作品タイトル不明
彼女の勘
「それにしても小さいな、入り口」
「狭いのは入口だけだから大丈夫よ。入ってすぐにそこそこ広い空間に出るハズ」
巨大な世界所の根本に近寄りそこに広がるウロを覗き込むと、奥に続いている小さな穴があった。横幅は線の細い俺達でも割とギリギリの幅、高さもしゃがみこまないとくぐれないくらいだ。
「これガタイのいい人とか、装備がっつり着込んだ人だと通れないですよね?」
「うん。それにわかりづらいのもあって余り人気のない入口だから私はよく使ってる」
成程。
基本的に現存するダンジョンは洞窟状になっている下層でもそれなりの広さがあるのが基本であり、中層や下層に至っては開けた場所だからあまり狭さが問題になる事はないんだけど、下層の中にあるダンジョンであるここは場所によってはかなり狭い所があるらしい。それを考えると人が少ない場所からいった方が確かにいいな。
「オラクルキューブのロボ獲得しても、ここじゃ使いものにならないですよね、これ」
「そうね。あのサイズが動き回れる程広さのある空間は殆どないだろうし……」
10m超のサイズがあるあの機体は、通常ダンジョンでも下層では利用できないサイズだ。ここでは確実に無理だろう。今後あのオラクルキューブの運用がどうなるかわからないけど、少なくともここのダンジョンで見る事はなさそうだ。
「そういえば、刹那ちゃんはオラクルキューブは欲しくないの? 力が欲しいんでしょ?」
入口の方を見ながら言葉を交わしていた俺達の二人で大人しくしていたるーがふと急にそんな事を口にした。それ俺が以前聞こうかと思ってやめたやつなんだけど、何のためらいもなくぶっこんできたな。
「力が欲しいってストレートね。否定はしないけど」
そんなるーの言葉に刹那さんは苦笑いする。
今回の俺達の目的はMADアイテムの入手だけど、MADアイテムを求める理由なんて基本的にはRPGで強力な武器のレアドロを狙うようなもんだからね。MADアイテムは大体高値で引き取ってもらえるから一攫千金目的もあるけど、今回は刹那さんは売却目的じゃないことを明言してる。この辺はっきりしておかないと後で面倒な事になるので。
で、だったらより簡単に強力なアイテムを入手する可能性を狙わないのはなんでか、というのを疑問に感じるのは当然と言えば当然だろう。
「うーん、それに関しては感覚的な話で申し訳ないんだけど……私はあれには乗らない方がいいかなって思ったんだよね」
「感覚、ですか?」
「うん。勘が働くっていうのかな? 使うアイテムとか自分には向いていないアイテムとかがなんとなくわかったりするんだよね」
そう口にした刹那さんは、愛用の刀を抜刀する。
「この子とかさ、始めて来たときこれだって感じたんだよね、実際に扱ってみたらこれ以上なく私の魔力に馴染んだの。実際この子と会ってから二級から準一級にあがったのよ。それに、いつもじゃないからあんまり当てにはできないんだけど、偶にこっちに進んじゃいけないって感じるときがあるのよね。そういう場合後で確認するとヤバイモンスターがいたりするのよね」
「成程、それで勘ですか」
経験等から来る勘……というよりは、彼女の場合魔力の質の感知能力が高いのかもしれない。それによって自身に馴染むものを感じ取り、自身の脅威となる魔力を持つ存在に気付くことが可能になっているのかも。波多野さんクラスの感知能力を持つ人材はまずいないけど、ちょっとした感知能力であればそれなりにいるハズ。刹那さんもそういった能力のセンスを持っているのかも。
だとしたら、オラクルキューブは彼女の魔力と相性が悪いのかもな。
「それに、刹那さんの戦闘スタイルにも合いませんしね」
「そうね。あんな大きいものを上手く操れる気がしないもの」
完全な肉弾戦タイプだもんなぁ、刹那さん。今の戦闘スタイルがしっくり来ているから主武装も今の刀の代わりが欲しいわけじゃなくて、防御を固める装備か攻撃の補助が出来るものが欲しいっていってたし。だとしたら、戦闘スタイル的にもあの機体はいらんよなぁ。それは俺達も同様だけど。
「そっかー。刹那ちゃん今回の探索でいいMADアイテムが出るといいね?」
「ありがとう、ルーティエちゃん。それじゃそろそろ行きましょうか?」
「ですね、行きましょう」
刹那さんに頷きを返すと、何故か刹那さんは動き出さずにじっとこっちを見つめてきた。
「……なんですか?」
「トワちゃん」
「はい」
「お姉さんそろそろフランクに話してくれると嬉しいかなーって」
いや、こっちの体に変わってからほぼ外見変わってないから幼く見えるけど、実年齢は多分同じくらいか俺の方が上じゃないかなーと……まぁいいか。間違いなく同業者の中では刹那さん一番親しいの間違いないし。
「わかりま……わかったよ、刹那さん」
「呼び方ももっと砕けた感じでいいんだけど、まぁそれはおいおいね。それじゃ行きましょ、トワちゃん、ルーティエちゃん」
「ああ」
「ん!」