軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

モンスター達の行動について

「それにしても、やっぱりここはおかしいな」

剣にこびりついた血を手ぬぐいで拭いつつ、そう口にしたのは藤原さんだった。

ちなみにダンジョンにいるモンスターは切れば血などの体液を流すし、死んでもしばらくは死体が残るのだが、いくら生物に酷似した姿をしているといっても結局はマナが異世界の影響を受けて変質・固体化したようなものなので倒してしばらく放っておけばやがて消失しマナへと還る。逆に素材として残すには魔術を使って処理をしなければならないわけだ。

なのでわざわざ拭わなくても問題ないっちゃないんだが、血まみれの武器をそのままってのは絵的にアレなので、緊急時以外は拭いとる人が多いね。

で、それは置いといて藤原さんの言葉に関してだけど、

「おっさんの言う通りだな」

「ええ、異常なのは間違いないわね」

他の二人もすぐに同意を示した。勿論俺もその点には気づいていたので頷く。

奇妙な点はリザードマンの事ではない。その戦闘中に見えた光景だった。

俺達を襲ってきたリザードマンの集団だが、実は俺達が殲滅したグループの他にもう少し小規模の別の集団がこちらに向かって来ているのが見えた。恐らく増援だったと思うんだが……そいつらが俺達の元に辿り着くことはなかった。

その途中で出現した地竜に喰われたのだ。

これは中層ではありえない事だ。

ダンジョンは上層、中層、下層で様々な変化を見せる。そもそもの階層の構造であったり、出現するモンスターの強さだったり。そしてその中には、モンスターの行動の違いもある。

上層に出てくるモンスターは決まったルーチンでしか動かない。プログラムされたゲームのキャラクターのようなものだ。想定外な動きもほぼしないため、新人は多少スペックが高かろうが最初の内は上層で慣れろと言われる。

というのも中層になるとモンスターの動きが一気に変わるからだ。単純にプログラムされたものから実際の生物のようにさまざまな動きを見せるし、個体差も大きく出てくる。中層以降はそれに対応する臨機応変さも必要になるから経験不足は死につながるのだ。

ただこの中層でも、モンスターは生物そのままといった感じはない。いくつかの生物が生きていくために必要な行動を中層のモンスターは取らない。その中の一つが、食事だ。

そう、中層のモンスターは食事目的で他のモンスターを襲わない。連中が俺達探索者を襲ってくるのはダンジョンに入り込んだ侵入者…… 異(・) 物(・) を排除しようとしているだけだとされているし、たまに別のモンスターを襲ったりはするがこれは元のモンスターの行動を模しているだけだとなっている。

これが下層になると最早普通の生物と全くかわらなくなるのだが……少なくとも先ほど見た捕食は本来中層で見る光景ではなかった。そしてすでに俺達はこの層でその光景を数度見ている。

「異変が起きているのは間違いねーか。これは注意して進まないといかんなぁ」

「場合によっては1級含めて出直した方がいい可能性もあるかもしれないわね」

「とりあえず出来るだけ退路を意識して動いた方が良さそうだな」

ダンジョン慣れしている三人がここから先の方針をいろいろと話し合っている。俺は今の戦闘能力なら三人に匹敵しているが、こちらのダンジョンでの経験は全く及ばない……というかそもそも俺これまで上層しか潜ってなかったかメディアから手に入れた知識だけで、経験がそもそもないんだよな。なのでこういったところは口を出さずに三人に任せておく。

ただやっぱり出来るだけ杖の力は温存した方が良さそうだな。アイリスの"結界"は撤退する時にはかなり有効だし。

《お任せよー! 久遠の玉のお肌は傷一つつけさせないわ!》

まぁそもそもこの格好耐久性高いから早々傷とかつかないんだけど……

《可愛いしね!》

それは関係ない。

「すまん、トワちゃん。三人で話し込んじまって」

「あ、お気になさらず。ダンジョンに関しては俺は初心者みたいなもんなので」

アイリスと脳内でやり取りをしている間に、三人の話がまとまったらしい。

「指示もらえれば従いますよ」

「了解だ……といっても基本的には周囲に注意を払う、力は温存、退路を出来るだけ確保しとくっていう当たり前な所だけ頭に入れておいてくれればいい。細かい所は俺らが気を払うから」

「わかりました。皆さんにお任せしますね」

「……」

「……どうしました?」

何故か藤原さんが顔を抑えて黙りこくってしまったので、顔を覗き込みながらそう問いかける。

「いやぁ、トワちゃんは素直でいいなぁって」

「はい?」

「いやな、トワちゃんみたいな若くて実力ある奴は我が強い奴が多くてな? なかなか手綱を握るのに苦労を……」

「ほらほら藤原さん、トワちゃん、先に進むわよ!」

藤原さんの言葉の途中で各務さんが不自然に大きな声で言葉を被せてきた。

その声に藤原さんは言葉を止めたがそのかわりに各務さんの方に視線を向けると、各務さんはなぜか視線を逸らした。その様子に藤原さんはため息を吐く。

あ、各務さん黒歴史なんですね?