軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突貫します

「泊さんっ!」

耳元のインカムを操作し、その向こう側にいるであろう相手に向けて声を張り上げる。

反応は即座に帰って来た。

「どうした、トワちゃん」

「今からアイツのどてっぱらをぶち抜きますんで、そしたらさっき頼んだ奴お願いします!」

「ぶち……いや、だけど出来るの? 先ほどの攻撃は防がれてたでしょ」

「できます」

「──わかった」

即答した俺に、泊さんは更に追及はせずただ了承だけを返してきた。

さすが準1級だ、無駄に話を長引かせて時間を浪費するようなことはしない。それにある程度の信用ももらえているみたいだ。

距離を取った俺に、デカブツは追撃を駆けてこない。再びゲートの方へ向き直るとそちらの拡張を優先するみたいだ。

随分舐められたものだ。致命傷は与えられなかったが、まがりなりにも傷は与えたんだけどな。だがまあ、そっちの方が都合がいいか。

俺は最大化したアイリスの上に跨るとそのまま飛翔する──あ、ドローンどうしよ、ほぼ間違いなくついてこられない。かといってこの位置に固定しておいていくわけにはいかないし、泊さん達に預けるには時間がもったいない。

……んー、いいや、こうするか。

俺は目の前にドローンを持ってくるとその位置で結界に包んで固定する。これで問題ないハズ……後方に置くことも考えたが、前方に向けるとちょっとエグイ映像が映っちゃうかもしれないからな、だったら俺自身の姿映している方が受けはいいだろ。いちお外見は強めだし、今後配信者としてやってくなら間違いない。

ある程度の高度を取ったところで周囲を見回すと、やや離れた所にポータルに腕突っ込んでいるのと同じくらいのサイズの奴が2体と、やはりここにいる連中と同様の群れが見えた。あんまり時間をかけている訳にもいかないようだ。

俺はデカブツに向けて背を向けると、一気に加速する。結界で周囲を覆っているので、俺の体が風に煽られる事はない。ただGはかかるので、楽ってわけではないけど。ただある程度のアイリスのサポートが入るから吹っ飛ばされることはないし、Gで体がゆがんだりしないがな。胸もつぶれたりしないぞ、残念だったな! カメラの向こうの皆!

そうして一気に数kmの距離を移動し、杖の方向を反転させる。アイツの防御力ならこのくらいの距離で充分だろう。今度は奴の方へ向けて、再び加速を開始する。

──そう、乗せるのはマナが発見される前からもこの存在している普通の力、というかどの世界にもある力、”速度”だ。

この広大なフィールドで、俺を放置したのは最大の悪手だぜ、デカブツ。

周囲に展開した結界を、先端をとがらせた鋭利な三角錐に変えていく。そして速度をただひたすらに上げてゆく。デカブツに向けてまっすぐに。小さく見えていた奴の姿はどんどん大きくなってゆき──その勢いそのままにデカブツの体に突撃した。衝角突撃をする古代の戦船のように。

次の瞬間結界によって生み出された鋭利な衝角はその大部分に深紅を纏っていた。後方にはそのでかい図体に大きな風穴を開けたデカブツの姿があるだろう。そして俺が減速をして再び奴の方に向けてターンをする前に今度は爆音が響く。

振り返った俺の視界に映ったのは予測通りにどってぱらに風穴を開けられ、ポータルから離れてゆっくりと倒れていくデカブツの姿だった。さっきの爆音は泊さんの魔術だろう、きっちり仕事をしてくれたようだ。

その足元付近を見れば、ポータルに向かって走る3人の姿が見えた。俺はその3人の殿を護るような位置に移動すると、3人がポータルに飛び込むのを確認してからポータルの周囲に結界を張って、向こう側へ飛び込む。

──一瞬視界が歪み、そして視界に映るのは洞窟の壁と、こちらを見る3人の姿。それを認識した後に一瞬安堵の息を吐きそうになるが、その前に一つする事がある。

俺はアイリスから飛び降りて彼女を構えなおすと、ポータルを丁度包み込むくらいのサイズで結界を貼った。

……今度こそ俺は大きくため息を吐いて、三人の方を振り返って告げた。

「これでもう当面は大丈夫です。後は救援を待ちましょう」