を付与させ、綺麗に焼いていた。

「次に、首の付け根に手羽、足を斬り落とします」

私の指示に従い、シエル様はサクサクとホロホロ鳥を切り分けていく。

その後、下腹部を切り裂き、内臓を取り出した。

食べられる部位と食べられない部位をわける。食べられない部位は地面に埋められ、食べられる部位は水魔法で作り出した衝撃波入りの水球に入れて綺麗に洗う。

ここまできたら、どんどん部位ごとに切り分ける。

胸肉にササミ、手羽先に手羽元、もも肉に軟骨、ハラミ、皮などなど。

肉は周囲に積もった雪と共に革袋に詰める。これで、保存性はバッチリだ。

ヒビの入った卵も、まだまだ新鮮なようなので、持って行くようだ。

こうして、いきなり大量の食料を得ることができた。昼食が楽しみである。

なんて幸先がいいのか! ……じゃなくて。

「あの、シエル様、世界樹の様子がおかしいと言っていましたよね?」

「ああ、そうであったな」

なんだかピクニックに来たような気分になっていたけれど、目的はそうではない。

「世界樹と会ったのは随分と昔でな。すまないが、場所を失念してしまったのだ。気配を探りながら向かうことになる。心苦しいところだが、付き合ってくれ」

シエル様のお願いに、皆、頷いた。

ようやく、大森林の探索が始まる。