軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第078話 まあ、見張りをしているんですけど

「イレーネ、ちょっと頼みがあるんだけど、良いか?」

リーエの解体を眺めていたのだが、ちょっと思い出した。

「なーに?」

「さっきの矢で俺を射てみてくれないか?」

「え? 嫌だけど? 何言ってんの?」

説明不足とはこのこと。

「ほら、魔法の開発をしてただろ。あれの試しだ。銃が脅威だったから対策の魔法を作ったんだ」

「なるほど。えー……でも、嫌よ。ヴェルナーに向かって矢なんて射られないわ」

普通はそうだろうな。

俺も無理だ。

「大丈夫。絶対に防げるから。俺は叡智の魔勲章を持つ偉大なる大魔導士だぞ」

すごいんだぞ。

「それでもねー……」

イレーネはめちゃくちゃ嫌そうだ。

「じゃあ、この辺を射てくれ」

顔の右横を指差す。

「まあ、それなら……」

イレーネが渋々、頷いたので距離を取る。

そして、イレーネが光の矢を取り出し、構えた。

「ヴェルナー、あなたが黒幕だったなんて…………そうだ。俺がすべてを計画したんだ」

リーエ、1人で何言ってんだ?

「アフレコを当てるな」

「お茶目なホムンクルスちゃんね。黒幕さん、行くわよ」

イレーネが狙いを定める。

「お前にやられるなら本望だよ……」

「御二人もノリノリじゃないですか」

お前が始めたんだよ。

「イレーネ、良いぞ」

「よーし、えいっ!」

イレーネが矢を放った。

矢はぱっと見でも俺には当たらないなと思ったが、俺の前方1メートルくらいで静止する。

そして、1、2秒静止し、地面に落ちた。

「こんなものか……」

ふっ。

「おー! すごいじゃないの!」

まあな。

「自分の周囲に魔法の結界を張ったんだ。これで浮遊物をシャットアウトできる」

歩いてくるものには効かない。

そうしないと、普通に近づいてきた人が阻まれるという不自然が生じてしまうのだ。

魔法がない世界なのだからそういう不自然を極力、減らす必要がある。

この程度の魔法にこれだけの時間をかけたのはそういう細かい調整が必要だったからだ。

「さすヴェルねー。これで例の銃もいけるわけ?」

「ああ。さっきの矢がいけるならいける」

理論上は……

「一安心ってところなわけね」

「そうだな。引き続き、防御については考えていこうと思っている」

後衛にいることが多かった俺はあまりそっち方面を考えてこなかったが、良い機会だろう。

「ヴェルナー様、こちらが魔石になります」

リーエが戻ってきて、回収した魔石を見せてくる。

大きさはゴブリンやコボルトと同じくらいだが、色に赤みがあった。

「悪くなさそうだな」

「多分、8000か9000ってところね」

魔石を見たイレーネが教えてくれる。

「儲け的にも悪くない。よし、ガンガンやっていこう」

「ええ」

その後、魔力感知で魔物を探し、倒すという作業をしていく。

出てくる魔物もゾンビ、ウルフといったそこそこ稼ぎの良い魔物が良く出た。

もちろん、ゴブリンやコボルトも出たのだが、それでも良い儲けになりそうだなと思いながら狩りをしていき、昼になったので昨日の夕食時に頼んだお弁当のハムサンドを食べる。

「この森、すごいわね……」

「そうだな。今、どれくらいだ?」

「ゴブリン5、コボルト4、ウルフ5、ゾンビ6ですね」

いくらかはわからないが、軽く5、6万は超えているだろうな。

「何時頃までやりますか?」

リーエが聞いてくる。

「うーん、早めだったな……」

「混みだすのが17時前後なのよね。16時くらいには帰った方が良さそう。となると、15時過ぎくらいまでかな?」

そんなものか。

「じゃあ、それまでやるか」

「ええ。今日だけだし、稼ぎましょう」

「おー」

俺達は昼食を食べ終えると、休憩もせずに狩りを再開した。

午後からも同じ要領で魔物を倒していき、魔石を回収する。

とはいえ、14時くらいになると、頼まれていた薬草の採取も交えだしたのでペースが落ちてきた。

「この辺まで来ると、結構、生えてるわ」

イレーネがせっせと薬草を採取していく。

「ここまで来られる冒険者はたいして金にならない採取なんかしないわな」

俺達は結構、奥まで来ており、リーエが魔力を込めた石からかなり離れていた。

リーエも相当な量の魔力を込めていたが、正直、感知するのもかなり厳しくなっている。

「だからこそ、評価が上がるってものよ。ギルドは公平を謳っているけど、職員は人だからね。良いことをしておくと、気にかけてくれるし、良いことが返ってくるものなの。実力も大事だけど、そういう付き合いが大事になってくるわけ」

さすがは陰キャにも優しいクラスの1軍女子だ。

空気が読めるし、視野が広い。

クラスでもイレーネのことを好きな男子はさぞ多いだろう。

「ヴェルナー様、大きな魔力です」

そうだな……

「知ってる魔力だ。オークだな」

奥から感じる。

というか、こちらに近づいている。

「オーク!? 大物よ。額が違うわ。逃がさないで」

イレーネが採取を中断し、立ち上がった。

「大丈夫、向こうもこっちに気付いているし、近づいている。獲物として、ロックオンしているな」

距離的は60か70メートル先だが、まっすぐこちらに向かってきているのだ。

「じゃあ、大丈夫だ。よろしくー」

イレーネは再び、腰を下ろし、薬草採取を再開した。

「ん?」

「足を止めましたね……」

どうした?

こちらの魔力に気付いたか?

俺とリーエはともかく、イレーネは垂れ流しだからな……

「逃がしちゃダメよ。オークは最低でも5万ソルもするから」

「うーん……仕方がない。こっちから行くか」

「いえ、ヴェルナー様はイレーネさんのそばにいてください。私が10秒で仕留めます」

リーエがククリナイフを取り出した。

「頼むわ」

「では、戦闘用ホムンクルス、出撃!」

「お手伝いさんなー」

そう訂正したのだが、すでにリーエはいなかった。

リーエは上に飛び、枝を飛び移りながらオークに向かっていっている。

「リーエだけで大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。もう終わった」

リーエはあっという間にオークに接近すると、ククリナイフで首を切り裂いていた。

「早いわねー。さすがは殺戮ホムンクルス」

「メイドさんホムンクルスだよ」

それに俺だってあれくらいはできる。

そのまま待っていると、魔石を持ったリーエが戻ってくる。

「お疲れさん」

「いえ……あのー、ヴェルナー様、かっこつけているんでしょうけど、イレーネさんが腰を下ろして採取している横で腕を組みながら木に背を預けてすまし顔をしているのは非常に見た目が悪いですよ」

悪いな……

「イレーネ、手伝おう」

腰を下ろし、イレーネが採取した薬草を束ねる手伝いをする。

「ありがと」

「当然のことだ」

うんうん。