軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1話 もう少し辛さ控えめで頼む

出会いは幼稚園に入る前。

家が隣同士と言う事もあって、気が付けば一緒に遊ぶようになっていた存在。

今年高校二年になった『 城崎(しろさき) 隼人(はやと) 』と『 黒川(くろかわ) 乃愛(のあ) 』は、幼稚園、小学校、中学校、そして高校までもが同じ幼馴染。

年を重ねて思春期になったことで疎遠になる、なんて事もなく。

成長するにつれて黒川乃愛がとんでもない美少女になる、なんて事も無く。

城崎隼人が目を見張るようなイケメンになった、なんて事もない。

ごくごく普通に成長した二人は何処にでも居る高校生になって、昔と同じ距離のまま、昔と変わらない仲の良い幼馴染のままであり続けた。

隣同士の家に住んでいる二人は自室の窓を開けばすぐに相手の部屋の窓があると言う、漫画やアニメの世界にしか存在しない幼馴染ラブコメ専用の家に住む生粋の幼馴染。

「よっす、乃愛」

「よっす、隼人」

その為、高校生になった今でも窓を開けて会話をする事はよくある。

「あ、ちょっとそっち行っていい? ゲームやろー!」

「いや、まあいいけど、落ちるなよ?」

「そこで落ちないように私を支えるのが隼人の役目だよね」

「へいへい」

それだけではなく、窓を伝ってお互いの部屋に行き来するような事もある。

軽く足を延ばすだけで渡れる距離。

落ちる心配は無くて、行き来は非常に簡単。

とは言え、小さな頃に一度だけ乃愛が落っこちた事があって、大事に至らなかったもののその時に二人は両親からこっ酷く叱られた経験を持つ。

だからそれ以来、乃愛が窓を行き来する時は隼人が彼女の腰のあたりしっかりと持って支えてあげるようになった。

何も気にせず隼人に身体を預ける乃愛。

いつからか女子から女性の肉体へと成長した幼馴染の身体に触れる事に、恥ずかしさを覚えるようになった隼人。

「全く。そんで、どのゲームやりたいんだ?」

「どーれーにーしーよーおーかーなー」

無事に隼人の部屋に上がり込んだ乃愛は子供の頃から何一つ変わらずに無防備なまま、幼馴染の男の子の部屋に転がり込んで楽しそうに笑う。

いつからか、子供の頃と同じ目で幼馴染を見れなくなってしまった隼人は自分の部屋にいる少し薄着の女の子を見て、頬を赤らめてしまう。

そう、いつまでも変わらないモノなんてない。

もうずっと前から、城崎隼人は黒川乃愛に恋をしていた。

小学校の高学年の時に同級生に揶揄われてから考えるようになって、中学にあがって恋心を自覚するようになって、高校に続く今もそれが続いている。

自分の隣で笑顔でゲームをする大切な幼馴染。

飛びきりの美人ではないかもしれない。

誰もが振り向く美少女ではないかもしれない。

何処にでもいるような平凡な少女かも知れない。

けれど、それでも城崎隼人にとって黒川乃愛は誰もよりも可愛い存在で、誰もより素敵な女の子だった。

そんなアオでハルな一頁を嚙みしめた、翌日。

「──ダッサ、小学生から片想いとかきつすでしょ。きっつ。さっさと告白すればいいのに、いつまでうじうじしてんの?」

「いや……言葉きっついな、相変わらず」

学校の屋上で城崎隼人に辛辣な言葉を投げかけているのは、同級生にして黒川乃愛の友達である『 空野(そらの) 明星(あかり) 』と呼ばれる女生徒。

空野明星は小学三年生の時に隼人と同じ学校に転入してき以来、中学高校とずっと同じなので、城崎隼人にとっては黒川乃愛と同じくらいに中々の腐れ縁。幼馴染とも言えなくはない存在。

軽く茶色に染めた髪をローツインテールで纏めた、全体的にふわふわとした印象の可愛らしい見た目の女子。

学校一の美少女と名高い女子、空野明星。

そんな彼女の言葉は中々に 辛(から) い。

と言うか激辛である。

「てか、告白の何をビビってんの? 馬鹿なんじゃないの? あ、そう言えば隼人って馬鹿だったんだよね。ごめんごめん、忘れてた」

「腹立つなマジでぇ……」

「告白する気もないのに、毎回惚気話しだけ聞かされるこっちの身にもなって欲しいっての。生産性のある話とかできないの、隼人って。口を開けば乃愛乃愛乃愛乃愛言って、いい加減うるさいから。それでも男なの?」

パックジュースから伸びるストローを嚙みながら、白けた顔で暴言を吐き散らす空野明星に城崎隼人はただ大きな溜息を吐き出す。

「そう言わずにさー。もう少しだけ真面目に相談乗ってくれってー、乃愛と一番仲良いの空野だから、なんかそれとなく聞き出すとかさ?」

「ムリムリムリ。裏でコソコソ嗅ぎまわるだけで告白する勇気もないような男とか超ムリなんですけどー。うーわ、こっわー。ストーカー気質あるんじゃないの」

「そう言うなって! 昔からのよしみってことで、頼む!」

「だから、わざわざ聞くまでも無いっていつも言ってるじゃん。高校生にもなってお互いの部屋行き来するような関係の癖に、そんなの脈ありに決まってんじゃん。そんな事もわかんないの? 頭おかしいんじゃないの?」

「いやでも、もしかしたら違うかもしれないだろ? もし万一そう言う感じじゃなかったら──」

「あーー! うるっさー! どう考えても両想いの相手に告白できないってマジ終わってるから。え、なに? 乃愛から告白されるの待ってるの? どんだけ勇気ないの? 男として終わってない?」

「いや別に……そう言う訳じゃないけど……」

小学校三年生で転入してきた時はとても大人しい子で、とても優しくて気配りの出来る良い子だった空野明星。

(昔はもっと優しかったのに、いつからか異様に当たりが強くなったよなぁ。その癖にこうやって話は聞いてくれるから、よくわからん。相談に乗ってくれるなら真面目に乗ってくれよ、マジで。今んとこ暴言吐かれてるだけの気がするんだが──)

「……そりゃあさ。空野みたいに可愛いくて、いつも告白されてるような奴からすればよくわからないような悩みなんだろうけどさ。俺みたいな普通の男子高校生の場合はやっぱさ、告白するってなると……それなりに勇気がいるんだって」

「……ふーん」

城崎隼人の言葉が余程気に食わなかったのか。

何かしら怒っているのか。

或いは別の理由があるのか。

パックジュースに刺さったストローを噛みながら渋い顔をする空野明星は、その頬をほんのり上気させて、プイっと顔をそらした。