軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.断罪 2(リオ)

夕方になり、ようやくコーデリアが帰って来た。

「コーデリアッ」

早く謝って、それからこれからのことを、

「あら旦那様。随分と早いお帰りですのね」

コーデリアはいつもと変わらない笑顔だ。

……本当に泣いていたのか?普段通りだが。

「その、話があるんだ」

違う。見ただけでは分からないだろう?

だからちゃんと話を、

「まあ、そうですの?ですが私、少し疲れてしまって。出来れば休ませて頂こうと思っていたのですが」

「あ、ああ。その、大丈夫か?医師を呼んだ方が」

「いえ。少し休めば治ると思いますので」

そう言ってふんわりと微笑むと、振り返ることなく、自室に向かってしまった。

……体調が悪いなら仕方がない。明日こそ話をしよう。

だが、それからもずっとコーデリアからは避けられ続けた。

「本日はお茶会が」「これから来客が」「この後は子供達と」

何かと用があると言われ、急ぎではないのなら、と笑顔で躱される。

「コーデリア、頼むっ!5分でもいい、話がしたいんだっ!」

とうとうすがり付くように話し合いを求めた。

「……ふう。仕方がありませんわね。では本当に5分だけですよ?」

「あ、ああ」

二人で向き合って座る。

5分。たった5分で何を伝えたら……。

「時間が過ぎていきますが大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない!」

そうだ。綺麗に纏めている場合ではない。言いたい事をありのままに伝えるんだ!

「コーデリア、今まですまなかった!」

ガバリとテーブルに頭を打ち付けそうな勢いで頭を下げた。だが、コーデリアは無言だ。

そろりと頭を上げると目があった。

「……どうぞ続けて?」

「あ、ああ。私は今までずっと自分は悪くないと思っていた。アシュリーを失ったのは、母上のせいであり……君のせいだと逆恨みしていた。そのくせずっと甘え続けて。

今回だって、君がどう思うか、どう言われるかを考えもしないでアシュリーを探しに出て行ってしまった。

そのせいで、子供達にまで辛い思いをさせてしまって…。

本当に申し訳なかったと思っている」

コーデリアの表情は変わらない?いや、そうじゃないだろう。相手の反応がどうとかではない!

「今まで本当にごめん。それからありがとう。

……子供達は本当にいい子に育っているな。すべて君のおかげだよ。あの子達のこれからの為にも、今度こそ心を入れ替えて頑張るから。

今度こそ君を守るから。

……お願いだ。私にチャンスをくれないか」

「なんの事でしょう?」

「今度こそ君の夫として向き合って行きたい」

そう伝えると、コーデリアは驚いたのか、目を見開いた。そして、

「ぷっ!んふっ、うふふふっ!」

突然、笑い出したのだ。

「……コーデリア?」

「ふふふっ、ごめんなさい。だってあまりにも可笑しくて」

「…何がそんなに可笑しいんだ」

「だって私はもう捨ててしまいましたのに、今更仰っても困りますわ」

……捨てた……一体何を……。

「……なぜかしら。あの日、意味も無く涙が溢れてしまいましたの。

子供達を心配させるなんて、母親として失格だと思ったのですがどうにも止まらなくて。

そんな私のことを、あの子達が一生懸命に慰めてくれたのです。

それが本当に嬉しくて……。

だからもういいと思いました。私には子供達がいる。最初からそのつもりだったではないかと、再認識致しました。

夫婦になり、貴方と暮らすうちに、いつの間にか欲が出てしまったようです。……本当に愚かでしたわ」

「コーデリア、欲なんかじゃないっ、当たり前のことだ!」

こんな言い方をさせてしまうくらい、私が追い詰めてしまったのだろう。

「いいえ。当たり前ではありません。仰る通り、私は加害者です。罪人です。

……でも、子供達の母です。

あの子達が必要としてくれている。それでもう十分ですわ。

私はもう、貴方は要らない。

もちろん、今まで通り良き妻、良き伯爵夫人として振る舞いますし、アシュリー様の代役として夜のお相手も致します。

でも今度こそ揺らぎませんので、どうぞお気になさらず。貴方は今まで通り良き父、良き伯爵として努力なさって下さいませ」

そんな、どうして…?

やっと分かり合えると思ったのにっ!

そんな私の動揺をよそにコーデリアはチラリと時計を見た。

「あら大変。5分を過ぎているわ」

「そんな!」

「駄目よ。今日はマクギニス侯爵夫人のお茶会ですもの。遅れるわけにはいきません。

隣国の新しい織物を紹介して頂く予定ですのよ。では、行ってまいりますね」

コーデリアはそれだけ言うと、急ぎ足で出て行ってしまった。

「……どうしてこんなことに」

あの時悪魔の甘言に乗ってしまったせいなのか。

彼は何故あの手紙を届けに来たんだ。

……もしかしたらこの為に?

私が五年経っても何も変わっていないから、だからこうして……。

いや、違う。子供達と約束しただろう。

たくさん謝るし大事にする。そう誓った。

見てるからね。そう言われただろう。

諦めるな。今日が駄目なら明日、明日が駄目ならその次の日。

信じてもらえるまで努力するんだ。

いつか……いつか彼女の心に届く日がくるだろうか。